- カ ミ ツ キ 御影 -

外道法師、道仙

『………』

（まずい。かなりまずくないかこの状況！！）


気づかれないように…

そっと来た道を戻ろうとしたひよこの逃げ道を塞いだのは


シャン…ッ！

錫杖の先だった。


  ピッ！

『っぶな!!!』


あと数㎜ズレていなければ錫杖に突かれていたかもしれないその事実に、ひよこはカタカタ震えながら、ぽてっと尻もちつく。 


「ほぅ…

くっくっ！これは面白い… 久々の大当たりかと思えば、くっくっ！ひよこだったとは…」


ただ笑うというよりは嘲笑うその法師にひよこは睨みつける

しかしーー…


「くっくっ、ひよこじゃ妖の威厳も恐怖もない。しかし、面白い。お前のような大妖怪を倒せば名も上がると考えていたが… ひよこに成り下がった大妖怪を倒したところで笑い者だ。なら、お前にとって最も屈辱的な方法を取ればいいと思わんか？」


淡々と放たれる言葉に、ひよこはヤバい！と妖術を使おうとしたが、


  ピヨッ！？

『な…っ 妖術が使えないだと？！』


「…無駄な足掻きだ。既にお前は我が術中にいる。逃げられやしない」

ーー ピ…ッ！

法師が向ける錫杖の先から眩い光が放たれる…


そのとき、

ガキィイン!!


「く…っ！」

「ご無事ですか！？火月様」


ピヨッ！？

『なっ！？』

ちらり…


「話は後です」

錫杖に向かって間一髪、クナイを放った葉月は新たなクナイを取り出し、構える…


「…フンッ、 面白い！

よく覚えておくがいい。そのモノに掛けた呪詛は姿留めの術。つまり、永遠に惨めなひよこだということだ。呪詛を解きたければ私を捕まえてみよ…


我が名は、道仙どうせん！！この世を混純の世界へと導く者なり」


シャン…

ピヨ！？


『道仙だと！？』

「ご存知なんですか？」


ピヨ…

『道仙… 民間陰陽師で唯一、晴明と互角に戦った芦屋あしや 道満どうまんの一番弟子だったが…

世の理を崩そうとするばかりか、呪詛を使って周りを脅かせていた外道法師。略して外法師とも呼ばれていた。その諸行を知った師であった道満に破門されたと聞いている』


「ほぅ、そこまで知っているか…」


『『なら、全力で私を止めてみせよ… 山神と妖に愛されし元人の子よ。

でなければ…

世界は混純の闇に。その妖は永遠に、ひよこのままぞ…』』


ぶわっと、いきなり突風に襲われ、ひよこは ころころ… 転がり、葉月は腕で顔を庇う

姿無き道仙の笑う声だけが響いた。


「く…っ！いない!!」

突風が止んだ頃には既に道仙の姿はなく、


ぐでーん… 。と、完全に伸びているひよこと… 周りには突風で散った木葉で埋め尽くされていた。