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第1章 月森ヶ丘自由学園

貴方、一度死んでみますか

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「あれ~誰かと思ったら、俺の大親友のクリフェイドじゃないか! ぷっ‥なにそれ!その格好っ超笑えるんだけどーっ」

あははっ!と馬鹿笑いする青年に岬の顔に青筋が浮かんでいく


「……大親友? ハッ、馬鹿なことを言わないで下さい。冗談は顔だけにしてほしいですね」

「わぉ… いや~、久々の毒舌っぷり!うん!君はそれでこそ君だね!」


嫌味たっぷりな岬に対し、青年は悪気なしに思ったことを素直に言っただけなのだが、

「……ふぅ。貴方、一度死んでみますか」


銃口を彼の額にくっつけて無表情で言う岬は、まったくシャレにならない。シフォンが血相をかえて、二人の間に入り岬を宥めた。

「ちょっと俺の扱い酷くない??どこが気に入らないのさぁ? 素直に褒めただけなのに…」


そう不満げに愚痴る青年の言葉にシフォンは青ざめる。

(ちょっとぉぉおぉ!!?俺が必死に室長を宥めてるっていうのに、逆に煽ってどうするんですかぁぁ!!)

「殿下、お願いですから、それ以上、火に油を注ぐようなことを言わないでくださいっ!!!」


シフォンは必死だ。

そんなやり取りを静かに傍観していた崙は思う


(……空気読めない人ネ。私、こういう人種は苦手ヨ。けど、傍観者側からしたら、これ以上ないくらい面白い光景ネ!)


崙は崙なりに、この状況を愉しんでいた。


「ちっ…。これだから、馬鹿は嫌いなんです」


岬は隠そうともせず、堂々と舌打ち、

「ちょっ…馬鹿って、あんまりじゃない?仮にも、親友にさぁ」

「貴方、一度親友って言葉を辞書で調べてはいかがですか?僕には馬鹿な知り合いはいますが、親友は一人もいませんね」

”馬鹿な知り合い”をやたら強調して言う岬は、シフォンに向かって言った


「早く、この馬鹿を連れて行け。僕はまだやり残したことがある。」

シフォンと崙に告げると、岬は目を細め前を見据えた

───そこには‥


でっぷりとした身体に脂汗をかいている……

「お久しぶりですね?学園長…。」


学園長の姿があった。

「ふぅ‥。まったく、君は一体どこまで私の邪魔をする気かね?霧島君」

その顔は忌ま忌ましげに歪められている。


「さて、ね…。そんなもの、知りませんよ。
僕は… 人がせっかく楽しみにしてる学生生活をこれ以上、壊されたくないので」


岬は淡々と言い放つ───。


「…それと、貴方達いつまでそこにいる気なんですか。いい加減、邪魔なんで、さっさとその馬鹿を連れて行って下さい」

その岬の言葉にシフォンは青年を連れて走る


「崙、貴方もです」

シフォン達を見送る崙に告げる岬は、早く行けと促す

「私もネ!?」

「当たり前です。さっさと行って下さい。…シフォンだけでは心配ですし」


部下の身を按じる岬の目に崙は驚くが‥

「あの馬鹿が何も、しでかさないとは思えません」

その岬の言葉に、崙が、え…そこ?! と突っ込んだのは言うまでもない。

崙がシフォンらの後を追うのを目の端で捕らえると岬は前に佇む学園長へ視線を移す


「───で、スクワットは何処にいるんです?僕としては貴方に用はないんですが」

ズレ落ちる眼鏡をくいっと押し上げ、岬は鋭い目で睨み据えて言った

    ( 何かおかしい…)


ふと、岬は違和感を感じた。

さっきから違和感を感じていたが…… そうか!此処に来るまで見てきた限り、学園長の配下の者しか見ていないんだ。

それにしても何故だ?スクワットの拠点である筈のアジトに奴どころか、学園長を除いた奴の部下が誰一人いないのは、おかしすぎる……とすると‥

「…………」

--奴の性格から考えて、たかが下っ端連中に自分の城を好き放題にさせているとは考えにくい…。それに、学園長は僕がさっき言った”スクワット”という言葉に些か反応を示した。

僅かに眉が吊り上げたのは確かだ。野心深い学園長の性格を踏まえると、結論的には『裏切り』。…ま、今の段階だと、これが一番妥当な答えになるな。

岬は一つの結論に行き着くと、学園長を見据えて面倒くさそうに溜息をついた。


(…また、面倒くさそうなことに巻き込まれたな‥ハァ。組織内の紛争か)

スクワット、奴のような男がそう簡単にくたばるとは考えにくい。…いや、どちらにしろ学園長が邪魔には違いない。


ふぅ‥ 岬は一つ息をつき学園長に銃口を向ける。


「───すみません、学園長。貴方は僕にとって目障りな障害でしかならないので…

とりあえず、死んで頂けませんか…?」


酷薄な光が宿るその瞳に学園長を映し、岬が発した声は酷く冷たかった。
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