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休暇
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(そういえば…
あの日から山を下りたことがないけど、普通の人間はどんな暮らしをしてるんだろう…?)
和服の着物を身に纏い、足袋を履いた足で長い回廊を歩いていると、ふと気配を感じた。
「……氷雨?」
俺が視線を向けた先には黒い装束に身を包んだ、特殊部隊… 鴉の部隊長が立っていた。
「御影様、少し働きすぎじゃないですか?」
見た目は俺より三つほど年上に見える背の高い氷雨は… 見た目とは違い、もう何百年も生きている妖だ。
「ん~?そうかなぁ…」
「そうですよ。たまには一日、のんびり休んでください。あなたに倒れられたりでもしたら、こっちが困ります」
(あはは…。)
はっきり言う氷雨に思わず苦笑が漏れる。
「それじゃあ、今日は… 氷雨の言葉に甘えてみようかな」
身体の向きを変えかけたとき、
「…何処に行くつもりなんですか?」
掛けられた声に振り返る
「ん?
そうだね… 休暇も貰ったし、数年ぶりに… 下りてみようかな」
ーー 街に。
「え!?え、ちょ… それ、本気ですか!?」
そう答えると、なぜか焦燥した表情の氷雨。…ここまで顔色を変えた氷雨を見たのは久しぶりかもしれない
「うん。
…何かまずい?やっぱり休暇はーー」
「いえ、そういうことではなくてですね、何でよりによって…」
「え?」
「……はぁ、わかりました。
街へ下りることはあまり気乗りしませんが… 了承する代わりに、彼を同行させてください。…でないと、吉平様に報告します」
どうせ、兄様たちに言うつもりないでしょ?呆れた目を向けてくる氷雨に俺は苦笑い。
そして、
目の前の彼に困惑した表情を浮かべた。連れていけ、という彼は…
ふわふわ体毛の可愛らしい黄色のーー
ピヨッ!
一匹のひよこだった。
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