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第1章 月森ヶ丘自由学園

今、なんか失礼なこと思いませんでした?

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「…それで勿論、室長は俺を入れる予定の学園と同じ学園に行くことになるんですよね?」

「まさか!僕はちがう学園にい「それはつまり、なんですか… 取る食事に口煩い俺を離すため、そういうことですか?」

「理由はもう一つある。二人揃うよりは別々にいた方がまだ安心じゃないか?(…学園でやりたい放題)」


「"理由がもう一つ"…ってことは、さっきのも理由の一つってこと認めてますよね…」

だ…だめだ!!!この室長をストッパー(俺)がいない学園に野放しにしたら… き、危険すぎるっ!!何をしでかすか分かったもんじゃない!!!

「そういうこ「だめです!!」

クリフェイドの声を遮ってシフォンは言った


「だめです!!トラブルを招く体質の室長を誰が止めるんですか!!ストッパーがいない学園に問題児な室長を野放しにするなんてそんな恐ろしい行為…それにっ食事の方も気になりますし、俺は室長と同じ学園に行きます!」


「は!? そんなこと許すわけ…「俺は別にいいんですよ?マコーネルさんに連絡しても」

「わ、わかった… お前も一緒に連れて行けばいいんだろ?」

面倒くさいな…。


「今、なんか失礼なこと思いませんでした?」

「気のせいだ」 


くそっ‥ この小姑が…っ!


「…それと、室長。あんた、さっきから思ってることを声にしてますよ?…すみませんねぇ?小姑みたいに五月蝿くて…」

もう何も言うもんか!とクリフェイドは無言になった。

「………」


「…それで、何処に向かってるんです?」

長き沈黙を破ったのはシフォンだった‥。


「日本」

「……何故、日本に?」

シフォンの心底疑問な声にクリフェイドは事もなげに答えた

「日本には満がいる。何かあったときはすぐに呼べるよう同じ国にいた方がいいだろ?それに、このままだと父にすぐにでもバレるからな…? 兄に…ちょっとばかり協力してもらおうかと」

ニッと口角を上げてクリフェイドは言う


「目指すはジル兄さんが経営する日本の月森ヶ丘自由学園…」


「………」

「ジル兄さんなら、匿ってくれるだろうし…。それに、兄さんが僕の頼みを聞かないわけがない」

どっから来るんですかね、その自信は……。


シフォンは思わず呆れ顔になる。

「…ですが、どうするんです?金銭面の方は‥? 何しろ、急なことでしたし、お金はそうありませんよ?」

「金のことなら大丈夫だ。僕に任せとけばいい‥」

「……まさか、お兄さんに?」

困惑を浮かべるシフォンにクリフェイドは首を横に振る

「僕はそこまで人に頼るつもりはない。最近は、休業していたが、金が必要とならば前にやっていた副業を再開するまでだ」

 副業‥!?

「副業!?なんですか、それは…? まさかとは思いますけど、犯罪的な事はしていませんよね!?」

「…安心しろ。ちょーっと法に触れる程度?」

は!?

「ま、まさか‥‥強盗!?」


いや、何故そうなる!?

シフォンの言葉にクリフェイドは内心、突っ込む‥。


「いや、僕もさすがにそれはない。…というより、お前は僕のことをそんなふうに思っていたのか?

………シバくぞ」


クリフェイドは真顔だ


「冗談ですって…

シバくとか、物騒なこと言わないでくださいよ?室長の場合、本気でシャレにならないんですから」


「悪かったな。シャレにならなくて」

「それで、その副業とはいったい…何です?」


「さぁな?世の中には知らない方がいいこともある‥」


「…………」

その瞬間から目的地まで到着するまで、二人の終始無言が続いた。


──────……
────…


「クリフェイドーっ!!!会いたかったよ♪」

月森ヶ丘自由学園に着いたクリフェイドとシフォン‥。



今は授業中なのか、理事長室へ行く途中、廊下を歩いていても誰一人会わなかった。そして、ノックもなしに理事長室というプレートの架かった扉を開けると金髪の男がクリフェイドに抱き着いてきた。

そう‥この男こそ、次兄ジルタニアス。シュバルク家の次男にして末弟のクリフェイドを可愛がる月森ヶ丘自由学園の理事長様だった‥。

「……兄さん、毎度毎度抱き着いてくるの止めて頂きたいんですけど」


「え~?もうクリフェイドは照れ屋さんだねぇ~☆そんなツンデレなところもまた可愛いよ♪」

頬を擦り寄せる兄、ジルタニアスを心底鬱陶しそうに手で押しやるクリフェイド‥

シフォンはそんな光景をア然と見つめていた



「大方のことはテレビで見たし、知ってるよ?クリフェイドなら、間違いなく僕の所に来るかなぁって思ってたし‥。クリフェイドはそう簡単にヤられるタマじゃないしね♪」


クリフェイドとの抱擁を気のすむまでやったジルタニアスはクリフェイドを解放し、ニッコリ笑って言った

「は?テレビ??」

いったい、何のことだ?と首を傾げるクリフェイド、


「あれ‥? 知らない?今、テレビでクリフェイドの顔写真が公に公開されてるんだけど… 」


「……は!?」

「え゙!?」

見て見て!!!とジルタニアスは新聞の切り抜きを持ってきた。そこには、眉間を寄せるご機嫌ななめなクリフェイドの顔写真が…。

しかも、写真の写り具合の角度から隠し撮りというのが明白だった。


その切り抜きを手に持ち、ぷるぷる…っと怒りで震えるクリフェイドに気付かず、ジルタニアスは自慢げに言った‥

「見てみて!!!よく撮れてるでしょ??この写真の提供者、僕なんだよ♪他にもクリフェイドの秘蔵の写真とかも、いっぱいあるよ☆」

……隠し撮りって‥盗撮じゃないですか!?

シフォンは内心突っ込みを入れる。


(い…いつの間に、こんなものを撮ったんだ?!)


クリフェイドは、隠し撮りに気付かなかったことにショックを受けていた‥。


「それで、なんか僕に頼みたいことがあったんじゃないの?」


突然、真面目な顔になるジルタニアスにクリフェイドは渋ったが事情を大まかに話した‥

そして、聞き終わった兄は一言。


「……馬鹿?」

「「…………」」


「普通、そんな賭けするかなぁ‥?バッカだねぇ」

ジル兄さんだけには馬鹿って言われたくなかった!!


「ん~? じゃあ…

僕を頼って来たのは、話しからするに、クリフェイド達を匿えってところかな?」


「父さん達にもバレるわけにはいかないんです!!だから、このことは他言無用で…」


「…なるほど。僕ならクリフェイドの頼みなら聞くからねぇ…。つまり、協力=共犯。ってところかな?フォロー役ね。ま、確かに父さん達にそんな危険な賭けのことバレたら…

説教どころじゃ済まされないだろうし、部屋に軟禁されるかもねぇ? …んで、その対策に次兄である僕を頼ってきたわけだ。」


  キィッ…


椅子に深く座り直すとジルタニアスは、目を細めクリフェイドを見据えて言った‥。

「ま、僕を頼ってきたことは正解だね。愛しい弟の頼みとならば断れないし。匿うのは構わないけど、此処じゃないよ?この学園はもう父さん達に知られちゃってるしね…クリフェイドが通っていたこと。

だから、僕の知り合いが経営している学園に通ってもらうよ」


「兄さんに知り合いなんて………いたんですか!?」


珍しく驚くクリフェイドにジルタニアスは苦笑する

「あのねぇクリフェイド、君はいったい僕をなんだと思ってるんだい?そりゃぁ人付き合いくらいはするさ!」

「………」

「それはそうと、クリフェイド‥。匿うにしろ、その髪をなんとかしないと」


「ですよね…」

「シフォン君だっけ?シフォン君も銀髪でちょ~っとばかり目立つけど、父さん達は知らないみたいだし!写真も公開されてないから、変装とかはしなくてもいいんだろうけど… クリフェイドは、ちょーっと金髪の地毛が目立つしテレビでも記事でも写真が載っちゃってるしね~」

「…写真提供したのは兄さんでしょう…?」

血管を浮かせて静かに怒りを表にするクリフェイドにジルタニアスは軽く諌めた。

「まぁまぁ!だって、クリフェイドが来ること分かってたし、変に疑われるよりいいかなぁって」


「室長、落ち着いてくださいよ? …それで、お兄さんは室長に変装させようと?」

「ん、まぁね♪」


「なら、最初にやっていたあの優等生の変装で「あ!だめだよ?」


「………何故ですか?」

クリフェイドは俄かに眉間を寄せた


「だって、クリフェイド~。この学園に通っていたときの格好で行くつもりなんでしょ?あれね~‥名前は公開されてないけど、テレビで生中継されたの覚えてる?? いい意味でも悪い意味でも、目立っちゃってるんだよね…あの格好とハプニングで抜けた鬘に金髪。

ちがうスタイルでいかないと… すぐにバレちゃうよ?」


「……むぅっ」

兄の言うとおりだと思ったクリフェイドは、どうしたものかと唸る‥

「ということで、はい!電話♪」


は!?電話?


「クリフェイドのお友達から電話だよ-☆」

お兄様は片目ウィンク。クリフェイドに受話器を渡した。

「……もしもし?」


兄から渡された電話にクリフェイドは渋々出る

『しーつーちょーうーっ!元気??オレっちのこと覚えてる??』

電話から聞こえる独特な喋り方の男にクリフェイドは眉間を寄せた‥。


「…ノクス・カタルセ」

『アッタリーっ☆さすが、室長っ!!オレっちのことを覚えてくれてるなんて… 愛を感じるッス♪』


「………黙れ。この研究オタクが!貴様、いっぺん天国に召してやろうか?」

『冗談っスよ!室長の場合、マジでシャレにならないっスね』


「ノクス…?」

電話から漏れる声にシフォンがきょとんとした表情になる。

『その声はシフォンっスか?やっぱりオレっちは天才だっち♪ 室長達の情報を掴むの、大変だったんスよ?』


「……どうやって調べたんだ?」

『それは教えられないっス!隠し事の多い室長と同じっスね。企業秘密ってことで‥ ま、室長には及びませんけど』


「それで、誰かに言ったのか?」

ノクスに問う声が低くなる。

『まさかぁ!オレっち楽しいこと大好きッス☆こんな美味しい話!シチュエーション!!!寧ろ大歓迎っスよ!!』


………美味しい…は、なし…? シチュエーション…?

クリフェイドとシフォンは電話から聞こえる言葉に嫌な予感が止まらない‥

『オレっち、さ い き ん!BL王道とかにハマってるッス☆オタク!変装っ!溺愛!総受けっ!!まさに王道最高ッス♪しかもしかも聞いた話しだと室長っ!!!全寮制の男子校に通うらしいっスね!? お兄さんに聞いたっスよ♪』

電話ごしに話すノクスはすごく楽しそうだ。そう、ノクスは世間で言う腐男子。

(――…忘れてたっっ!!コイツ、そっちの面でもオタクだった…)

しまった。なんで、こうも厄介な奴にバレるんだ…とクリフェイドは内心、嘆いた。

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