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【番外編2】望、多波を攻める(1.望はマグロ?)
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「望ぃ~、同棲はどう?楽しい?」
「えへへ~、楽しいよぉ~」
私はニコニコしながら、ねぎまを頬張った。
多波さんと同棲を始めて、一カ月が経った。今日は、駅前の雑居ビルに店を構える焼き鳥屋で、短大時代の友達、いっちゃんと飲んでいる。
「ぼんじり」「ハツ」「つくね」こぢんまりとした店内には、お品書きの札が所狭しと貼り付けられている。
二人掛けのテーブル席に、私といっちゃんは向かい合って座っていた。テーブルには、店長オススメの焼き鳥セット、それから梅酒とレモンサワー。何杯か飲んで、二人ともいい気分になっていた。
「ねぇ!彼氏の写真見せてよ!」
いっちゃんはニヤニヤしながら、年季の入った木製椅子から身を乗り出した。
「んー、いいよぉ・・・」
酔いが回ってフワフワする人差し指で、スマホの写真を選択する。
「フフフ~、これ、これぇ~」
猫カフェ行った時の写真を、いっちゃんに見せた。多波さんの頭に猫、腕に猫、膝に猫、全身に猫。猫まみれになって、ちょっと困った顔をしている彼の写真。慌てふためく猫カフェの店員さんが、彼の背後に、さりげなくフレームインしている。
「わぉう!!ガタイいいね!!しかも男前~!」
いっちゃんは、私からスマホを引ったくって、まじまじと見た。そして、
「ぐっふっふっふ~」
下品な笑い声を立てて、おしゃべりを続けた。
「夜もすごいんでしょ~!このこのぉ!!」
いっちゃんに頭を小突かれて、思わず赤くなる。
「え・・・、えとえと・・・あはは~・・・そうかも・・・」
夜どころか、昼もすごいよ。主に愛情表現が・・・
この前なんか、多波さんに繁華街でお姫様抱っこされた挙句「愛してる」って囁かれたし・・・
周囲から降り注ぐ好奇の目線。ど真剣な多波さん。汗だくの私。
アレは、恥ずかしかった・・・
両手で頬を覆って悶えていると、いっちゃんは目を細めた。
「望は、ベッドで彼にどんな事してあげるの?まさか、マグロじゃないでしょう?」
「え!?マグロじゃないよ!私・・・そんなに積極的じゃ・・・。どちらかと言うと・・・彼メインかなぁ・・・」
「ん?ちょっと待って、話が噛み合ってない。マグロってさぁ、ベッドで何もしない人の事だよ?相手に任せっぱなしってヤツ。望・・・そうなの?」
「え・・・ダメなの?」
「ダメダメ~!エッチはスキンシップなんだから、お互いにしなくっちゃ」
「そ・・・そうなんだ・・・」
――お互いに
――スキンシップ
いっちゃんの言葉が、全身を駆け抜ける。
・・・エッチって男が積極的して、女は受け身だと思ってた・・・違うんだ
今までの情事が、走馬灯のように脳裏を巡る。
あの時も、この時も、私・・・、多波さんに全部任せてた・・・
罪悪感が押し寄せ、酔いが一気に覚めていく。
もしかして、多波さん・・・イヤイヤやってた??実は、私にうんざりしてた??
「ゔゥう・・・多波さぁん・・・」
ヤバい。泣きそう。
涙より先に、水っぱなが垂れた。
そんな胸の内を悟ったらしく、いっちゃんは私の肩を、励ますようにポンポン叩いた。
「望君、そう落ち込まなくていい。何事も勉強だ、勉強。そんな君に、秘伝の技を伝授しよう」
急にオヤジ口調になった彼女は、手元のおしぼりを、くるくると細長く丸めた。
「秘伝・・・?」
「見たまえ」
いっちゃんは細長いおしぼりに手を添え、笑った。目を細めてニンマリと。
「彼にやったげたら、喜ぶヨォ・・・」
滑らかに滑り出す、いっちゃんの手。
私は釘付けになった。ぼとり。頬張っていたねぎまが、テーブルに落ちた。
「えへへ~、楽しいよぉ~」
私はニコニコしながら、ねぎまを頬張った。
多波さんと同棲を始めて、一カ月が経った。今日は、駅前の雑居ビルに店を構える焼き鳥屋で、短大時代の友達、いっちゃんと飲んでいる。
「ぼんじり」「ハツ」「つくね」こぢんまりとした店内には、お品書きの札が所狭しと貼り付けられている。
二人掛けのテーブル席に、私といっちゃんは向かい合って座っていた。テーブルには、店長オススメの焼き鳥セット、それから梅酒とレモンサワー。何杯か飲んで、二人ともいい気分になっていた。
「ねぇ!彼氏の写真見せてよ!」
いっちゃんはニヤニヤしながら、年季の入った木製椅子から身を乗り出した。
「んー、いいよぉ・・・」
酔いが回ってフワフワする人差し指で、スマホの写真を選択する。
「フフフ~、これ、これぇ~」
猫カフェ行った時の写真を、いっちゃんに見せた。多波さんの頭に猫、腕に猫、膝に猫、全身に猫。猫まみれになって、ちょっと困った顔をしている彼の写真。慌てふためく猫カフェの店員さんが、彼の背後に、さりげなくフレームインしている。
「わぉう!!ガタイいいね!!しかも男前~!」
いっちゃんは、私からスマホを引ったくって、まじまじと見た。そして、
「ぐっふっふっふ~」
下品な笑い声を立てて、おしゃべりを続けた。
「夜もすごいんでしょ~!このこのぉ!!」
いっちゃんに頭を小突かれて、思わず赤くなる。
「え・・・、えとえと・・・あはは~・・・そうかも・・・」
夜どころか、昼もすごいよ。主に愛情表現が・・・
この前なんか、多波さんに繁華街でお姫様抱っこされた挙句「愛してる」って囁かれたし・・・
周囲から降り注ぐ好奇の目線。ど真剣な多波さん。汗だくの私。
アレは、恥ずかしかった・・・
両手で頬を覆って悶えていると、いっちゃんは目を細めた。
「望は、ベッドで彼にどんな事してあげるの?まさか、マグロじゃないでしょう?」
「え!?マグロじゃないよ!私・・・そんなに積極的じゃ・・・。どちらかと言うと・・・彼メインかなぁ・・・」
「ん?ちょっと待って、話が噛み合ってない。マグロってさぁ、ベッドで何もしない人の事だよ?相手に任せっぱなしってヤツ。望・・・そうなの?」
「え・・・ダメなの?」
「ダメダメ~!エッチはスキンシップなんだから、お互いにしなくっちゃ」
「そ・・・そうなんだ・・・」
――お互いに
――スキンシップ
いっちゃんの言葉が、全身を駆け抜ける。
・・・エッチって男が積極的して、女は受け身だと思ってた・・・違うんだ
今までの情事が、走馬灯のように脳裏を巡る。
あの時も、この時も、私・・・、多波さんに全部任せてた・・・
罪悪感が押し寄せ、酔いが一気に覚めていく。
もしかして、多波さん・・・イヤイヤやってた??実は、私にうんざりしてた??
「ゔゥう・・・多波さぁん・・・」
ヤバい。泣きそう。
涙より先に、水っぱなが垂れた。
そんな胸の内を悟ったらしく、いっちゃんは私の肩を、励ますようにポンポン叩いた。
「望君、そう落ち込まなくていい。何事も勉強だ、勉強。そんな君に、秘伝の技を伝授しよう」
急にオヤジ口調になった彼女は、手元のおしぼりを、くるくると細長く丸めた。
「秘伝・・・?」
「見たまえ」
いっちゃんは細長いおしぼりに手を添え、笑った。目を細めてニンマリと。
「彼にやったげたら、喜ぶヨォ・・・」
滑らかに滑り出す、いっちゃんの手。
私は釘付けになった。ぼとり。頬張っていたねぎまが、テーブルに落ちた。
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