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作れ! 新しいお洋服!
5.試される忍耐力?
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ヌーッティは店内をちょこちょこと駆け回っていた。
ヌーッティに似合う服を作ってもらうために。
ビーズや装飾物の棚を通り抜けたときに、ヌーッティはある違和感を感じた。
そして、首を回して背後を見やった。
誰もいなかった。
再び、走り出そうとした瞬間。
また、肌に貼り付くような視線を感じて振り向いた。
さっと何かが物陰に隠れたのをヌーッティは見逃さなかった。
——人間に見つかった⁈
ヌーッティは焦り、ひとまず、手近な棚の一番下の段の物奥に隠れた。
じっと動かず、呼吸もできるだけ抑えて、ヌーッティは待った。
すると、4本の人間の足が現れた。
「さっき、小さいくまのぬいぐるみが動いてたよね?」
幼い男の子の声であった。
「うん。あのおもちゃ欲しいよね。おばーちゃんに言って買ってもらおうよ」
返答したのも、先ほどの声と同い年くらいの男の子であった。
ヌーッティは二人の男の子が棚の前でうろうろ足を動かしているのを注視していた。
「あっ! おばーちゃん!」
男の子の一人が嬉々とした声を上げた。
「どうしたの? 二人とも。何か欲しいものは見つかったかい?」
「見つかったよ! くまの動くぬいぐるみが欲しい!」
ヌーッティはびくりと体を震わせた。
二人の男の子の会話から推測されるのは、動くぬいぐるみのおもちゃだと思われているヌーッティであったからだ。
「それで、どこにぬいぐるみのおもちゃがあるんだい?」
「わかんない。ここまで後をつけてきたんだけど、いなくなった」
男の子はしょぼくれた声色で返答した。
「あらあら。それは、本当に動くぬいぐるみだったのかい?」
男の子二人は黙っていた。
「もしかしたら、妖精さんにいたずらされたのかもしれないね」
初老の女性だと思わしき声は弾んでいた。
「いたずら?」
「そう。二人が可愛いから、ちょっかい出されたのかもねぇ。だって、ここはギフト用の袋や紙が置いてある棚だよ? ぬいぐるみがここに置いてあるのはおかしいし、だからきっと、妖精さんにからかわれたんだよ」
楽しそうな笑い交じりの声であった。
「えー! だったら、ぼくたちあのくまと友だちになりたいよ!」
「ね! だって、妖精さんはぼくたちが困ったら助けてくれるんでしょ?」
男の子二人は矢継ぎ早に交互に言った。
ヌーッティはうずうずして来ていた。
それもそのはず、困ったら助けて欲しいと思っているのは、今まさに、ヌーッティのほうであったからである。
「さあ、そろそろ帰るよ」
男の子たちのおばあさんはやんわりと促した。
「やだ!」
「妖精さんと友だちになって、困ってるとき助けてもらいたい!」
だが、男の子たちはだだをこね始めた。
じっと耐えていたヌーッティの限界は近かった。
初老の女性は男の子たちを諭し始めた。
けれども、男の子二人は一歩も譲らなかった。
そして、ついに、ヌーッティの忍耐力が限界を迎えた。
ヌーッティは目の前に置いたラッピング袋の束をかき分けて、通路に、男の子たちと彼らのおばあさんの前に出た。
「ヌーのほうこそ困ってるヌー! 妖精さんだって困るときがあるヌー! そんなにわがまま言ってると、ヨウルプッキからクリスマスプレゼントをもらえなくなるヌー!」
目の前に突如現れたヌーッティに、男の子二人とおばあさんは目を丸くし、身動きひとつとれなかった。
「ヌーだって怒っちゃうヌー!」
ぷりぷりと怒っているヌーッティは身をひるがえし、一目散にその場から走り去っていった。
その後、残された二人の男の子とおばあさんがどうなったのかは、逃げ出したヌーッティにわかるはずもなかった。
ヌーッティに似合う服を作ってもらうために。
ビーズや装飾物の棚を通り抜けたときに、ヌーッティはある違和感を感じた。
そして、首を回して背後を見やった。
誰もいなかった。
再び、走り出そうとした瞬間。
また、肌に貼り付くような視線を感じて振り向いた。
さっと何かが物陰に隠れたのをヌーッティは見逃さなかった。
——人間に見つかった⁈
ヌーッティは焦り、ひとまず、手近な棚の一番下の段の物奥に隠れた。
じっと動かず、呼吸もできるだけ抑えて、ヌーッティは待った。
すると、4本の人間の足が現れた。
「さっき、小さいくまのぬいぐるみが動いてたよね?」
幼い男の子の声であった。
「うん。あのおもちゃ欲しいよね。おばーちゃんに言って買ってもらおうよ」
返答したのも、先ほどの声と同い年くらいの男の子であった。
ヌーッティは二人の男の子が棚の前でうろうろ足を動かしているのを注視していた。
「あっ! おばーちゃん!」
男の子の一人が嬉々とした声を上げた。
「どうしたの? 二人とも。何か欲しいものは見つかったかい?」
「見つかったよ! くまの動くぬいぐるみが欲しい!」
ヌーッティはびくりと体を震わせた。
二人の男の子の会話から推測されるのは、動くぬいぐるみのおもちゃだと思われているヌーッティであったからだ。
「それで、どこにぬいぐるみのおもちゃがあるんだい?」
「わかんない。ここまで後をつけてきたんだけど、いなくなった」
男の子はしょぼくれた声色で返答した。
「あらあら。それは、本当に動くぬいぐるみだったのかい?」
男の子二人は黙っていた。
「もしかしたら、妖精さんにいたずらされたのかもしれないね」
初老の女性だと思わしき声は弾んでいた。
「いたずら?」
「そう。二人が可愛いから、ちょっかい出されたのかもねぇ。だって、ここはギフト用の袋や紙が置いてある棚だよ? ぬいぐるみがここに置いてあるのはおかしいし、だからきっと、妖精さんにからかわれたんだよ」
楽しそうな笑い交じりの声であった。
「えー! だったら、ぼくたちあのくまと友だちになりたいよ!」
「ね! だって、妖精さんはぼくたちが困ったら助けてくれるんでしょ?」
男の子二人は矢継ぎ早に交互に言った。
ヌーッティはうずうずして来ていた。
それもそのはず、困ったら助けて欲しいと思っているのは、今まさに、ヌーッティのほうであったからである。
「さあ、そろそろ帰るよ」
男の子たちのおばあさんはやんわりと促した。
「やだ!」
「妖精さんと友だちになって、困ってるとき助けてもらいたい!」
だが、男の子たちはだだをこね始めた。
じっと耐えていたヌーッティの限界は近かった。
初老の女性は男の子たちを諭し始めた。
けれども、男の子二人は一歩も譲らなかった。
そして、ついに、ヌーッティの忍耐力が限界を迎えた。
ヌーッティは目の前に置いたラッピング袋の束をかき分けて、通路に、男の子たちと彼らのおばあさんの前に出た。
「ヌーのほうこそ困ってるヌー! 妖精さんだって困るときがあるヌー! そんなにわがまま言ってると、ヨウルプッキからクリスマスプレゼントをもらえなくなるヌー!」
目の前に突如現れたヌーッティに、男の子二人とおばあさんは目を丸くし、身動きひとつとれなかった。
「ヌーだって怒っちゃうヌー!」
ぷりぷりと怒っているヌーッティは身をひるがえし、一目散にその場から走り去っていった。
その後、残された二人の男の子とおばあさんがどうなったのかは、逃げ出したヌーッティにわかるはずもなかった。
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