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惨劇のお留守番
3.外泊の果てに
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ヌーッティは夢の中で戦っていた。
迫りくるハンナに似た怪物がヌーッティに向かって口から火を吹いた。
ヌーッティは寸ででひらりと攻撃をかわす。
手に持つ伝説の剣で怪物に斬りかかろうとした瞬間、ヌーッティの腹部に得も言われぬ激痛が走った。
「痛いヌー!」
暗闇の中、ヌーッティは叫び、その声にはっとして起き上がろうとした。
だが、起き上がることはできなかった。しかし、すぐにその重さは痛みを残し消えた。
見れば、ハンナが左腕を上げながら寝返りをうっていた。
「ハンナの腕だったヌー? 痛かったヌー」
ヌーッティは寝る場所をわずかにずらし、ハンナが寝返りをうっても巻き添えにならないようにした。
「これで安眠できるヌー」
だが、次の瞬間、
「痛いヌー!」
ヌーッティの腹部に、再びハンナの腕が勢いよく乗った。
涙を浮かべながらヌーッティは再度ハンナの腕をどかす。
「これで大丈夫……ヌ?」
ハンナの左手がヌーッティの胴体を掴んでいた。
「いけー、ヌーッティ!」
ハンナの寝言と同時にヌーッティはぶん投げられた。
投げられたヌーッティは壁面に盛大な音を立てて激突した。
そして、ヌーッティはあまりの痛さに気絶したのであった。
翌朝。
小鳥のさえずりで目が覚めたトゥーリは、ハンナよりも早く起きた。
目をこすりながら辺りを見回すと、床にヌーッティが落ちていた。
トゥーリは首を傾げた。すると、ベッドサイドテーブルに置かれたハンナのスマホからアラーム音が聞こえてきた。
ハンナは寝返りをうってアラームを止めると、ベッドに寝そべりながら身体を伸ばした。そして、ゆっくり上体を起こすとトゥーリと目が合った。
「おはよう、トゥーリ。どうしたの?」
ハンナはトゥーリの指差す方向に目を向けた。そこには床にうつ伏せるヌーッティがいた。
「ヌーッティ⁈」
ハンナは慌ててベッドから下りると、ヌーッティのそばに駆け寄った。それから、優しくヌーッティの体を両手でくるむように持つと、ベッドの上に横たえた。
「ヌ? ヌー……痛いヌー」
うなされているかのような声を出したヌーッティの体をハンナはゆすった。
すると、ヌーッティの目がぱちりと開いた。
ヌーッティはがばっと起き上がると、周囲をキョロキョロと見回した。
「どこだ! 恐怖の大魔王はどこにいるヌー⁈」
ヌーッティの挙動にハンナは笑い出し、トゥーリはため息をついた。
「やだなぁ、恐怖の大魔王なんてどこにもいないよ、ヌーッティ」
ハンナはヌーッティの頭を優しく撫でた。
しかし、トゥーリだけは夜中に何が起きたのか大体のことを察した。
こうして、ヌーッティとトゥーリの外泊は終了を迎えた。
十二時を少し回った頃、ハンナとヌーッティとトゥーリが昼食を食べ終えた頃、インターホンが鳴った。
帰る支度を終えていたヌーッティとトゥーリは、ハンナに抱きかかえられて共用玄関まで一緒に行った。
すると、ドアの向こうにアキが立っているのが見えた。
ドアを開けた瞬間、ヌーッティがアキに飛びついた。
「おおっ! どうした、ヌーッティ?」
「もうお泊りはやだヌー!」
ヌーッティはアキの胸の中で泣きじゃくった。
そんな中、トゥーリは一跳躍でアキの肩に飛び移った。
「あのね、ハンナに振り回されたんだよ、ヌーッティ」
トゥーリの言葉を聞いたアキは、おおよその出来事を推し量った。
アキはため息をひとつついて、頭をうなだれた。
対してハンナはにこやかな笑みを浮かべている。
「また、おいで」
それを聞いたヌーッティはびしっとハンナを指さすと、
「やだヌー! 恐怖の大魔王は怖いヌー!」
涙目で訴えた――が、ハンナのこめかみがぴくりと動くと同時に、ハンナはヌーッティを掴んで、勢いよくぶん投げた。
投げられたヌーッティは片側一車線の道路を飛び越えて、向かい側の生け垣に突っ込んだ。
こうして、ヌーッティとトゥーリの外泊はヌーッティの悲劇のうちに幕を閉じた。
ヌーッティの中でハンナが正真正銘の恐怖の大魔王となったのは言うまでもない。
迫りくるハンナに似た怪物がヌーッティに向かって口から火を吹いた。
ヌーッティは寸ででひらりと攻撃をかわす。
手に持つ伝説の剣で怪物に斬りかかろうとした瞬間、ヌーッティの腹部に得も言われぬ激痛が走った。
「痛いヌー!」
暗闇の中、ヌーッティは叫び、その声にはっとして起き上がろうとした。
だが、起き上がることはできなかった。しかし、すぐにその重さは痛みを残し消えた。
見れば、ハンナが左腕を上げながら寝返りをうっていた。
「ハンナの腕だったヌー? 痛かったヌー」
ヌーッティは寝る場所をわずかにずらし、ハンナが寝返りをうっても巻き添えにならないようにした。
「これで安眠できるヌー」
だが、次の瞬間、
「痛いヌー!」
ヌーッティの腹部に、再びハンナの腕が勢いよく乗った。
涙を浮かべながらヌーッティは再度ハンナの腕をどかす。
「これで大丈夫……ヌ?」
ハンナの左手がヌーッティの胴体を掴んでいた。
「いけー、ヌーッティ!」
ハンナの寝言と同時にヌーッティはぶん投げられた。
投げられたヌーッティは壁面に盛大な音を立てて激突した。
そして、ヌーッティはあまりの痛さに気絶したのであった。
翌朝。
小鳥のさえずりで目が覚めたトゥーリは、ハンナよりも早く起きた。
目をこすりながら辺りを見回すと、床にヌーッティが落ちていた。
トゥーリは首を傾げた。すると、ベッドサイドテーブルに置かれたハンナのスマホからアラーム音が聞こえてきた。
ハンナは寝返りをうってアラームを止めると、ベッドに寝そべりながら身体を伸ばした。そして、ゆっくり上体を起こすとトゥーリと目が合った。
「おはよう、トゥーリ。どうしたの?」
ハンナはトゥーリの指差す方向に目を向けた。そこには床にうつ伏せるヌーッティがいた。
「ヌーッティ⁈」
ハンナは慌ててベッドから下りると、ヌーッティのそばに駆け寄った。それから、優しくヌーッティの体を両手でくるむように持つと、ベッドの上に横たえた。
「ヌ? ヌー……痛いヌー」
うなされているかのような声を出したヌーッティの体をハンナはゆすった。
すると、ヌーッティの目がぱちりと開いた。
ヌーッティはがばっと起き上がると、周囲をキョロキョロと見回した。
「どこだ! 恐怖の大魔王はどこにいるヌー⁈」
ヌーッティの挙動にハンナは笑い出し、トゥーリはため息をついた。
「やだなぁ、恐怖の大魔王なんてどこにもいないよ、ヌーッティ」
ハンナはヌーッティの頭を優しく撫でた。
しかし、トゥーリだけは夜中に何が起きたのか大体のことを察した。
こうして、ヌーッティとトゥーリの外泊は終了を迎えた。
十二時を少し回った頃、ハンナとヌーッティとトゥーリが昼食を食べ終えた頃、インターホンが鳴った。
帰る支度を終えていたヌーッティとトゥーリは、ハンナに抱きかかえられて共用玄関まで一緒に行った。
すると、ドアの向こうにアキが立っているのが見えた。
ドアを開けた瞬間、ヌーッティがアキに飛びついた。
「おおっ! どうした、ヌーッティ?」
「もうお泊りはやだヌー!」
ヌーッティはアキの胸の中で泣きじゃくった。
そんな中、トゥーリは一跳躍でアキの肩に飛び移った。
「あのね、ハンナに振り回されたんだよ、ヌーッティ」
トゥーリの言葉を聞いたアキは、おおよその出来事を推し量った。
アキはため息をひとつついて、頭をうなだれた。
対してハンナはにこやかな笑みを浮かべている。
「また、おいで」
それを聞いたヌーッティはびしっとハンナを指さすと、
「やだヌー! 恐怖の大魔王は怖いヌー!」
涙目で訴えた――が、ハンナのこめかみがぴくりと動くと同時に、ハンナはヌーッティを掴んで、勢いよくぶん投げた。
投げられたヌーッティは片側一車線の道路を飛び越えて、向かい側の生け垣に突っ込んだ。
こうして、ヌーッティとトゥーリの外泊はヌーッティの悲劇のうちに幕を閉じた。
ヌーッティの中でハンナが正真正銘の恐怖の大魔王となったのは言うまでもない。
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