16 / 68
初めての…
しおりを挟むーー…
「すごい… 初めて見るものばかり…」
頭にひよこを乗せた葉月は一通り歩いた後、小さな公園に行き着いた。
さわさわ…
木葉が風で揺れる
「ん…っ!ふふっ 気持ちいいなぁ」
んーっ!と腕を伸ばしていた葉月の視界に、あるものが目に入った。
ん?
「なんだろう…? この大きな箱…」
固くて大きな箱の中できれいに並んでいるモノを不思議に思って見ていると、笑う声が聞こえた。
「ぶっ!」
「え…?」
頭に"?"を浮かべて声のしたほうへ振り向くと、黒い髪をバックに、高そうな黒スーツを着こなした吊り目の美形な男が声を押し殺しながら笑っていた。
「さっきから見ていたが君は面白いな…っ 」
くくっ、と笑う低いバリトンの声に葉月の顔が瞬時に赤く染まった。
「……っな、なんですかいきなりっ!」
赤く染まった顔で男を睨み上げるも、
「いや、別に悪いとは言っていないさ」
笑うのをやめた男はその切れ目で葉月を見据える。
「で、君は自動販売機の前で何をしているんだ?」
……じっ、
「自動販売機って言うんですか?これ」
「?……ジュースか何かを飲みたかったんじゃないのか?」
「これが…
噂に聞くジュース…」
純粋に吃驚している葉月に怪訝な顔をしていた男はお金を入れた。
ガコッ!
ーー カタン、
「ほら、飲んでみろ」
男から受け取ったものの、開け方がわからない葉月が困惑していると、ひょいと奪われた。
「あ…」
プシュッ!
「これで飲めるだろう?」
苦笑いしながら、髪をクシャッと撫でられた葉月は羞恥からますます顔が赤くなっていく…
その赤くなった顔をごまかすように受け取った缶ジュースに恐る恐る口をつける
「!おいしい…」
「……自動販売機、ましてや缶ジュースを知らないなんて…
君はいったい…」
!
もしかして、親に酷い扱いを受けているのか?と真剣に聞いてくる男に葉月は慌てて首を振った。
「違います!
その、俺の家は人里から離れた山の奥深くで… 周りには木々しかない地で育ったので、初めて見るものばかりなんです」
俯く葉月の髪を撫でて男は笑みを浮かべる
「誰もおかしいとは思っていない」
「あ、あのっ!これ… ありがとうございます」
手に持つ飲みかけの缶ジュースをちらりと見て言う葉月に男は答える
「なんだ、そんなことか…。別に缶ジュースの一つや二つ構わないさ」
「あぁ、そうだ。名前を言ってなかったな。
俺は… 御堂院 理人だ。君の名前は?」
「俺の名前は…」
ピチチッ!
そのとき、空を飛んでいた小鳥を見て葉月は答えた。
「俺は… 小鳥です」
.
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
ザ・兄貴っ!
慎
BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は…
平凡という皮を被った非凡であることを!!
実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。
顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴…
けど、その正体は――‥。
生徒会補佐様は平凡を望む
慎
BL
※《副会長様は平凡を望む…》 の転校する前の学園、四大不良校の一つ、東条自由ヶ丘学園でのお話。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
『───私に喧嘩売ってるのでしょうか?』
南が前の学園で、副会長として君臨するまでの諸々、武勇伝のお話。
本人の主張する平凡とは言い難い非日常を歩む… そんな副会長サマもとい南が副会長になるまでの過程と副会長として学園を支配… 否、天下の副会長様となって学園に降臨する話である──。
副会長様は平凡を望む
慎
BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』
…は?
「え、無理です」
丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。
室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
龍神様の神使
石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。
しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。
そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。
※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!
慎
BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥
『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。
人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。
そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥
権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥
彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。
――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、
『耳鳴りすれば来た道引き返せ』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる