室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

酒癖注意報！

「「「……………」」」


「く… クリフェイド！？一体どうしたんだ!!?」

お兄様、弟のあまりの変わりように驚かずにはいられない


が、クリフェイドはヒューの言葉が聞こえなかったのか、尚も理事長の髪を掴んで大理石の床に叩きつけていた。 しまいには‥

―― ｶﾞﾝｯ！


理事長の血だらけの頭を踏み付ける有様、酷い… あまりに酷い惨状に思わず全員揃って顔が引き攣ったくらいだ。


「………君の弟って‥ 酒癖悪いの?」

引き攣った顔でヒューに問うアゼル。そんなアゼルの問いにヒューは青ざめた顔で答える

「し、知りません！！未成年故にお酒類は飲ませたことはないので… そんなまさか、クリフェイドが‥ ここまでアルコールに弱いなんて」

というヒューは、初めて知ったクリフェイドの酒癖の悪さに全身から血の気が引くのを感じた。

ヒューたちが視線を向けるその先には‥

―― ｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｯ!!!!

理事長の流血した頭を容赦なく床に踏み付ける笑みを浮かべたクリフェイドの姿が…。

恐ろしい… なんて恐ろしい光景なんだ…っ

誰もが思った。

誰があれ・・(ｸﾘﾌｪｲﾄﾞ)を止めるんだ？

ーーと。

全員して、自分が止めに入り巻き添えになったらと考えると背筋が凍り付く。

あの、血だらけになった相手の人間に何を思うこともなく悪魔のような笑みを浮かべ罵り、さらには蹴る殴る床や壁に叩きつけ、しまいにはぐりぐり…っと傷口を踏み付ける。なんと悍ましい光景だろうか――‥。

「ヒュー… あれ、君の弟だろ？ 止めて来なよ。大丈夫だって！いくら酒癖が悪いからって、お兄ちゃんの言うことは聞くでしょ」

満面の笑顔で行け、と… ヒューの背中を押すアゼル。

「ア、アゼル王子！それは…っ」


アゼルに困惑を見せるヒューは自分でもわかる。自分の顔が引き攣っていることに‥。

ヒューがちらりと視線を向ける先には‥

「ｵﾞﾗｯ！下僕は下僕らしく床に這ってろよ！！」


― - ｶﾞﾝｯ！

「ひ、ひぃぃっっ!!!も、もうっ… ゆ、許し(ｶﾞﾝｯ！)げふっっ!!!」

まさに地獄絵。

クリフェイドが頭を踏み付けたのを最後に‥ 流血した理事長はﾋﾟｸﾘとも動かなくなった。

― - しーん…

そのとき誰もが思った。

し… 死んだ!!!?

え、マジで?! 俺らヤバいんじゃっっ!!!?


自身の命の危機を感じた一同は一瞬にして青ざめたのだった――‥。

　ーーが、クリフェイドはというと‥


「ちっ、下僕なくせして失神してんじゃねーよ!!!?」

―― ｶﾞﾝｯｯ!!!

「おいっ！起きろっっ！もっと俺を愉しませろよ下僕！！」

失神した理事長に舌打ちし、起きろ！と蹴り起こすクリフェイド…

それは普段のクリフェイドを知っている者なら、我が目を疑うほど今の状況は非常に信じ難い光景だ。

ヒューはその恐ろしい光景に青ざめるばかり‥。そんなヒューに、早く止めて来なよと促すアゼルも口許がヒクついているのをヒューは見逃さなかった。

「む、む無理ですよ!!!人格そのものが違うと言っても過言じゃない！第一、ク リフェイドの一人称は"僕"なんですよ?それが今では"俺"になってる…。酒癖が悪いからってここまで変わりますか！？」
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