目覚めたそこはBLゲームの中だった。

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- ファンタジア王国と王都フィル -

エルフ様の生暖かい眼差しに羞恥する。

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ブフッ! くっくっ…と漏れる声にますます羞恥に顔が熱くなる。

「く…っ!すまない。笑うつもりはなかったんだが、」


クラウド様の笑う声に居た堪れなくなる…。目が潤んできた頃にまた、先ほどの浮遊感が襲う

「わ、わわ…っ!?」

「は、離して…下ろし、て…くださいっクラウド様っっ!!」


恥ずかしいやら、エルフ様に恐れ多いやらの恐怖感で、きゅっとその胸辺りの服を握りしめて顔を埋める。

 いや、だって…


こんな羞恥に耐えられるわけがないじゃないですかっ!ぷるぷる震えるチキンな自分が恨めしい。


その上、乙女ゲームの中であり、相手はヒロインの攻略対象者なだけあって、美丈夫だ… !美形だ!!

至近距離でその顔とか、ムリなんですけどっっ!!!


……だから、気づかなかった。そんな見目麗しいエルフ様が『本当に小動物みたいだな…』とポツリと呟いていたことも。恐る恐るエルフ様の胸元からゆっくり顔を上げて見上げると、優しく目を細めていて、驚いて目をパチパチさせる。

「………様はいらない。クラウドでいい」

「・・・え、っ?」


衝撃すぎて一瞬、思考が停止してしまいましたよ!?


「いや… いやいやいや!!!!」

断じて拒否します!!なにが悲しくてヒロインの攻略対象者と仲良くしなきゃいけないんですか!近い未来、自分を断罪するとわかっていて誰が…


(ぐぅーーきゅるっ!きゅるるる…っ)


「………」

「………ぶ、ッ」


「………///」

ボンっと一気に顔が赤くなった。

「ブフッ、思ったより元気そうで安心した…。なに、そう恥ずかしがることはない。お腹が空くというのは生きている以上、誰しも訪れるものだ。エルフも動物も精霊も…魔物も。そして、人間にも。それらは等しく平等に誰にも訪れるものだ。生と死と生命と共に…。それが世の理だ」

「………」

「ふむ、といっても、お前はまだ幼い。…少し、この話は早かったか」


ブツブツ呟くエルフ様の袖を勇気を振り絞って、くいくいっと軽く引っ張る。

「ん?」


なんだ、と尋ねてくるエルフ様、いい加減下ろして頂きたいのですが…。

「あ、あの…!お、おろ…」

「?おろ…?なんだ?ゆっくりでいい。落ち着け」


……なぜ、私はさっきからこうも彼にあやされてばかりいるのでしょうか。ああっ!私がチキンでなければ… こんなことには!!!!

自分の運の悪さに悲観的になっていると、再びエルフ様が視線を合わせてくる。


「あ、あの…!」

「ん?」

く…っ!そんな目で見ないで!!どうして私はこのエルフに抱き抱えられたまま、生暖かい眼差しを向けられてるのでしょうか!?

私って、そこまで幼くないと思うのですが…


「お、下ろし『却下だ』

「………」


せめてもの抵抗と、じっと睨め付けるけれど…

「腹が減っているのだろう?」


フッと笑って、今までの生暖かい眼差しが、なぜか、より一層強くなった気がした。
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