- カ ミ ツ キ 御影 -

ひよこ様はこんな時でも…

「……クロ？」

表になった遺体を見据えて顔をしかめる葉月に九条が呼びかけるも無視される。

ピ！

頭の上でひたすら羽を羽ばたく黄色いひよこに葉月は頷く。


「やはり、これは…

人の手による毒殺ですね。見てください、ひよこ様。彼の首筋に針で刺されたような痕が残っています」

ピヨピヨピッ！

「えぇ、恐らく毒を塗った針ででも刺されたのでしょう。実際、傷口だけ黒く変色してます」

満足したのか、バサッと遺体にまたブルーシートを掛けて顎に手を添えて考え込む葉月に佐藤が慌てて注意する

「あ、コラッ！勝手に触るんじゃない！！」


  しかし、

注意する部下を余所に赤坂は興味深そうに葉月と頭に乗るひよこを見つめていた…


「（まるで、本当にひよこと会話してるみたいだったな…）」

   ビュゥゥウゥ…ッ！


そのときだった。

暗雲が空を覆い、少し風が出てきたのは――…。

  ザーッ…

風でざわつき始める木々の木葉に葉月はハッとしたように顔をあげる

「……クロ？」

心配そうに呼び掛けて来る九条を手で制した。


「し…ッ!」


「え？」

「静かに」

右手で制すると、葉月は険しい表情で空を睨み、まるで何かを警戒するように今度は風でざわつく木々を見渡す…

「……（なんだ？）」

表情が変わった葉月に、突如、吹き荒れる風に赤坂も怪訝な顔をするも、葉月に向かって足を一歩踏み出そうとした佐藤を止める。

「警部…？」

――――……
――…

ザーッ…

風に揺られ木葉が舞い散る-


ピィィィイイッヨォォﾞッッッ！！！



「あー…もうっ こんな時まで俺に迷惑かけないで下さいよ、ひよこ様」


風で飛ばされそうになっているひよこは葉月の髪の毛に必死にしがみついていた。