室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

もう、大丈夫だよ。私が来たからね…。

ーーザ…ッ!

『ーー逝ってはいけないよ、ケイ』


「え・・・？」


突如、引き留めた新たな声に振り返る…

そこには、


「ーー…クロス？」

キサラやアンリといった執行裁判所のメンバーを統括するクロス裁判官がいた。


「おいで… ケイ」


ぽすっ！

おいで、という声と共に、震えるクリフェイドの体を暖かく包み込む温もり‥ 


その温もりはクリフェイドの凍えていた心を溶かすのには充分だった。



「もう、大丈夫だよ」

優しく笑みを浮かべ、ぽろぽろと頬を伝うクリフェイドの涙をクロスはそっと拭う


『ボクのロエンを返して！ボクの邪魔をするなら… アンタもッ！』

声を荒げるユタに、クロスは目を細め、手でクリフェイドの耳をそっと塞いだ。


「私をどうするって？出来るものならやってみたらいいさ！…出来るものならね…。

紛い物の神が本物の神に敵うはずがない。君は、所詮は人に作られた紛い物の神でしかないのだからね」



それでも、やってみるかい？と、にこやかに笑みを向けるクロスにユタは分が悪いと感じた。