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ヌーッティ、日本へ行く!<前編>
4.真犯人とヌーッティと
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ヌーッティは厨房をくまなく調査した。
至るところにヌーッティの心を揺さぶるお菓子が、食べ物が置かれていた。
ヌーッティが鍋の蓋を取れば、その中には温められ、甘い匂いを放つあんこが。
ヌーッティが戸棚を引き開ければ、その中には二種類の最中が。
さらには、かりんとうや羊羹、冷蔵庫には牛乳寒天ゼリーが。
誘惑はヌーッティの心拍数を高め、お菓子に手を伸ばさせた。しかし、ヌーッティは耐えた。
ここで、盗み食いをすれば、トゥーリとあいりの疑惑を払拭させるどころか、白玉クリームあんみつを食べた犯人として、アキに報告される。そして、アキによって、お菓子抜きの極刑を科されるはめになることを、ヌーッティは想像できた。
恐怖ゆえの抑制を頼りに、ヌーッティはさらに厨房の中を探した。
低い位置にあった棚をガラっと開けたときであった。
ヌーッティの目にビスケットの箱が飛び込んできた。思わず、よだれが垂れた。
抑制は効かなかった。
気づいたときには、ヌーッティはビスケットを四箱完食していた。そのときであった。
「また盗み食いしてたの?!」
ヌーッティの背後から声が聞こえ、ヌーッティは体をびくりと震わせた。
そして、ゆっくりと顔を後ろへ向ける。そこには、呆れた顔をしたトゥーリが立っていた。
「やっぱり、あんみつを食べた犯人はヌーッティだったのね」
トゥーリの疑惑は確信へと変わっていた。
口にビスケットの食べかすをたくさんつけたヌーッティは、青ざめた顔を横に振った。
けれども、状況がヌーッティを犯人に仕立てていた。
そこへ、あいりと猫もやって来た。
「ヌーッティ……犯人だったのね。それに、また食べて!」
目を細めたあいりは、疑いのまなざしをヌーッティへ向ける。
猫はにゃあとひと鳴きすると、厨房へ入っていった。それから、ヌーッティの横に並び立つと、しっぽでぺしんとヌーッティを叩いた。
「ほら! 猫だって怒ってるじゃない!」
トゥーリは畳み掛けた。ヌーッティは怯え、震えた。
そして、ヌーッティは弁明を繰り広げた。曰く、
「お菓子がヌーを呼んでたヌー! ヌーに食べてもらいたいって言ってたヌー!」
トゥーリとあいりは、胡散臭いものを見るかのようなまなざしをヌーッティへ向ける。
さらに、ヌーッティ曰く、
「いちご大福さんはヌーを呼ばなかったヌー。白玉クリームあんみつさんも、ヌーを呼んでないヌー! だから、ヌーは犯人じゃないヌー!」
力説を繰り広げた。しかし、
「ヌーッティ以外の誰が白玉クリームあんみつを食べるのよ! もういい! アキに言っちゃうからね!」
ヌーッティのすべての抵抗、弁明は無と化した。そのときであった。
猫がワゴン台の上に乗って、白玉クリームあんみつの材料である白玉とクリームと果物を食べ始めたのである。
ヌーッティは、それを目の端で捉えていた。
「猫が真犯人だヌー!」
猫を指さしながら、ヌーッティは大きな声で主張した。
トゥーリとあいりは猫へ視線を移す。すると、猫は食べるのをやめて、ヌーッティたちを見た。
ぺろりと口周りを舐めた猫は、
「私が白玉クリームあんみつをそんなに何個も食べるわけがないでしょ? まあ、ひとつは食べましたけど」
トゥーリとあいりは猫がしゃべったことに驚き、言葉を失った。
ただひとり、驚かなかったヌーッティが猫に尋ねる。
「やっぱり、猫が真犯人ヌー!」
「人聞きの悪い! 私は猫ではありません。大地の精霊ですよ。まったく、もう」
大地の精霊と名乗った猫は、ひらりとワゴン台から飛び降りると、さささっと出口から出ていってしまった。
こうして、ヌーッティの身の潔白は証明されたのであった。
ヌーッティはお菓子なしの極刑を回避したことで、踊り喜んだ。
「これで、おやつが食べられるヌー!」
しかし、
「ビスケット全箱食べたよね?」
トゥーリの言葉にヌーッティは固まった。
ヌーッティはぎこちない動きで、トゥーリを見やる。
「アキには……」
「言うよ」
トゥーリの無慈悲なひとことで、ヌーッティは大泣きし、トゥーリに言わないで欲しいと嘆願した。けれども、トゥーリは頑なに首を横に振った。
「お兄ちゃん、よく、こんな食い意地の張った小熊の妖精と一緒に暮らしてるなぁ……」
あいりは兄の心労を心配した。
ヌーッティは、梅が店に戻るまでトゥーリを説得し続けたが、ヌーッティの説得でトゥーリの考えが変わるわけもなく、その日の夜、アキに報告されることとなったのであった。
ヌーッティのその後は誰も知らない――わけがなく、いつも通りの顛末となった。
至るところにヌーッティの心を揺さぶるお菓子が、食べ物が置かれていた。
ヌーッティが鍋の蓋を取れば、その中には温められ、甘い匂いを放つあんこが。
ヌーッティが戸棚を引き開ければ、その中には二種類の最中が。
さらには、かりんとうや羊羹、冷蔵庫には牛乳寒天ゼリーが。
誘惑はヌーッティの心拍数を高め、お菓子に手を伸ばさせた。しかし、ヌーッティは耐えた。
ここで、盗み食いをすれば、トゥーリとあいりの疑惑を払拭させるどころか、白玉クリームあんみつを食べた犯人として、アキに報告される。そして、アキによって、お菓子抜きの極刑を科されるはめになることを、ヌーッティは想像できた。
恐怖ゆえの抑制を頼りに、ヌーッティはさらに厨房の中を探した。
低い位置にあった棚をガラっと開けたときであった。
ヌーッティの目にビスケットの箱が飛び込んできた。思わず、よだれが垂れた。
抑制は効かなかった。
気づいたときには、ヌーッティはビスケットを四箱完食していた。そのときであった。
「また盗み食いしてたの?!」
ヌーッティの背後から声が聞こえ、ヌーッティは体をびくりと震わせた。
そして、ゆっくりと顔を後ろへ向ける。そこには、呆れた顔をしたトゥーリが立っていた。
「やっぱり、あんみつを食べた犯人はヌーッティだったのね」
トゥーリの疑惑は確信へと変わっていた。
口にビスケットの食べかすをたくさんつけたヌーッティは、青ざめた顔を横に振った。
けれども、状況がヌーッティを犯人に仕立てていた。
そこへ、あいりと猫もやって来た。
「ヌーッティ……犯人だったのね。それに、また食べて!」
目を細めたあいりは、疑いのまなざしをヌーッティへ向ける。
猫はにゃあとひと鳴きすると、厨房へ入っていった。それから、ヌーッティの横に並び立つと、しっぽでぺしんとヌーッティを叩いた。
「ほら! 猫だって怒ってるじゃない!」
トゥーリは畳み掛けた。ヌーッティは怯え、震えた。
そして、ヌーッティは弁明を繰り広げた。曰く、
「お菓子がヌーを呼んでたヌー! ヌーに食べてもらいたいって言ってたヌー!」
トゥーリとあいりは、胡散臭いものを見るかのようなまなざしをヌーッティへ向ける。
さらに、ヌーッティ曰く、
「いちご大福さんはヌーを呼ばなかったヌー。白玉クリームあんみつさんも、ヌーを呼んでないヌー! だから、ヌーは犯人じゃないヌー!」
力説を繰り広げた。しかし、
「ヌーッティ以外の誰が白玉クリームあんみつを食べるのよ! もういい! アキに言っちゃうからね!」
ヌーッティのすべての抵抗、弁明は無と化した。そのときであった。
猫がワゴン台の上に乗って、白玉クリームあんみつの材料である白玉とクリームと果物を食べ始めたのである。
ヌーッティは、それを目の端で捉えていた。
「猫が真犯人だヌー!」
猫を指さしながら、ヌーッティは大きな声で主張した。
トゥーリとあいりは猫へ視線を移す。すると、猫は食べるのをやめて、ヌーッティたちを見た。
ぺろりと口周りを舐めた猫は、
「私が白玉クリームあんみつをそんなに何個も食べるわけがないでしょ? まあ、ひとつは食べましたけど」
トゥーリとあいりは猫がしゃべったことに驚き、言葉を失った。
ただひとり、驚かなかったヌーッティが猫に尋ねる。
「やっぱり、猫が真犯人ヌー!」
「人聞きの悪い! 私は猫ではありません。大地の精霊ですよ。まったく、もう」
大地の精霊と名乗った猫は、ひらりとワゴン台から飛び降りると、さささっと出口から出ていってしまった。
こうして、ヌーッティの身の潔白は証明されたのであった。
ヌーッティはお菓子なしの極刑を回避したことで、踊り喜んだ。
「これで、おやつが食べられるヌー!」
しかし、
「ビスケット全箱食べたよね?」
トゥーリの言葉にヌーッティは固まった。
ヌーッティはぎこちない動きで、トゥーリを見やる。
「アキには……」
「言うよ」
トゥーリの無慈悲なひとことで、ヌーッティは大泣きし、トゥーリに言わないで欲しいと嘆願した。けれども、トゥーリは頑なに首を横に振った。
「お兄ちゃん、よく、こんな食い意地の張った小熊の妖精と一緒に暮らしてるなぁ……」
あいりは兄の心労を心配した。
ヌーッティは、梅が店に戻るまでトゥーリを説得し続けたが、ヌーッティの説得でトゥーリの考えが変わるわけもなく、その日の夜、アキに報告されることとなったのであった。
ヌーッティのその後は誰も知らない――わけがなく、いつも通りの顛末となった。
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