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序章 英国フォルティア学院

地下に眠るのはーー…

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― - 屋敷内…

「昴… 」

 カチャッ

「? はい、どうかしましたか?」

陶器のカップに紅茶を注いでいた手を止め、自分の名を呼ぶ小さき主に視線を移す

「なぜ、あのとき僕の危機がわかったんだ?」


今日の出来事を思い返しながら、クリフェイドは疑問をぶつけた

それに、昴はあぁ… あれですか、と軽く相槌を打つ。

「声ですよ…」

カチャッと、止めていた手を動かし、再びカップに紅茶を注いだ昴はクリフェイドにも渡し、側にあった椅子に腰をかけて自分も紅茶を飲む。

「声…? 」

よく理解していない感じに訊き返すクリフェイドに昴は苦笑を漏らす

「謳を捧げたでしょう…? 憐れな仔猫に。そのときの貴方は無意識だったかもしれませんが、現代では使われない言葉で唄っていたんですよ」

昴は空になったカップを置き、目を細める

「遥か昔に失われた古き言葉でね…」


そして、意味深に微笑んだ。

「魔術にも使われていた古き言葉は… 現代の人間で知っている者はごく僅か。

……そのに生きている人間だけですよ。それでも古き言葉を完璧に理解している者はいないに等しい。古き言葉は全ての言語の原語。
よく言うでしょう?言葉には力が宿ると。全ての言語の原点である古き言葉には言霊が宿っています。ですから、魔術師たちは好んで古き言葉を使っていたんですよ。


より強力な魔術を生み出すためにね…。

話を戻しましょう。あのとき、貴方は無意識に古き言葉で唄っていたんですよ。今はまだ、力のコントロールのできない貴方は恐らく、右目の瞳孔が開いていたはずです。

……そのコンタクトはあくまで強すぎる力を抑え貴方の負担を和らげているだけに過ぎず、そういった力を封印できるわけではないんです。

言霊で紡がれた唄は人外の者を引き寄せます。良い意味で魅了、悪い意味で餌…」

ちょっと待て。
今、聞き捨てならん言葉が出たよな?

「……餌?」

明らかに嫌そうに顔をしかめるクリフェイドに昴は苦笑しつつ答える

「餌というのは――‥


力ある者を殺すと、そのぶん強い力を手に入れることができるんです。簡単に言いますと、手っ取り早い成長方法ですかね…。

ですが貴方の場合、厄介なことに・・

人外だけでなく、人間にも餌として狙われてます。一つは権力。そしてもう一つは… 贄を必要としている連中ですよ」

昴の最後の言葉にクリフェイドの眉がピクリと動く。


「贄なんかは、強い力を持つモノほど、より強い魔物を呼び出すことができます。……一番怖いモノは人間ですよ。

それだけはきっちり頭に入れておいてください。


それと、

貴方はもう目をつけられています。まだソロモンの鍵の持ち主だということには気づいていないでしょうが、贄として貴方を使おうとしていらっしゃる人間がいます」

あぁ――‥ あの噂か。

「ヒューマン牧師、か…?」


クリフェイドの言葉に昴は笑みを消し、コクリと頷く

「えぇ…。あの男は既に何人もの子供を生け贄にしています。もう何十年前から手を染めているみたいですよ、黒魔術に。…あの男は新しい新世界を立ち上げようとしているばかりか、セイントポール大聖堂の秘密の扉を探しているようです」


あそこに…… 秘密の扉?

クリフェイドは顎に手を置いたまま首を捻る。そんな部屋あったか?と昼間の回想をはじめるが、やはり心当たりはない。


「坊ちゃんは、ある部屋であの天使と会ったはずです。クローシェと…。」

そういえば、あったな。そんなことも…。

いろいろゴタゴタとしていた為、すっかりクローシェのことを忘れていたクリフェイドは、あぁ!と思い出す


「その部屋こそ、大聖堂の地下への秘密の扉ですよ。貴方はそれどころではなく、気付かなかったかもしれませんが…

クローシェ… あの天使はその番人のようなモノ、悪しき人間に見つからぬよう扉を守っているのです。


あそこの地下には…

その上に立つ大聖堂と変わらぬ造りになっていますが、決定的違いは――‥

“地下への扉は楽園への道“

造られたのは中世初期から16世紀、異端者が異端審問所の目から逃れるために造られたものです」

ふぅ…と昴は一息つき、さらに話を続けた。
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