- カ ミ ツ キ 御影 -

ちっ、火月の奴め…。

―― ｶｻｯ!

『………』


そんな葉月たちの様子を草村の茂みに隠れて見ていた――… 人を形どった紙切れが。

目もなにもないのに、じっ…と見つめる紙人形。もとい安倍 晴明の形代だった。


『……ちっ、火月の奴め』



それは低いバリトンの…男の声。


『まったく』



そう悪態つく人形の形代… もとい紙人形は器用に手を組む。。

その顔の部分には目も口もないのに、その言動と雰囲気で顔をしかめさせているのがよくわかる。



『しかし、葉月にも困ったものだ。…まぁ、今はそれを置いておくとして、火月め… また厄介な……』

はぁ、と溜め息つき足を組み変える



『水月の奴にバレたらどうするつもりだ…？ 火月は… あぁ、今はひよこだったか』

『……しかし、この村の連中には呆れたものだな。まぁ、あの子なりに頑張っているようだし… 暫くは見守っていようか。』



ガサガサ!


腕を解くと、紙人形はそのまま茂みの中へと入ってしまった。