室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

出生の秘密③

「幼い双子は上の兄たちから特に可愛がられ、常に傍にいた…

ですが、早く任務を果たしたい女は痺れを切らし、行動を起こしたんです。他のマフィアをけしかけて…」

   なんだって !?


アゼルにとって、それは信じ難いものだった‥。任務とはいえ、自分の腹を痛めて産んだ子供だ。それを‥ 他のマフィアをけしかけてまで…そこまでするものなのか――… ?

「突然のマフィアの襲撃に組織の人間は全員狩り出され、人が手薄になったのを見計らい、女はまだ物心がついたばかりの‥‥幼かった双子の手を引き、姿をくらまし、

――…カンパニーの社長の元へ連れて行ったんです」

「父親や兄、ファミリーの人間が気づいたときにはもう遅く――‥

女共々幼い双子はいなくなっていたんです。父親は… 先代ボスは子供が連れ去られたことと、女の裏切りに悲しみにくれました。
いくらファミリーの力を使って捜索しても、女と自分の子供の行方は知れず…

それからというもの、男は女嫌いになり、それを機に… ボスの座を降り、自分の容姿を活かして俳優の道に進んだそうです。

話が少々逸れましたので戻しますね…


連れて行かれた双子はその後、部屋に隔離されたそうですが… 詳しいことはわかりません。ただ、双子の兄、――‥は自分の片割れでもある自分と瓜二つの弟に物凄い執着心があるそうなので、そちらも心配なんですよ。

今のクリフェイドは何も覚えていません。もし、彼と再会したときに…… 何かに巻き込まれなければいいのですが…。」

クリフェイドの身を按じるヒューは悲痛な表情を浮かべる


「やがて、彼女はーー…

些細なことから、自分の上司である社長と意見が合わず、愛想を尽かした女は‥ 自分が所属する組織――‥カンパニーをも裏切り、
その上司への腹いせとばかりに、隔離していた双子を引き離し、片割れを… 外へ連れ出した。その、連れ出された片割れというのが――‥ クリフェイドなんです」

ふと目を伏せたヒュー、やがて顔を上げると、暗い表情を浮かべていた…

「偶然にも見つけた彼女を捕らえました。私や父さんは…… あのカンパニーの重要参考人として彼女を監視していただけであって… 籍に入れたりしてはいません。

ですが、ほんの少し目を離した隙に彼女はまだ幼かったクリフェイドを連れ… 逃げました。彼女は恐らく、クリフェイドを人質にするために連れて行ったのでしょう。

まだ幼いあの子に虐待するような人間です。我が子に愛があるとは思えませんしね…。だから、保護したときに彼女とは別々にしていましたが、まさか逃げられるなんて……」


悲痛な表情で話すヒューをアゼルは黙って聞いていた。

「クリフェイドの身が心配だった父さんや私はシュ バルク家の力と我々警察の力を使って街やいろんな所を捜索しました。。

   そして――‥

部下から連絡が入ったんです。街中で赤い血のついた服でふらついている子供を保護した、と……。」