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作れ! 新しいお洋服!
6.ヌーッティを覗くとき、ヌーッティもまたこちらを覗いているのだ
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時間を遡ってヌーッティがアキたちのもとを離れて15分ほど経った頃。
アキの肩に腰掛けているトゥーリは、生地選びに夢中になっているアキとハンナから目を外し、周囲を見渡した。
そして、真っ先に気がついた。
「ねえ、アキ、ハンナ。ヌーッティがいないよ?」
トゥーリのひとことでアキとハンナは手を止めて、慌てた様子で見回した。
アキはスボンのポケットやリュックの中を目視で確認した。
ハンナもバッグの中やフーディーの中に手を入れてみた。
けれども、バッグの中にも、見渡せる範囲内にも、ヌーッティの姿はなかった。
「ま、まさかだけど……?」
ハンナが顔を引きつらせてアキに問いかけた。
「また迷子になったのか……!」
アキは額に手を当てると、うな垂れて呟いた。
「騒ぎが起こる前に探さないと。ひとまず二手に分かれよう。おれは入り口側から探すから、ハンナとトゥーリは店の奥から探して。何かあったら携帯で連絡を」
「わかった。とにかく早く見つけなきゃ! あのヌーッティだし、今頃トラブルを起こしかねない状況になってるかも! 行こう、トゥーリ!」
ハンナは左手をアキの肩へ、トゥーリの方へ差し出すと、トゥーリはハンナの腕を伝いハンナの肩に座った。
そして、アキとハンナとトゥーリは二手に分かれてヌーッティを探し始めた。
――ヌーッティ失踪から30分後。
いろいろな品物が置かれている棚の中や棚の上、それに足元を見ながらアキはヌーッティの姿を探した。
うす茶色いくまのぬいぐるみがアキの視界の端に入った。
アキは振り向いた。
けれども、それはヌーッティではなく、ただのくまのぬいぐるであった。
「どこに行ったんだよ。まったく、明日からしばらくはおやつ禁止に――」
そのとき、アキの携帯が振動した。
アキはポケットから携帯を出して画面を見た。ハンナからの着信であった。
「そっちにいた?」
通話に出たアキがハンナに尋ねた。
「こっちにもいないよ。ただ、目撃情報があったよ」
「また、人間に見られたのか……」
「うん。残念ながら」
他の人間に見つかる前にヌーッティの身柄を確保したかったアキとしては、あまり芳しくない情報であった。
「それで、その目撃情報っていうのは?」
「二人のお孫さんを連れて来ていたおばあさんから聞いた話なんだけど、ラッピング用品のところで、いきなり目の前に動く小熊が現れたんだって。体長は30センチほどの幼児体型で、首にリボンをつけていたって。これって……」
「ああ。明らかにヌーッティだ」
アキはハンナからひと通り話を聞くと、一度、ラッピング用品のコーナーで落ち合うことにした。
携帯をポケットの中へ入れて、左の通路へ入っていったアキの後ろ姿を遠くからじっと見つめる影がひとつ。
だが、アキはそれに気づくことはなかった。
アキたちはヌーッティを無事に見つけられるのか?
はたまた、ヌーッティ・トラブルが発生するのが先か。
運命はアキたちの探査能力に委ねられたのであった。
アキの肩に腰掛けているトゥーリは、生地選びに夢中になっているアキとハンナから目を外し、周囲を見渡した。
そして、真っ先に気がついた。
「ねえ、アキ、ハンナ。ヌーッティがいないよ?」
トゥーリのひとことでアキとハンナは手を止めて、慌てた様子で見回した。
アキはスボンのポケットやリュックの中を目視で確認した。
ハンナもバッグの中やフーディーの中に手を入れてみた。
けれども、バッグの中にも、見渡せる範囲内にも、ヌーッティの姿はなかった。
「ま、まさかだけど……?」
ハンナが顔を引きつらせてアキに問いかけた。
「また迷子になったのか……!」
アキは額に手を当てると、うな垂れて呟いた。
「騒ぎが起こる前に探さないと。ひとまず二手に分かれよう。おれは入り口側から探すから、ハンナとトゥーリは店の奥から探して。何かあったら携帯で連絡を」
「わかった。とにかく早く見つけなきゃ! あのヌーッティだし、今頃トラブルを起こしかねない状況になってるかも! 行こう、トゥーリ!」
ハンナは左手をアキの肩へ、トゥーリの方へ差し出すと、トゥーリはハンナの腕を伝いハンナの肩に座った。
そして、アキとハンナとトゥーリは二手に分かれてヌーッティを探し始めた。
――ヌーッティ失踪から30分後。
いろいろな品物が置かれている棚の中や棚の上、それに足元を見ながらアキはヌーッティの姿を探した。
うす茶色いくまのぬいぐるみがアキの視界の端に入った。
アキは振り向いた。
けれども、それはヌーッティではなく、ただのくまのぬいぐるであった。
「どこに行ったんだよ。まったく、明日からしばらくはおやつ禁止に――」
そのとき、アキの携帯が振動した。
アキはポケットから携帯を出して画面を見た。ハンナからの着信であった。
「そっちにいた?」
通話に出たアキがハンナに尋ねた。
「こっちにもいないよ。ただ、目撃情報があったよ」
「また、人間に見られたのか……」
「うん。残念ながら」
他の人間に見つかる前にヌーッティの身柄を確保したかったアキとしては、あまり芳しくない情報であった。
「それで、その目撃情報っていうのは?」
「二人のお孫さんを連れて来ていたおばあさんから聞いた話なんだけど、ラッピング用品のところで、いきなり目の前に動く小熊が現れたんだって。体長は30センチほどの幼児体型で、首にリボンをつけていたって。これって……」
「ああ。明らかにヌーッティだ」
アキはハンナからひと通り話を聞くと、一度、ラッピング用品のコーナーで落ち合うことにした。
携帯をポケットの中へ入れて、左の通路へ入っていったアキの後ろ姿を遠くからじっと見つめる影がひとつ。
だが、アキはそれに気づくことはなかった。
アキたちはヌーッティを無事に見つけられるのか?
はたまた、ヌーッティ・トラブルが発生するのが先か。
運命はアキたちの探査能力に委ねられたのであった。
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