15 / 88
始まりは…
『姉上の気持ちと - 葛藤 - 』
しおりを挟む「…っ!それは…」
姉上の耳に入っていると思わなくて、すぐに言葉が出てこなかった。
何か言わないと!そう狼狽する表情に気づいた姉上が僕にゆるりと首を横に振る。
『いいのよ、知っていたことだもの。…だいぶ前から』
「………」
姉上…。あなたは…
『──でも、ね。私は… 公爵令嬢の身分に相応わしくないって周囲に思われてることを知ったとき、正直な気持ち、嬉しかったのよ』
抱きしめるクッションに顔を埋めながらそうぼやく姉上に僕はわけがわからなかった。
「……嬉しかった?」
姉上が口にした言葉が信じられなくて、両目いっぱいに大きく目を見開く。
『ええ、さっきも言ったでしょう?……誰よりもこの世界を熟知してる私が、私自身をわかっていないわけがないでしょう?ずっと、窮屈に感じていたのよ。この貴族社会が。自由に生きる術が許されないこの人生が。……前の世界を知っていてこそ、尚更そう思うのよ』
「姉上…」
遠くを見つめる姉上は今、何を考えてるのかわからない。でも、今の姉上はとても幸せそうには… 見えなかった。
『………私ね、前の世界はここでいう平民たちの暮らしだったの。だから、かしら…。よけいに、平民暮らしに憧れがあるのは───。
確かにね、王太子様は素敵な方よ?でも、結婚するのと、憧れは違う。私にとって、あの方は… 憧れなの。芯が通っていて、常に前向きに… 努力を怠らない。そんな方だから惹かれたの。憧れの意味で。だって、私にはそういったものは無いから…』
そう言って、微かに眉根を寄せる姉上の表情はどこか寂しげに感じた。
13
お気に入りに追加
1,390
あなたにおすすめの小説
皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
学園生活は意外と大変
白鳩 唯斗
BL
毎年恒例の親族達の日帰り旅行で、事故が起きた。家族を全員失った魁星は、葬式に参加する。
そこで、唯一生き残った親族、はとこの雪人の存在を知ることになる。
権利争いが起きないようにと、魁星が雪人を養子に迎えることになり、父親になってしまう。
15歳の魁星は高校に通いながら、6歳のはことの面倒を見ることになる。
面倒見の良い優しい主人公です。
シリアスは少なめかもしれません。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる