- カ ミ ツ キ 御影 -

幸せな時間

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昔のことを思い出していた俺の顔を兄様は心配そうに覗き込んでいた。

「え、なに…？」

その顔をあまり近づけないでほしい。まったくもって心臓に悪すぎる兄様の顔に俺は困惑した表情になる


……が、

そんな兄様は俺の気持ちを知ってか知らずか、官能的な顔を僅かにしかめた。


「葉月…

夢見でも悪かったのかい？」



「え？あ、いえ、ただ…  その…」

「…………」


歯切れ悪く、言い淀む俺に兄様は困惑した笑みを浮かべつつ、俺の口から出る言葉を待っていた。

（……やっぱり見逃してくれないよね）


兄様の先を促す視線に苦笑を零す


「いえ、ただ…

少し、昔のことを思い出していただけです」



そう言えば、

「そう…」


ほら、優しい兄様は複雑な表情で顔をしかめてしまった。

（……だから言いたくなかったのに）


そう思いつつも、

俺のことを自身のことのように按じてくれる兄様が大好きだった。時々、過保護する気もするけど…


優しい父様、こっそり見守る母様、いつも俺を甘やかそうとする兄様…

そして、


人ではない仲間。

そんな幸せな時間を噛み締めると同時に、俺は本当に此処にいてもいいのだろうか… と時々、不安になることもしばしばあった。