12 / 88
始まりは…
『僕の安眠のために殿下に一刻も早く姉上を引き取ってもらいたい』
しおりを挟む
「僕は現実主義者なだけですよ、あなたと違って」
ムッと眉を寄せて正論を突きつける。
なんでこうも、姉上にイラッとくるのか…。
一度は僕に反抗期の訪れでも来たのだろうかと思ったこともあったけれど、きっと違う。僕の頭痛と憂鬱の元凶たる原因は間違いなく姉上だ。姉上に決まっている。
『アランってば、いつから反抗期になったのよ?』
部屋に置いてあったクッションを抱き抱えて、ブーブーと頬を膨らます姉上にますます頭が痛くなる。……そのうち、僕は胃までもが痛くなりそうだ。
そう考えると、殿下に一刻も早く姉上を引き取ってもらいたい。そう… 僕の安眠のために!そうすれば毎夜毎夜、僕の部屋に押しかけ深夜遅く… いや、時には早朝まで乙女ゲームとやらの話を興奮気味に聞かされることもなくなるのだろうと思うと、それもあと少しの辛抱だと自身に言い聞かせる。
一番、何が苦痛かって?
毎回毎回、ほぼほぼ同じ内容の話を延々と繰り返し聞かされるんだ。どこの新興宗教の教祖サマだよ!と突っ込みたくなるほど、それはもう洗脳じゃないかと思っている。
小さい頃から延々と姉上に聞かされていた僕は一言一句間違いなく語れる自信はある。
けれど、そんな姉上を無下にできないのは姉上がその話をできる人というのが早々いないからである。姉上は公爵令嬢。貴族の中で上位に立つと言っても、貴族社会は化かし合いとスキャンダルと蹴落とし社会である。
たとえ、王族からの信頼が厚かろうと他の貴族を束ねるトップに立とうと… 信頼における人間は限られている。ニコニコしていても、実際には腹の探り合いで一瞬でも相手に弱みを見せてしまえば、たちまち食われてしまう。
貴族社会とはそういうものだ。
だから、姉上に群がる取り巻きの令嬢もいるけれど、姉上はいつだって孤独。孤高に振る舞わなければいけない。少しでも隙を見せないために。
特に、女性ひいては令嬢たちの社会は男性よりもなかなか過激なものだと僕は認識している。
罵倒、裏切り、スキャンダル、噂…
それを面白おかしく流すのもまた令嬢や貴婦人方が多い。それが貴族の性と言われればそうかもしれない。そういうこともあり、また内容が内容だけに父上に話せば心の病と疑われ兼ねない… だから、姉上はその話をする相手に僕を選んだ。
そして、僕もそんな姉上を放っておけなくて、つい手を取ってしまった。
……だけど、
それが安眠の妨げになると誰がそのときに思う?まさか姉上が皆が寝静まった頃を見計らって僕の部屋に押しかけてくるとはそのときは思わなかった。
ムッと眉を寄せて正論を突きつける。
なんでこうも、姉上にイラッとくるのか…。
一度は僕に反抗期の訪れでも来たのだろうかと思ったこともあったけれど、きっと違う。僕の頭痛と憂鬱の元凶たる原因は間違いなく姉上だ。姉上に決まっている。
『アランってば、いつから反抗期になったのよ?』
部屋に置いてあったクッションを抱き抱えて、ブーブーと頬を膨らます姉上にますます頭が痛くなる。……そのうち、僕は胃までもが痛くなりそうだ。
そう考えると、殿下に一刻も早く姉上を引き取ってもらいたい。そう… 僕の安眠のために!そうすれば毎夜毎夜、僕の部屋に押しかけ深夜遅く… いや、時には早朝まで乙女ゲームとやらの話を興奮気味に聞かされることもなくなるのだろうと思うと、それもあと少しの辛抱だと自身に言い聞かせる。
一番、何が苦痛かって?
毎回毎回、ほぼほぼ同じ内容の話を延々と繰り返し聞かされるんだ。どこの新興宗教の教祖サマだよ!と突っ込みたくなるほど、それはもう洗脳じゃないかと思っている。
小さい頃から延々と姉上に聞かされていた僕は一言一句間違いなく語れる自信はある。
けれど、そんな姉上を無下にできないのは姉上がその話をできる人というのが早々いないからである。姉上は公爵令嬢。貴族の中で上位に立つと言っても、貴族社会は化かし合いとスキャンダルと蹴落とし社会である。
たとえ、王族からの信頼が厚かろうと他の貴族を束ねるトップに立とうと… 信頼における人間は限られている。ニコニコしていても、実際には腹の探り合いで一瞬でも相手に弱みを見せてしまえば、たちまち食われてしまう。
貴族社会とはそういうものだ。
だから、姉上に群がる取り巻きの令嬢もいるけれど、姉上はいつだって孤独。孤高に振る舞わなければいけない。少しでも隙を見せないために。
特に、女性ひいては令嬢たちの社会は男性よりもなかなか過激なものだと僕は認識している。
罵倒、裏切り、スキャンダル、噂…
それを面白おかしく流すのもまた令嬢や貴婦人方が多い。それが貴族の性と言われればそうかもしれない。そういうこともあり、また内容が内容だけに父上に話せば心の病と疑われ兼ねない… だから、姉上はその話をする相手に僕を選んだ。
そして、僕もそんな姉上を放っておけなくて、つい手を取ってしまった。
……だけど、
それが安眠の妨げになると誰がそのときに思う?まさか姉上が皆が寝静まった頃を見計らって僕の部屋に押しかけてくるとはそのときは思わなかった。
15
お気に入りに追加
1,384
あなたにおすすめの小説
残虐悪徳一族に転生した
白鳩 唯斗
BL
前世で読んでいた小説の世界。
男主人公とヒロインを阻む、悪徳一族に転生してしまった。
第三皇子として新たな生を受けた主人公は、残虐な兄弟や、悪政を敷く皇帝から生き残る為に、残虐な人物を演じる。
そんな中、主人公は皇城に訪れた男主人公に遭遇する。
ガッツリBLでは無く、愛情よりも友情に近いかもしれません。
*残虐な描写があります。
皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる