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ヌーッティ、日本へ行く!<番外編> 精霊たちの企み
1.画策
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ヌーッティたちが日本に滞在していた頃、フィンランドにあるアキの自宅の屋根裏で、風の精霊と雪の精霊が話し合いをしていた。
赤リス姿の風の精霊アレクシはブルーベリーをかじる手を止め、驚愕の表情を浮かべた。
「リュリュ! きみ、正気か?!」
驚くアレクシの正面に座る、オコジョ姿の雪の精霊リュリュは片手で軽く毛並みを整えると、
「本気ですわ。こうでもしなくっちゃ、わたくしたちの存在意義がさらに希薄になってしまいますわ」
たしかにここ最近、リュリュとアレクシの出番は少なかった。とりわけ、ヌーッティたちが日本へ行ってからは出番が皆無であった。
アレクシはブルーベリーをひとくちで平らげると、懐からハンカチを出して、細長いひげを拭いた。リュリュは、じっとアレクシの様子を見つめていた。そして、
「それで、アレクシ、あなたは今回の件を手伝いますの? それとも、何もせず、ただ待っているだけですか?」
リュリュの問いを聞いたアレクシは片手で頭を搔いた。
「決まってるだろう。きみがするなら、僕は手伝うさ」
アレクシは困った顔をリュリュに向けた。リュリュは満足げな表情を浮かべている。
「決定ですわね。それでは、作戦名を発表いたしますわ」
リュリュは丈長のポンチョから片手を出すと、びしっとどこかを指さした。
「作戦名、おかえりなさいトゥーリ様、発動!」
「待った。トゥーリだけなのかい? ヌーッティやアキは?」
尋ねられたリュリュは上げた手を腰に当てる。
「必要ですか? トゥーリ様で十分ではありませんこと?」
アレクシは大きなため息をついた。
「一応、三人の帰国を祝う宴なんだろ? だったら、トゥーリだけじゃなく、ヌーッティとアキにも配慮した作戦名が欲しいところだが……」
トゥーリはヌーッティの行動を行動で諌めてくれる頼もしさがある。だが、ヌーッティやアキにも、アレクシやリュリュは世話になっているのも事実であった。アキには冷凍庫のブルーベリーや家にあるお菓子を自由にもらう権利を与えてもらっている――と、アレクシは独自に解釈していた。だが、実際は、アレクシが冷凍庫のブルーベリーを勝手に食べれば、トゥーリの怒りのドロップキックが飛んでくる。
ヌーッティにも世話になたことがある……と、考えたアレクシであったが、考えても考えてもヌーッティの世話をした記憶はあるものの、世話になったことはなかった。
「ヌーッティはともかく、アキには借りがある」
それはブルーベリーの盗み食いのことである。
「作戦名には、アキとヌーッティの名前も入れたほうがいい」
アレクシの提案を聞いたリュリュはしばし黙考した。やがて、
「では、こういうのはどうでしょう?」
――作戦名・おかえりなさい、トゥーリ様と下僕たち! ――リュリュは自信を持って提案した。
「下僕……まあ、ないよりマシかな? それでいこう!」
作戦名が決まり、計画のリーダーはリュリュで、アレクシが部下となった。
アレクシは「部下」という肩書に一抹の不安を抱いたが、深く考えるのをやめた。
こうして、ヌーッティとアキを下僕と称した帰国を祝うパーティー計画が発動された。
これは、ヌーッティたちがフィンランドへ帰国する三日前からの出来事をつづった記録である。
赤リス姿の風の精霊アレクシはブルーベリーをかじる手を止め、驚愕の表情を浮かべた。
「リュリュ! きみ、正気か?!」
驚くアレクシの正面に座る、オコジョ姿の雪の精霊リュリュは片手で軽く毛並みを整えると、
「本気ですわ。こうでもしなくっちゃ、わたくしたちの存在意義がさらに希薄になってしまいますわ」
たしかにここ最近、リュリュとアレクシの出番は少なかった。とりわけ、ヌーッティたちが日本へ行ってからは出番が皆無であった。
アレクシはブルーベリーをひとくちで平らげると、懐からハンカチを出して、細長いひげを拭いた。リュリュは、じっとアレクシの様子を見つめていた。そして、
「それで、アレクシ、あなたは今回の件を手伝いますの? それとも、何もせず、ただ待っているだけですか?」
リュリュの問いを聞いたアレクシは片手で頭を搔いた。
「決まってるだろう。きみがするなら、僕は手伝うさ」
アレクシは困った顔をリュリュに向けた。リュリュは満足げな表情を浮かべている。
「決定ですわね。それでは、作戦名を発表いたしますわ」
リュリュは丈長のポンチョから片手を出すと、びしっとどこかを指さした。
「作戦名、おかえりなさいトゥーリ様、発動!」
「待った。トゥーリだけなのかい? ヌーッティやアキは?」
尋ねられたリュリュは上げた手を腰に当てる。
「必要ですか? トゥーリ様で十分ではありませんこと?」
アレクシは大きなため息をついた。
「一応、三人の帰国を祝う宴なんだろ? だったら、トゥーリだけじゃなく、ヌーッティとアキにも配慮した作戦名が欲しいところだが……」
トゥーリはヌーッティの行動を行動で諌めてくれる頼もしさがある。だが、ヌーッティやアキにも、アレクシやリュリュは世話になっているのも事実であった。アキには冷凍庫のブルーベリーや家にあるお菓子を自由にもらう権利を与えてもらっている――と、アレクシは独自に解釈していた。だが、実際は、アレクシが冷凍庫のブルーベリーを勝手に食べれば、トゥーリの怒りのドロップキックが飛んでくる。
ヌーッティにも世話になたことがある……と、考えたアレクシであったが、考えても考えてもヌーッティの世話をした記憶はあるものの、世話になったことはなかった。
「ヌーッティはともかく、アキには借りがある」
それはブルーベリーの盗み食いのことである。
「作戦名には、アキとヌーッティの名前も入れたほうがいい」
アレクシの提案を聞いたリュリュはしばし黙考した。やがて、
「では、こういうのはどうでしょう?」
――作戦名・おかえりなさい、トゥーリ様と下僕たち! ――リュリュは自信を持って提案した。
「下僕……まあ、ないよりマシかな? それでいこう!」
作戦名が決まり、計画のリーダーはリュリュで、アレクシが部下となった。
アレクシは「部下」という肩書に一抹の不安を抱いたが、深く考えるのをやめた。
こうして、ヌーッティとアキを下僕と称した帰国を祝うパーティー計画が発動された。
これは、ヌーッティたちがフィンランドへ帰国する三日前からの出来事をつづった記録である。
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