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序章 英国フォルティア学院

この際、優等生なんかやめて…

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「すみませ…って、あなたも生徒じゃないですか!サボりの人にサボり呼ばわりはされたくないです」


無表情から一転して、少し眉間に皺を刻むクリフェイドはご機嫌ななめ‥


「……おい」

ポタポタ、と落ちる雫に、クリフェイドよりも背の高い彼は険しい顔つきで帰ろうとしていたクリフェイドを呼び止める


「なんですか?」

「……なぜ、ずぶ濡れなんだ?」


あ、

まずい…

クリフェイドは思いっきり顔をしかめた


「別に。ただ歩いてるときに誤ってバケツに躓いただけですよ。そのときに中に入っていた水を頭から被ってしまいまして‥」

ただそれだけです、と淡々というクリフェイドに男は些か納得いかない表情を浮かべるが、埒が明かないと悟った彼はクリフェイドの腕を少々強引に引っ張ると、


クリフェイドを抱き込むように胸元へ顔を押し付けた

「…そんな嘘が本気で通用するとでも思ったのか?」


真顔で問う彼は、逃がさないとばかりにクリフェイドをガッチリ捕まえていた


「……いや、あの‥」

ただタオルを借りに来ただけなのに、何故?! …というクリフェイドの心中を余所に彼はクリフェイドを見下ろし、溜め息つく。


近くの棚からタオルを取ると、クリフェイドの頭に乗せた

「はぁ…

とりあえず、こっちに来い。そのままだと風邪をひく」


男はクリフェイドを椅子に引っ張って少々強引に座らせると、ガシガシと濡れたクリフェイドの髪を拭いていく

さらには――‥


ブォー…

「…乾いたか」


ドライヤーで乾かしてくれるというオプション付き。クリフェイドはというと・・


終始、されるがままだった。

ーーーー…


「親衛隊にやられたんだろう?」

「えぇ、まぁ… そうですね」

どうでも良さげに言うクリフェイドに男は訝しげに見つめる‥


「普通は怒るところだろう?」

男の質問にクリフェイドは小さく息を吐く


「…なんていうんですかね、あまりにやることが幼稚すぎて、怒りを通り越して呆れてます」

あ、ですが‥


「先輩には感謝してますよ?先輩の‥途中、行動に少々理解に苦しみましたが…

こうして、髪も乾かしてくださいましたし、予備の制服も貸してくださったんですから。あのまま、誰かに遭遇してたら大変なことになっていたと思いますし、

特に生徒会とか風紀とか面倒くさそうですしね」


一番うるさいのは兄さんだけど、とクリフェイドは内心溜め息つく。

無表情で語るクリフェイド、その話を聞いていた男の片眉がピクリと動いたことにクリフェイドは気づくことはなかった‥


―― 風紀が面倒くさそうか、あながち間違いではないな…

憂鬱な表情で、生徒会のいる教室に戻るのは嫌だな、と小さく溜め息を漏らすクリフェイドの隣で男はただ無言でクリフェイドを見ていた‥。


「やはり、カオスですかねぇ…」

 は?

「何が、だ?」

クリフェイドの呟きに男は訊く


「僕、一応優等生を装ってるんですよね。この間まで通っていた学園で、少々派手にやってしまいまして‥

あ、もちろん喧嘩とかはしていませんよ? 喧嘩とかは苦手分野なので」


「…………」

「面倒なことはごめんなので、優等生してたら厄介事に巻き込まれないと思ってたのですが、どうも読みはハズレたみたいですね…」

中指で、かけていた銀フレームの眼鏡を押し上げるクリフェイドは言った


「この際、優等生やめて……」

クリフェイドは途中、言葉を途切らせてガン見する男に訊いた


「ズバリ、先輩に質問です。悪と正義、生徒たちが言うこと聞くとすれば、どちらだと思いますか?」


真顔で問うクリフェイドに少々困惑を浮かべながらも先輩は質問に答える


「そうだな、悪に対しては人は誘惑に負ける生き物だ。正義は助けを求めている奴らには感謝される…

人によって、それは様々だ」


と答える先輩にクリフェイドは、そうですか‥ と返事を返す

「…わかりました。悪と正義=魔王と神。共通する点は王様ですね」


ふむふむ、と頷くクリフ ェイドに先輩は嫌な予感を覚えた


「ちょっと待て。何か、勘違いしてないか?」

「いいえ、僕は先輩から教えて頂いた言葉を自分なりに解釈しただけですよ?」

色々とお世話になりました‥と会釈し、クリフェイドは先輩を一人残し、保健室から出ていった…。
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