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賭けに負けたら俺の下僕な?
しおりを挟む「…あ、そうだ。俺を呼び出した本題は何だよ?」
「………あの方が昨日の明け方に脱獄したそうです」
淡々とした報告に俺は双眸を細める
「へぇ… 脱獄ねぇ?
そいつは面倒くせぇことになりそうだ」
あまりの憂鬱に髪を掻き上げ、溜息つくと氷室から視線を感じた。
「何だよ?」
「いえ、別に。ただ、いつまでこの『愛想のいい教師』になりきらなければならないのか憂鬱で…」
はぁー…と目を逸らして、わざと聞こえるように溜め息ついてくる氷室に…… 思わず笑ってしまった。
いや、笑って悪かったって!だから、そう睨むな。
「まぁそう言うな。
お前はただでさえ喜怒哀楽の感情が表情に出ねぇんだ。笑顔の練習だろ。
…それに、お前は感情のない人形じゃない。俺を殺すために俺の母に雇われた殺戮の人形じゃないだろ?俺はもっとお前に日常生活で楽しみを見つけてほしいんだよ」
「……貴方は本当に悪趣味ですね」
そう言って、なぜか呆れた目を向けられた。
「うるせぇな。お互い様だろうが。お前だって、賭けに乗るか普通。賭けを持ち掛けた俺が言うのもあれだけど」
ほんと、俺。いい賭けしたよなー 何しろ、さすが暗殺者。何処にでも潜入できるようにか全てが完璧。めっちゃ有能だし。毎回毎回所構わず襲ってくるもんだから、風呂も満足に入れず、また夜は安眠妨害の毎日。そろそろ刺客がウザく感じてたからなぁ…。
それなりに強くて使える手駒が欲しいって思ってたときにコイツが来たんだよなぁ、確か…。
ーー…なんて当時の記憶を振り返る。
いや、ほんと普通は自分の寝首を掻こうとした暗殺者に賭けを持ち出さねぇよな… なんて苦笑い浮かべる。
俺の屋敷には氷室と同じように執事が何人か働いている。
ーー… もちろん、全員俺との賭けに負けた元暗殺者だ。
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