13 / 31
≪ビーツのスープ≫
しおりを挟む
夜な夜な一人の幼き少女が、吹き荒ぶ厳寒の街角で、物売りに励んでいた。
彼女が売る物は、リップスティック。
そう!
彼女は、リップ売りの少女。
冬場は、乾燥して唇もカッサカサ。
自らの手作りのリップで、街行く人の唇がつやっつやになれば!との想いで、少女は声を出し売りに励みます。
「リップスティック…リップスティックは、いかがですか~?唇の乾燥や、口の横が切れてしまった方はいませんか~?天然の植物オイル配合の、リップスティック…リップスティックは、いかがですか~?」
しかし、こんな夜更け、人っ子一人通りません。
あまりの寒さに、少女の声は震え、どんどん小さくなってゆきます。
かじかむ手で持つカゴに、目をやる少女。
「この中のリップスティックを全部売り切るまでは、家に帰れない。だって親方に叱られてしまうもの…」
しかしながら、少女も寒さには勝てません。
何とか、少しばかりの暖を取りたい!
「そうだ。このリップスティックを燃やし、ちょっとだけ暖まろう。ちょっとだけ…」
少女はポケットに入っていた、マッチを擦りリップに点火し、わずかばかりの暖の時を過ごします。
しかし、ほんの数分でリップは燃え尽きてしまいます。
「もっと暖まりたい。」
もう一本、もう一本…少女は次々と売り物のリップに、火をつけてゆきます!
少女は、リップが灯す火の中に、自分には無い家族団らんの温かい風景や、七面鳥がメインの温かい豪華なディナーを、垣間見ました。
もしここに、ビーツのスープがあれば、どれほど少女の身体は暖まるでしょうか。
もはや、長きに及ぶ厳寒の時に、少女の身体は凍え徐々に意識が遠退いてゆきます。
少女の身体は、もう限界を迎えました。
最後に灯したリップの火の中に、いつもいつも自分の味方をしてくれた、大好きなおばあさんが現れます。
おばあさんは、決して多くを語る事なく柔らかな笑顔で、温かく少女を抱き締め包み込みます。
現実世界を離れ、火の中に取り込まれた少女の顔は、目を瞑った安堵の表情でした。
ーーーーー。
神様は、すぐさま次の入れ物を用意しました。
輪廻転生。
少女の魂は、何度も何度も生まれ変わった物でした。
リップの前は、マッチを。
そしてこの後は、モップ売りの少女として。
その後は、シップ売りの少女として。
シナリオは、ちゃんと決まっているのですー。
おばあさんは、きっと火の中の世界で、半分セロファンを剥がした湿布を手に持って、少女を癒す為のどれほどのビーツのスープよりも温かい満面の笑みで待っている事でしょう。
彼女が売る物は、リップスティック。
そう!
彼女は、リップ売りの少女。
冬場は、乾燥して唇もカッサカサ。
自らの手作りのリップで、街行く人の唇がつやっつやになれば!との想いで、少女は声を出し売りに励みます。
「リップスティック…リップスティックは、いかがですか~?唇の乾燥や、口の横が切れてしまった方はいませんか~?天然の植物オイル配合の、リップスティック…リップスティックは、いかがですか~?」
しかし、こんな夜更け、人っ子一人通りません。
あまりの寒さに、少女の声は震え、どんどん小さくなってゆきます。
かじかむ手で持つカゴに、目をやる少女。
「この中のリップスティックを全部売り切るまでは、家に帰れない。だって親方に叱られてしまうもの…」
しかしながら、少女も寒さには勝てません。
何とか、少しばかりの暖を取りたい!
「そうだ。このリップスティックを燃やし、ちょっとだけ暖まろう。ちょっとだけ…」
少女はポケットに入っていた、マッチを擦りリップに点火し、わずかばかりの暖の時を過ごします。
しかし、ほんの数分でリップは燃え尽きてしまいます。
「もっと暖まりたい。」
もう一本、もう一本…少女は次々と売り物のリップに、火をつけてゆきます!
少女は、リップが灯す火の中に、自分には無い家族団らんの温かい風景や、七面鳥がメインの温かい豪華なディナーを、垣間見ました。
もしここに、ビーツのスープがあれば、どれほど少女の身体は暖まるでしょうか。
もはや、長きに及ぶ厳寒の時に、少女の身体は凍え徐々に意識が遠退いてゆきます。
少女の身体は、もう限界を迎えました。
最後に灯したリップの火の中に、いつもいつも自分の味方をしてくれた、大好きなおばあさんが現れます。
おばあさんは、決して多くを語る事なく柔らかな笑顔で、温かく少女を抱き締め包み込みます。
現実世界を離れ、火の中に取り込まれた少女の顔は、目を瞑った安堵の表情でした。
ーーーーー。
神様は、すぐさま次の入れ物を用意しました。
輪廻転生。
少女の魂は、何度も何度も生まれ変わった物でした。
リップの前は、マッチを。
そしてこの後は、モップ売りの少女として。
その後は、シップ売りの少女として。
シナリオは、ちゃんと決まっているのですー。
おばあさんは、きっと火の中の世界で、半分セロファンを剥がした湿布を手に持って、少女を癒す為のどれほどのビーツのスープよりも温かい満面の笑みで待っている事でしょう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
リアル男子高校生の日常
しゅんきち
エッセイ・ノンフィクション
2024年高校に入学するしゅんの毎日の高校生活をのぞいてみるやつ。
ほぼ日記です!短いのもあればたまに長いのもだしてます。
2024年7月現在、軽いうつ状態です。
2024年4月8日からスタートします!
2027年3月31日完結予定です!
たまに、話の最後に写真を載せます。
挿入写真が400枚までですので、400枚を過ぎると、古い投稿の挿入写真から削除します。[話自体は消えません]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる