- カ ミ ツ キ 御影 -

文字の大きさ
上 下
15 / 68

雑鬼と御影

しおりを挟む

ーー… そして今に至る。


「…それにしても、ひよこ様の… このふてぶてしい顔、誰かに似てる気がする…」

ピ!?

「そ、そんなことは…っ!」

焦る氷雨とビクつくひよこに気づいているのか気づいていないのか、葉月は苦笑を浮かべる。


「だよね。…で、俺と一緒に来るんだよね?ひよこ様。まぁ、本人がついて来るつもりなら仕方ないか。ひよこ様、失礼しますね」

ふわふわ体毛のひよこを手に乗せると、そのまま頭に乗せた。

「それじゃあ、ちょっと街まで下りてくるけど… 
父様たちに内緒にしてね」

「はい。…ですが、その… あまり無茶をなさらないでくださいよ?」


    ピッ!

葉月の頭の上で胸を張るひよこ。

…しかし、当然、葉月にひよこの様子が見れるわけがなく、


「?無茶なんかしないけど…?」

「違いますよ。今、言ったのは…  はぁ、もういいです」


ひよこにキッと睨まれた氷雨は小さく溜め息ついた。


ーーーーーーーー
ーーーー…

ーーザッ!

身軽に木から木へと跳び移る葉月の頭にはひよこがしがみついていた。

『あっ!御影だぁ!』

『御影~』

『御影御影だぁっ!』


わらわらと集まる声に振り返る葉月は笑みを浮かべる

雑鬼ざっき

頭に角が生えているモノ、目が三つあるモノ… それは様々だった。体長は皆、大体20㎝ほど。

その小動物を思わせる彼らを葉月は一括りに雑鬼と呼んでいる。


『御影御影!どっか行くのかぁ??』

「うん。ちょっと街まで下りてみようかなって」


じっ…

『街…』

『街に下りるのかぁ?』

『吉平がよく許したなぁ…』


ヒソヒソ、

雑鬼が集まってヒソヒソと話しているが、


「………(丸聞こえなんだけど)」

声が漏れていることに気づいていない雑鬼達に思わず笑ってしまった。


くすっ、

「大丈夫だよ、だけど内緒にしてね」


兄様は心配性だから、と苦笑する葉月に雑鬼たちは元気な声を送った


『うし、任せろ!』

『そうだな!気をつけて行けよ!!』


くすっ、

「ありがとう」


微笑を返し、山を下りる葉月を見送った後、


『…だけど、吉平が心配するのも仕方ねぇんじゃねぇか?』

『だなぁ!だって御影はああ見えてちょっと抜けてるからなぁ!』


自分が去った後に雑鬼たちにそんな会話が交わされてることなど知るはずもない葉月は、数年ぶりの下山に知らず知らず深い笑みを浮かべていた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

副会長様は平凡を望む

BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー 『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』 …は? 「え、無理です」 丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

処理中です...