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森の学校編
6.ヌーッティ、初めての授業に意気揚々とする
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ソニアによるホームルームの時間が終わると、校舎は再び喧騒に満ちる。
「ヌーッティ、今週はキルシと同じ授業を受けてね。週末までに履修する科目を決めて、私に時間割を提出してちょうだい。わからないことがあれば、私でも、キルシでも手伝うから。それじゃあね」
ソニアはヌーッティに用件を伝えると、教室を出ていった。
「もう、先生ったら、私に頼りっぱなしなんだから」
隣の席でその話を聞いていたキルシがぼやく。
「ところで時間割って何だヌー?」
「そこから⁈」
驚くキルシに、ヌーッティは首を傾げた。キルシは仕方なしといった表情で、軽く咳払いをすると、
「何時に何の授業を受けるのかを、私たち生徒が自分で決めるのよ。具体的なことはお昼休みに説明してあげる。次の授業は体育だから、校庭に行くわよ!」
「わかったヌー!」
キルシが席を立つと、ヌーッティも立ち上がる。そして、
「待って! ぼくも!」
ヌーッティの前の席のタピオも立ち上がった。
「タピオも次は体育ヌー?」
「そうだよ。一年生は必修科目が多いから、だいたい、みんな一緒なんだよ」
タピオは柔らかい笑みをヌーッティに向けて答えた。
「さあ、行くわよ!」
キルシを先頭に、ヌーッティとタピオは廊下へ出て、校庭へと向かう。
ややあって、校庭に着いたヌーッティたちの目の前には、先程同じ教室で授業を受けていた小熊ズたちが集まっていた。
ほどなくして、チャイムが鳴り、校舎のほうからひとりの熊の精霊がヌーッティたちのほうへ駆けてきた。やってきたのはキルシの付き人にして、この学校の先生オッツォであった。
「やあやあ、すまないね、遅れて。今日は体育の先生が急にお休みで、僕が受け持つことになったんだ」
ヌーッティと小熊ズの前へやってきたオッツォは息を整えながら、事情を説明した。
「さて、今日は新しい生徒も入ったことだし、みんなでフットサルをしようか!」
オッツォの言葉で周りの小熊ズたちから歓喜の声が上がった。どうやら、みんなフットサルが好きなようである。
「ねえねえ、ヌーッティくんはフットサルやったことある? ぼく、パス回し、うまくないんだよね」
隣に並び立つタピオに話しかけられたヌーッティはドヤ顔を作ると、
「ヌーは人間とトントゥとフットサルをやったことがあるヌー! おまかせだヌー!」
「すごーい! 人間とフットサルをしたことがあるの⁈ すごいね、すごいね!」
タピオの驚いた様子に、ヌーッティは優越感を抱いた。
「さてさて、チーム分けは男女混合で、五人ずつに分かれてもらうよ。グーとパーのじゃんけんで組分けをしようか。準備はいいかな?」
オッツォの提案に、小熊ズは「はーい!」と元気に答えた。
「それじゃあ、やるよ! じゃーん、けん……」
ヌーッティ含む小熊ズが、オッツォの次のかけ声を待ち、そして、
「――ぽん!」
小熊ズたちは一斉にグー、あるいはパーを出した。それは、最初の一回で、見事に五対五に分かれたのであった。ヌーッティはというと……、
「パーだヌー!」
ヌーッティは天高くパーの手を掲げた。それを見たタピオは、
「え⁈ ぼく、グーだよ! ヌーッティくんと分かれちゃった!」
少しさみしそうな顔をした。
「ヌーッティはパーなの? おれもパーだよ」
ひとりの男子小熊がヌーッティのそばに歩み寄る。
「誰ヌー?」
「さっきの授業で自己紹介したじゃん! 一番前の席に座ってたアハティだよ!」
ヌーッティは首を傾げた――「はて、こんな生徒いたっけ?」という表情を添えて。
チーム分けが終わり、男女混合の五人ずつのチームがふたつできた。
赤のビブスをまとうは、ヌーッティ、アハティ、マティアスの男子三人と、オリビアとアイノの女子二人。そして、青のビブスをまとうは、タピオ、エリアスの男子二名と、キルシ、リンネア、ユリアの女子三名。
こうして、いよいよヌーッティたちのフットサルが始まるのであった。
「ヌーッティ、今週はキルシと同じ授業を受けてね。週末までに履修する科目を決めて、私に時間割を提出してちょうだい。わからないことがあれば、私でも、キルシでも手伝うから。それじゃあね」
ソニアはヌーッティに用件を伝えると、教室を出ていった。
「もう、先生ったら、私に頼りっぱなしなんだから」
隣の席でその話を聞いていたキルシがぼやく。
「ところで時間割って何だヌー?」
「そこから⁈」
驚くキルシに、ヌーッティは首を傾げた。キルシは仕方なしといった表情で、軽く咳払いをすると、
「何時に何の授業を受けるのかを、私たち生徒が自分で決めるのよ。具体的なことはお昼休みに説明してあげる。次の授業は体育だから、校庭に行くわよ!」
「わかったヌー!」
キルシが席を立つと、ヌーッティも立ち上がる。そして、
「待って! ぼくも!」
ヌーッティの前の席のタピオも立ち上がった。
「タピオも次は体育ヌー?」
「そうだよ。一年生は必修科目が多いから、だいたい、みんな一緒なんだよ」
タピオは柔らかい笑みをヌーッティに向けて答えた。
「さあ、行くわよ!」
キルシを先頭に、ヌーッティとタピオは廊下へ出て、校庭へと向かう。
ややあって、校庭に着いたヌーッティたちの目の前には、先程同じ教室で授業を受けていた小熊ズたちが集まっていた。
ほどなくして、チャイムが鳴り、校舎のほうからひとりの熊の精霊がヌーッティたちのほうへ駆けてきた。やってきたのはキルシの付き人にして、この学校の先生オッツォであった。
「やあやあ、すまないね、遅れて。今日は体育の先生が急にお休みで、僕が受け持つことになったんだ」
ヌーッティと小熊ズの前へやってきたオッツォは息を整えながら、事情を説明した。
「さて、今日は新しい生徒も入ったことだし、みんなでフットサルをしようか!」
オッツォの言葉で周りの小熊ズたちから歓喜の声が上がった。どうやら、みんなフットサルが好きなようである。
「ねえねえ、ヌーッティくんはフットサルやったことある? ぼく、パス回し、うまくないんだよね」
隣に並び立つタピオに話しかけられたヌーッティはドヤ顔を作ると、
「ヌーは人間とトントゥとフットサルをやったことがあるヌー! おまかせだヌー!」
「すごーい! 人間とフットサルをしたことがあるの⁈ すごいね、すごいね!」
タピオの驚いた様子に、ヌーッティは優越感を抱いた。
「さてさて、チーム分けは男女混合で、五人ずつに分かれてもらうよ。グーとパーのじゃんけんで組分けをしようか。準備はいいかな?」
オッツォの提案に、小熊ズは「はーい!」と元気に答えた。
「それじゃあ、やるよ! じゃーん、けん……」
ヌーッティ含む小熊ズが、オッツォの次のかけ声を待ち、そして、
「――ぽん!」
小熊ズたちは一斉にグー、あるいはパーを出した。それは、最初の一回で、見事に五対五に分かれたのであった。ヌーッティはというと……、
「パーだヌー!」
ヌーッティは天高くパーの手を掲げた。それを見たタピオは、
「え⁈ ぼく、グーだよ! ヌーッティくんと分かれちゃった!」
少しさみしそうな顔をした。
「ヌーッティはパーなの? おれもパーだよ」
ひとりの男子小熊がヌーッティのそばに歩み寄る。
「誰ヌー?」
「さっきの授業で自己紹介したじゃん! 一番前の席に座ってたアハティだよ!」
ヌーッティは首を傾げた――「はて、こんな生徒いたっけ?」という表情を添えて。
チーム分けが終わり、男女混合の五人ずつのチームがふたつできた。
赤のビブスをまとうは、ヌーッティ、アハティ、マティアスの男子三人と、オリビアとアイノの女子二人。そして、青のビブスをまとうは、タピオ、エリアスの男子二名と、キルシ、リンネア、ユリアの女子三名。
こうして、いよいよヌーッティたちのフットサルが始まるのであった。
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