目覚めたそこはBLゲームの中だった。

- 死は始まりに過ぎない -

覚めない悪夢…

―― パッパー！！

                              キキーッ！ 

「は､ッぁ……ッ」

目を大きく見開く。目の前に迫るトラックに… 息を呑んだ。
                …ドンッ!!


鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 

身体が曲線を描いて宙に浮く… 


全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 

    ドンッッ！！！


「いったぁっ！」

床に打ち付けた尻を摩り、またか‥  と尻の痛みの原因だろうベッドを睨んで、部屋を見渡す。

  そして、

ハァ、と溜め息ついた。


ドタドタ！と聞こえる廊下を走る足音に、ボサボサの黒い髪を手ぐしでパパッと簡単に整え、ベッドの横に置いていた少し野暮ったく感じなくもない少し大きめレンズの銀縁の眼鏡をかけた。

コンコンコンコン！


『失礼致します、坊ちゃん。今、物凄い音が聞こえましたが… 』

ご無事ですか、と心配する家令の老紳士の執事に、申し訳なく眉根を下げる


「あっ！心配かけてすみません。寝てるときにベッドから落ちてしまって…」

なら、良かったです。と笑顔の執事に曖昧に微笑む


そして、執事は今度は打って変わって申し訳なさそうに言う

『坊ちゃん申し訳ありません。お食事のほうが…』


「あーー…うん…。私は大丈夫ですから。早く父上と母上のところに…」

そう言うと、執事は申し訳ありません、と頭を下げて部屋を出る。もう何度目になるんだろ… このやり取りも。いつまで続くんだろう… この夢から覚めない悪夢も…。


執事が部屋を出て行くのを見届けるとその場で、ズルズル…っとしゃがみ込むと頭を抱えた。