私と神様と時々おっさん

花雨

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 京花の奮闘記

 京花のとある1日②

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 …はぁ…昼間から近所の湖眺めてる私って何だろな…
 しかも外は灼熱の太陽だし、干からびちゃうよ…
 家でまったりしてればよかった…
 ん…?あのおじいさん、いつもここで釣りしてる人だ…飽きないのかな??

 お嬢ちゃん、お嬢ちゃん釣りは好きかね??

 …。あ、話かけられちゃった。
 私は釣りはしません。食べるだけです。

 ホホホ…食べるだけか。
 ものは試しにやってみるかね…。

 でも何か難しそうだし。

 ワシはこの湖で訳あって50年釣りをしておる。
 ワシがレクチャーしてやるぞ♪♪

 はい…えーとこの竿を投げればいいんですね…
 エイ!…。

 ホホホ…初心者にしては上出来じゃの。

 …ん?さっそくですけど何か食い付いたみたいです…

 お嬢ちゃんなかなかやるの♪♪そしたらそのリールを回すのじゃ…。

 リール回すんですね…
 …何か…見えてきました。
 あ…!釣れました!…
 何か色がレインボーの魚が…。

 なんじゃと!!!
 それはワシがこの湖で半世紀、追い求めても捕まえられなかった伝説の魚、トリニクじゃ!!!

 ……。素人の一投目で釣れる魚ってもはや伝説ではないのでは…汗 しかも名前がトリニクって……。

 お嬢ちゃん、近くでその伝説の魚トリニクを見せてくれんか!!!
 胸が高鳴るわい!!!

 …はい……あ!……ポチャン…

 ………。

 おじいさん、ごめんなさい…何かごめんなさい…。……。

 いいんじゃ、いいんじゃ、一目でも伝説の魚トリニクを見れたんじゃ。
 これでやっと、ワシもこの湖からやっと解放される……。
 今日で釣りはおしまいじゃ。明日から家で隠居生活も悪くないしな。
 本当にありがとう…お嬢ちゃん…こころから感謝するぞ…

 いえいえ…私は何も…
 ん…?また何か釣れたみたい…あ!!またトリニク釣れましたよ、おじいさん!!
 今度こそ、近くで!!

 もうええんじゃ…そんなに簡単に釣れたらもはや伝説でも何でもない…
 ワシの…半世紀……。


 京花は生まれて初めて罪を犯すのであった…。

        作:花雨





 次の日、おじいさんはいつものように釣りをしていた。
 簡単に物事を成し遂げる者と苦労して物事を成し遂げようとする者。
 神様はきっと後者に手を差し伸べるだろう…。

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