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第1章 月森ヶ丘自由学園

強制帰還されました…

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あの後、満や崙達と別れ中国から日本の学園へ戻ってきたクリフェイド、今はノンフレームの眼鏡で黒髪に黒目の優等生に早変わり‥

霧島 岬の姿になっていた。

そして、その岬が顔を引き攣らせ後退さるその視線の先には――…


「やっほ~♪久しぶりだね?僕の可愛いクリフェイド」

そう言って片目ウィンクする金髪の怪しいお兄さんは僕を抱擁するつもりなのか、両手を広げて立っていました。(←クリフェイド語り)


岬は、何も見なかったことにすると、くるりと体を回転させ、このまま学園から去ろうとする。


 が…

岬が足を一歩出したところで、金髪の青年に首根っこを掴まれてしまう

「Σって!?コラコラコラ……。ちょっと、なに逃げようとしてんの!?;; お兄ちゃん、悲しいよ??」


そう言うと、金髪の青年は心底うざそうに顔を歪めるクリフェイドもとい岬を強引に抱きしめるや抱擁。最初は離れようと抵抗し、じたばたと暴れていた岬も、諦めと、ここ最近の疲労が重なってか少し経てば大人しくなった。

学園では影の支配者・番長などと言われている岬。そんな岬を本人の意思関係なしに、ほぼ強引に抱擁する光景は、まさしく異様。


学園の生徒達がそれを見て騒げずにいられるわけがなかった…


「Σお、おいっ見ろよあれ!!あの、委員長が理事長の抱擁を受けてるぜ!?」

「うわっ…マジかよ」


ざわざわ…

        がやがや――‥


「影の番長が…?!」

「あ!オレオレ。実はさ、あの委員長がさ!!とにかく、校門まで来いって!面白い光景が拝めるぜ?」


ある生徒は携帯を使って友人に校門まで来ると面白いモノが見れると伝え、また、ある生徒はその珍しい光景に携帯のカメラで思わず撮る始末、

二人の周りにはあっという間に野次馬が円になって集まっていた。まるで、一時期のレッサーパンダのような扱いに当然、不快感を抱いてるのはクリフェイドもとい岬だった…。


「…いい加減、離して下さい。でないと、セクハラで通報しますよ」

「ん~? それは困るね」


パッと岬の身体から手を離す金髪の青年、

「…で、僕に何か用ですか?ジル兄さん」


金髪お兄さんもとい次兄のジルタニアスは苦笑しながら、学園を指さして言った


「いや、一応ね‥‥僕、この学園で理事長やってるんだけど…」

「…………は?…すみません。よく聞こえなかったので、もう一度言って頂けるとうれしいんですが…」

という岬は、口元が引き攣っている


「あれ‥? 聞こえなかった?僕さぁ、一年前からこの学園の理事長やってるんだけど…。いや、それにしても、まさかクリフェイドが僕の学園にいたなんてね…気づかなかったよ。知ってたら、毎日教室に押しかけて参観と称して会いに行ってたのに…」

ますます顔を引き攣らせる岬の顔が目に入らないのか、もはや言いたい放題の次兄ジルタニアス。

その理事長らしからぬ軽く職権乱用発言に周りの野次馬もドン引き。それを耳にした教師らも岬と同様に顔を引き攣らせていたことは言うまでもない。


「っていうかさぁ~、クリフェイドも感動の再会なんだから、もう少し感動とかさぁ…」

顔を引き攣らせていた岬。今じゃ、心底迷惑そうな顔をしている‥。

「…別に感動も何もないんですけど」

「ん~…? 相変わらずだねぇクリフェイド。ま、そんなところがまた愛しく思えて仕方ないんだけどね♪」

兄を前にして仏頂面の岬に反してジルタニアスは久しぶりの再会にご満悦だ。


「すみませんが、兄さん。僕は今をもってこの学園を退学し「ダメダメダメ!!なに、言ってるの!?お兄ちゃんは認めないよ!!退学なんて!!」


退学を申し出ようとした岬に即、断固拒否するジルタニアス…

 その顔は必死だ。


「大体、なんで家出なんかしたの? 父さんとヒュー兄さんも随分怒ってたじゃないか」

急に真面目な表情をして岬に問うジルタニアス。やはり、兄として心配なのだろう


「…何で知ってるんですか?」

ジルタニアスの言葉に驚いた岬、


「いや、だって……知ってるも何も、あれ生中継で世界中に放映されてたよ?  もしかして、知らなかった?」

何を今さら…とばかりの顔をするジルタニアスに岬は、地面にへたりこんだ。

「…く、クリフェイド!?」

弟のあまりにもの落ち込み様にジルタニアスは、あたふた‥

「…それじゃあ、何ですか。あの一連の全てが……」

「うん。知れ渡ってるね…。Σだ、大丈夫だって!いや、まあ‥‥確かにクリフェイドが本国の情報機関の室長をやってるなんて驚きだったけどさ、


父さん達もきっと許してくれるよ」


岬が落ち込んでいく理由がバレたことによるアクシオン達の説教だと勘違いするジルタニアスは岬を励ますが、

実際、岬が落ち込んでいる理由は自分の正体が全世界にバラされたことだった。

しかも、FBIとCIAの幹部をそれぞれ身内に持つ英国の国家機密情報機関特殊組織の室長、しかもまだ少年という若さ。

注目の的になるには違いなかった。

岬がうなだれている理由というのが、まさにそれだった。

(さ、最悪だ。何故、気付かなかったんだ!!あのときの僕っ!!)


英国メディアの存在に全く気づいていなかった岬は、過去の自分を呪った。うなだれ放心状態の岬をいいことにジルタニアスは弟を抱擁する。

放心状態の岬は、もはや、ジルタニアスのされるがままだった…。

───と、そこへ…


 キ、キキーッッ!!

         バタン‥


「クリフェイドっ!!!」

その突然の声に岬は顔を歪める


「げっ…」

「く、クリフェイド!? 父に対してその、あからさまな嫌な態度はないだろ?! Σハッ!そうだ!!クリフェイド、怪我はないのか!? 崖から飛び降りるなんて父さんは心臓が止まるかと思ったんだぞ!?」


アクシオンは、ベリッとジルタニアスから岬を離すや、岬の身体をペタペタと触る‥

「怪我は……ないみたいだな。よかった」


どうやら、岬の身体を触っていたのは怪我をしていないかのチェックをしていたようだ

…とんだ過保護である。


「さぁクリフェイド、帰るぞ」

「は!?何を言ってんですか!嫌ですよ。何の為に、わざわざ手間隙かけて家出してきたと思ってるんですか」


岬もといクリフェイドは、さも当然の如く言い放つ。


「クリフェイド?! 何を言っているんだ!??家出だなんて…家出なんて……いったい何が不満なんだ!?これでも俺は愛しい息子の為にいろいろしている。尽くしている…

 なのに、何が不満なんだ!?」

アクシオンは嘆く

「え‥? 言っていいんですか?本当にいいんですよね?…なら、言わせて貰いますけど!はっきり言って、うざいです。限りなく鬱陶しいんです。ちょっとした外歩きでさえ、SPを付けるや付き纏われるや…

うっざいんですよ!!ぶっちゃけ言いますと」


ズバズバと遠慮なしに本心を口に出すクリフェイド‥。そしてアクシオンは、そんな溺愛息子の思わぬ本心にショックを隠しきれず、その顔には動揺が走るばかりだ‥。

「なっ……く、クリフェイド!? 一体、何がお前をそんなふうに変えたんだ?! 昔はあんなに甘えてきたじゃないか!」

周りの人間関係なしに息子に詰め寄るアクシオン‥。クリフェイドは父の言葉に顔をしかめた


「…は? 昔??知りませんよ。僕に昔の記憶がないにしろ、自分の性格ぐらいわかります。甘えていた等、嘘っぱちですね」

ハッと鼻で笑うクリフェイドに周りの人間が捻くれてると思うも、アクシオンにかぎっては‥


「そんな捻くれたところもまた、可愛いなクリフェイド」

クリフェイドの、その小生意気な態度も愛しく思えて仕方がない…。


「父さん、もしや目的をお忘れですか?」

 ジャリ‥

突然の低いバリトンの声。その声にクリフェイドは、さらに顔をしかめる
 

「最悪」

思わず、本音が漏れてしまった。

そのクリフェイドの声に、突如現れた男は整った顔を破顔させた


「クリフェイドーっ!!会いたかった。すまなかったな。お前も寂しかったのだろう?だから、こんなにも捻くれてしまった。…いや、まあ、そんなところも可愛いんだが。私も仕事仕事でお前に構ってやれなかったからな?その構ってやれなかった分、屋敷へ帰ったら何をしようか‥」



もはや、クリフェイドを連れて帰る前提だ。


「ヒュー兄さん!何、ふざけたこと言ってるんですか!僕は帰りませんよ。帰るなら勝手に帰って下さい。それと、性格が捻くれてるのは元からです!」


現れた男、ヒュー・シュバルクを睨みつけるクリフェイド。だが、それも彼らの前では無意味。全く効果がなかった。

そして、その光景を少し離れた所から見守る約ニ名、


「……何というか、いろんな意味で凄いですね。室長が逃げたくなる気も分かる気がします」


さらさらと銀色の髪が風に撫でられながら、若干顔を引き攣らす青年と‥


「同感だな;」

それに頷く男。

そう、シフォンとレオの二人だった‥。


「…で、どうします?あれを見るかぎり別に俺達が出向かなくとも、お父様とお兄様に英国へ連れ戻されるのでは…?」

確かにシフォンの言うとおりである。


「どうすっかなぁ…;」


レオ達が思案くれている間に、アクシオン達は喚き散らすクリフェイドを強引に車に押し込むと、運転手の男に車を出すよう指図。

あっという間に車の姿が見えなくなった‥。


「行っちゃいましたね」

「だな…。」


もう、慣れてしまったのか、クリフェイドが無理矢理車に乗せられ連れて行かれたにも関わらず冷静な二人。

まぁ、冷静でいられるのは、その連れ去った相手がクリフェイドの父と兄だと分かっているからとも言えた。


そこへ、その連れ去り事件に酷くあわてふためく少年がニ名やって来た。

「み…岬君っっ!?」

「岬が誘拐されたーっ?!」


涙と葵だった。


いつの間にか帰還した彼ら‥。涙と葵以外の生徒会メンバーは至って普通……いや、周りの人間同様に顔を引き攣らせていたが、二人は岬が誘拐された!?とパニック。

「ちがうちがう。あの子はね、少~し‥? 祖国、英国に帰っただけだよ。学園も退学させないし、また帰って来るよ?…たぶんだけど(ボソッ」

「…え!?そうなんですか!! よかった…」


誘拐じゃなかったことに、ホッと安堵する涙と葵。


「あの‥最後、なんて言ったんですか??」

最後の言葉が聞こえなかった葵は理事長のジルタニアスに聞くが、

「…さぁね」


ジルタニアスは意味ありげに微笑みを浮かべた。
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