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ヌーッティ、学校に行く!
6.しょっぱいビスケット
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トゥーリが本棚の奥から出てきた。
「大丈夫だった、アキ? あれ?ヌーッティも一緒? え……、も、もしかして……」
察しのいいトゥーリであった。
アキがみなまで言わずに、状況を把握した。
「ヌーッティ」
アキの声が部屋に響いた。
ヌーッティの心臓は大きな音を立てていた。冷や汗も止まらなかった。
「お昼のときの約束を覚えてるよな?」
「……お、覚えてるヌー」
声小さく、ヌーッティは答えた。
「じゃあ、言ってみて」
「ぬいぐるみのフリをすること、フードから出ないこと、アキの側から離れないこと。できなかったら、お菓子が一年間も食べられないだヌー」
お菓子の絡んだ事柄はちゃんと覚えることのできるヌーッティは、きちんと覚えていた。
「当然、ぬいぐるみのフリをするっていうことは、魔術を使ったらだめも入ってるよな?」
ヌーッティはこくりとうなずいた。
「で、どうして魔術を使ったんだ?」
数秒の間を置いて、ヌーッティはゆっくりと理由を話し始めた。
「アキのお役に立ちたかったヌー。あのプリントを一枚だけアキのところに持ってこようとして詩を歌ったヌー。そしたら失敗しちゃったヌー」
どうやらヌーッティは魔術理論で教師が配布しようとしていた用紙を取ってきてあげようとして魔術を使ったようであった。
けれども、ヌーッティは魔術を使うのが上手くはなかった。
本人に自覚はないが、お世辞にも普通に使えるとも言い難い程度の技量である。
「ごめんなさいだヌー」
ヌーッティは素直に謝った。
こういうところがあるから厳しく怒れないんだよなぁといった顔をしたアキは、
「お菓子は今日だけなし。明日からふつうに食べていいよ。ただし、今後、絶対に学校について来ちゃだめ。守れる?」
優しくゆるんだ目元で、ヌーッティに尋ねた。
「守れるヌー! いいヌー?! おやつはこれからも食べられるヌー?!」
「今日だけはだめだけど、明日からはいいよ」
アキはため息混じりに返答した。
それを聞いたヌーッティは緊張がほぐれたのか、大粒の涙を流しながら泣き始めた。
側に寄ったトゥーリがヌーッティの背中をぽんぽんと優しく叩いた。
「アキはヌーッティに甘過ぎ」
トゥーリの指摘に、アキは苦笑した。
アキは、ちょっと出かけてくると言うと、コートを着て、部屋を出て行った。
部屋のドアが閉まると、トゥーリは彼女の寝床に行って、ビスケットを一枚取ってきた。
それを半分に割ると、
「これはアキに内緒だよ。あげる」
ビスケット半分をヌーッティに渡した。
しゃくりあげながら泣いているヌーッティは受け取るのをためらった。
「でもでも、ばれたらトゥーリもアキに怒られちゃうヌー」
「いいよ、一緒に怒られるくらい。けど、もう学校について行っちゃだめだよ」
それを聞いたヌーッティは再び大泣きした。
泣きながらもビスケットを受け取り、食べた。
甘さよりも、しょっぱさが強い味のビスケットになった。
そして、一週間が経った朝。
登校の準備をしているアキの近くにいたヌーッティは、
「アキ! 学校に行きたいヌー!」
すっかり、一週間前のことを忘れていた。
アキとトゥーリは頭を抱え、この小熊の妖精をどうしたものかと悩んだのであった。
「大丈夫だった、アキ? あれ?ヌーッティも一緒? え……、も、もしかして……」
察しのいいトゥーリであった。
アキがみなまで言わずに、状況を把握した。
「ヌーッティ」
アキの声が部屋に響いた。
ヌーッティの心臓は大きな音を立てていた。冷や汗も止まらなかった。
「お昼のときの約束を覚えてるよな?」
「……お、覚えてるヌー」
声小さく、ヌーッティは答えた。
「じゃあ、言ってみて」
「ぬいぐるみのフリをすること、フードから出ないこと、アキの側から離れないこと。できなかったら、お菓子が一年間も食べられないだヌー」
お菓子の絡んだ事柄はちゃんと覚えることのできるヌーッティは、きちんと覚えていた。
「当然、ぬいぐるみのフリをするっていうことは、魔術を使ったらだめも入ってるよな?」
ヌーッティはこくりとうなずいた。
「で、どうして魔術を使ったんだ?」
数秒の間を置いて、ヌーッティはゆっくりと理由を話し始めた。
「アキのお役に立ちたかったヌー。あのプリントを一枚だけアキのところに持ってこようとして詩を歌ったヌー。そしたら失敗しちゃったヌー」
どうやらヌーッティは魔術理論で教師が配布しようとしていた用紙を取ってきてあげようとして魔術を使ったようであった。
けれども、ヌーッティは魔術を使うのが上手くはなかった。
本人に自覚はないが、お世辞にも普通に使えるとも言い難い程度の技量である。
「ごめんなさいだヌー」
ヌーッティは素直に謝った。
こういうところがあるから厳しく怒れないんだよなぁといった顔をしたアキは、
「お菓子は今日だけなし。明日からふつうに食べていいよ。ただし、今後、絶対に学校について来ちゃだめ。守れる?」
優しくゆるんだ目元で、ヌーッティに尋ねた。
「守れるヌー! いいヌー?! おやつはこれからも食べられるヌー?!」
「今日だけはだめだけど、明日からはいいよ」
アキはため息混じりに返答した。
それを聞いたヌーッティは緊張がほぐれたのか、大粒の涙を流しながら泣き始めた。
側に寄ったトゥーリがヌーッティの背中をぽんぽんと優しく叩いた。
「アキはヌーッティに甘過ぎ」
トゥーリの指摘に、アキは苦笑した。
アキは、ちょっと出かけてくると言うと、コートを着て、部屋を出て行った。
部屋のドアが閉まると、トゥーリは彼女の寝床に行って、ビスケットを一枚取ってきた。
それを半分に割ると、
「これはアキに内緒だよ。あげる」
ビスケット半分をヌーッティに渡した。
しゃくりあげながら泣いているヌーッティは受け取るのをためらった。
「でもでも、ばれたらトゥーリもアキに怒られちゃうヌー」
「いいよ、一緒に怒られるくらい。けど、もう学校について行っちゃだめだよ」
それを聞いたヌーッティは再び大泣きした。
泣きながらもビスケットを受け取り、食べた。
甘さよりも、しょっぱさが強い味のビスケットになった。
そして、一週間が経った朝。
登校の準備をしているアキの近くにいたヌーッティは、
「アキ! 学校に行きたいヌー!」
すっかり、一週間前のことを忘れていた。
アキとトゥーリは頭を抱え、この小熊の妖精をどうしたものかと悩んだのであった。
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