室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

第1章 月森ヶ丘自由学園

ちょっと黙ってて下さい

「そんなことよりも…」

「そんなことよりもって……」


岬の言葉が不服なのか、一々返す幸村をあえて無視する岬は続ける。


「そんなことよりも、次の段階に移りますよ？

まず、結城先生… 見てのとおり、光先輩に繋がれている医療機器は外しても何の問題もないので、外して下さい」


「ちょっと!!兄さんに触らないでよ!!」

結城はわかったと頷くや、光に繋がれている医療機器を外そうと近寄るがそれを望が阻んだ。


「……光先輩に目を覚ましてほしいのなら、そこをどきなさい。君が邪魔するのなら、光先輩は永遠に目覚めることはないでしょう…」

その岬の眼鏡ごしに見る眼力にその言葉に…… 望はひどく動揺する


「あんた達に任せたら兄さんは本当に‥‥ 目覚める？」

力なく望は岬に聞く


「君が邪魔をしなければ､ですがね？ 兄を本当に助けたいのなら、黙って見ていて下さい」

「…………」


「はぁ…。と､結城先生が光先輩から医療機器を外してくれたみたいですね。

では、次の段階に行きます…。今の光先輩からは全身麻酔を外しましたので、すぐにでも麻酔は切れるはずですので、そちらは大丈夫でしょう｡…ですが、本人の意思がなければ話は別。ということで、光先輩､本来の自分の身体へ戻って下さい」


そう言って、岬は何もない壁に向かって言った。


「は!??アイツ、何言ってるの?!」

「ちょっと黙ってて下さい」


「…………ッ！」


岬に注意され腹が立ったが、口を噤んだ。

「なぁ、霧島? お前さぁ、そんな簡単に言うけどなぁ どうやって戻りゃぁいいんだよ？」


戻れ、という岬に光はひたすら困惑を浮かべた。