104 / 159
作れ! 新しいお洋服!
5.試される忍耐力?
しおりを挟む
ヌーッティは店内をちょこちょこと駆け回っていた。
ヌーッティに似合う服を作ってもらうために。
ビーズや装飾物の棚を通り抜けたときに、ヌーッティはある違和感を感じた。
そして、首を回して背後を見やった。
誰もいなかった。
再び、走り出そうとした瞬間。
また、肌に貼り付くような視線を感じて振り向いた。
さっと何かが物陰に隠れたのをヌーッティは見逃さなかった。
——人間に見つかった⁈
ヌーッティは焦り、ひとまず、手近な棚の一番下の段の物奥に隠れた。
じっと動かず、呼吸もできるだけ抑えて、ヌーッティは待った。
すると、4本の人間の足が現れた。
「さっき、小さいくまのぬいぐるみが動いてたよね?」
幼い男の子の声であった。
「うん。あのおもちゃ欲しいよね。おばーちゃんに言って買ってもらおうよ」
返答したのも、先ほどの声と同い年くらいの男の子であった。
ヌーッティは二人の男の子が棚の前でうろうろ足を動かしているのを注視していた。
「あっ! おばーちゃん!」
男の子の一人が嬉々とした声を上げた。
「どうしたの? 二人とも。何か欲しいものは見つかったかい?」
「見つかったよ! くまの動くぬいぐるみが欲しい!」
ヌーッティはびくりと体を震わせた。
二人の男の子の会話から推測されるのは、動くぬいぐるみのおもちゃだと思われているヌーッティであったからだ。
「それで、どこにぬいぐるみのおもちゃがあるんだい?」
「わかんない。ここまで後をつけてきたんだけど、いなくなった」
男の子はしょぼくれた声色で返答した。
「あらあら。それは、本当に動くぬいぐるみだったのかい?」
男の子二人は黙っていた。
「もしかしたら、妖精さんにいたずらされたのかもしれないね」
初老の女性だと思わしき声は弾んでいた。
「いたずら?」
「そう。二人が可愛いから、ちょっかい出されたのかもねぇ。だって、ここはギフト用の袋や紙が置いてある棚だよ? ぬいぐるみがここに置いてあるのはおかしいし、だからきっと、妖精さんにからかわれたんだよ」
楽しそうな笑い交じりの声であった。
「えー! だったら、ぼくたちあのくまと友だちになりたいよ!」
「ね! だって、妖精さんはぼくたちが困ったら助けてくれるんでしょ?」
男の子二人は矢継ぎ早に交互に言った。
ヌーッティはうずうずして来ていた。
それもそのはず、困ったら助けて欲しいと思っているのは、今まさに、ヌーッティのほうであったからである。
「さあ、そろそろ帰るよ」
男の子たちのおばあさんはやんわりと促した。
「やだ!」
「妖精さんと友だちになって、困ってるとき助けてもらいたい!」
だが、男の子たちはだだをこね始めた。
じっと耐えていたヌーッティの限界は近かった。
初老の女性は男の子たちを諭し始めた。
けれども、男の子二人は一歩も譲らなかった。
そして、ついに、ヌーッティの忍耐力が限界を迎えた。
ヌーッティは目の前に置いたラッピング袋の束をかき分けて、通路に、男の子たちと彼らのおばあさんの前に出た。
「ヌーのほうこそ困ってるヌー! 妖精さんだって困るときがあるヌー! そんなにわがまま言ってると、ヨウルプッキからクリスマスプレゼントをもらえなくなるヌー!」
目の前に突如現れたヌーッティに、男の子二人とおばあさんは目を丸くし、身動きひとつとれなかった。
「ヌーだって怒っちゃうヌー!」
ぷりぷりと怒っているヌーッティは身をひるがえし、一目散にその場から走り去っていった。
その後、残された二人の男の子とおばあさんがどうなったのかは、逃げ出したヌーッティにわかるはずもなかった。
ヌーッティに似合う服を作ってもらうために。
ビーズや装飾物の棚を通り抜けたときに、ヌーッティはある違和感を感じた。
そして、首を回して背後を見やった。
誰もいなかった。
再び、走り出そうとした瞬間。
また、肌に貼り付くような視線を感じて振り向いた。
さっと何かが物陰に隠れたのをヌーッティは見逃さなかった。
——人間に見つかった⁈
ヌーッティは焦り、ひとまず、手近な棚の一番下の段の物奥に隠れた。
じっと動かず、呼吸もできるだけ抑えて、ヌーッティは待った。
すると、4本の人間の足が現れた。
「さっき、小さいくまのぬいぐるみが動いてたよね?」
幼い男の子の声であった。
「うん。あのおもちゃ欲しいよね。おばーちゃんに言って買ってもらおうよ」
返答したのも、先ほどの声と同い年くらいの男の子であった。
ヌーッティは二人の男の子が棚の前でうろうろ足を動かしているのを注視していた。
「あっ! おばーちゃん!」
男の子の一人が嬉々とした声を上げた。
「どうしたの? 二人とも。何か欲しいものは見つかったかい?」
「見つかったよ! くまの動くぬいぐるみが欲しい!」
ヌーッティはびくりと体を震わせた。
二人の男の子の会話から推測されるのは、動くぬいぐるみのおもちゃだと思われているヌーッティであったからだ。
「それで、どこにぬいぐるみのおもちゃがあるんだい?」
「わかんない。ここまで後をつけてきたんだけど、いなくなった」
男の子はしょぼくれた声色で返答した。
「あらあら。それは、本当に動くぬいぐるみだったのかい?」
男の子二人は黙っていた。
「もしかしたら、妖精さんにいたずらされたのかもしれないね」
初老の女性だと思わしき声は弾んでいた。
「いたずら?」
「そう。二人が可愛いから、ちょっかい出されたのかもねぇ。だって、ここはギフト用の袋や紙が置いてある棚だよ? ぬいぐるみがここに置いてあるのはおかしいし、だからきっと、妖精さんにからかわれたんだよ」
楽しそうな笑い交じりの声であった。
「えー! だったら、ぼくたちあのくまと友だちになりたいよ!」
「ね! だって、妖精さんはぼくたちが困ったら助けてくれるんでしょ?」
男の子二人は矢継ぎ早に交互に言った。
ヌーッティはうずうずして来ていた。
それもそのはず、困ったら助けて欲しいと思っているのは、今まさに、ヌーッティのほうであったからである。
「さあ、そろそろ帰るよ」
男の子たちのおばあさんはやんわりと促した。
「やだ!」
「妖精さんと友だちになって、困ってるとき助けてもらいたい!」
だが、男の子たちはだだをこね始めた。
じっと耐えていたヌーッティの限界は近かった。
初老の女性は男の子たちを諭し始めた。
けれども、男の子二人は一歩も譲らなかった。
そして、ついに、ヌーッティの忍耐力が限界を迎えた。
ヌーッティは目の前に置いたラッピング袋の束をかき分けて、通路に、男の子たちと彼らのおばあさんの前に出た。
「ヌーのほうこそ困ってるヌー! 妖精さんだって困るときがあるヌー! そんなにわがまま言ってると、ヨウルプッキからクリスマスプレゼントをもらえなくなるヌー!」
目の前に突如現れたヌーッティに、男の子二人とおばあさんは目を丸くし、身動きひとつとれなかった。
「ヌーだって怒っちゃうヌー!」
ぷりぷりと怒っているヌーッティは身をひるがえし、一目散にその場から走り去っていった。
その後、残された二人の男の子とおばあさんがどうなったのかは、逃げ出したヌーッティにわかるはずもなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
王子様の家庭教師
雨音
児童書・童話
同世代の少女に比べて、英語が堪能な柑奈。とある日、彼女は祖母の秘密【鍵】に触れたことで、異世界にトリップしてしまう。
そこではどうやら、英語が『神聖な言語』として、魔法の発動呪文に使われるらしい。
柑奈は英語の文法が浸透していないその世界で、王子様の家庭教師に就任することになるが――。
ルカ、振り向いて作戦
松石 愛弓
児童書・童話
ルカが郵便屋さんのヤギ吉さんと仲良く話している姿を見て、ヤキモチを焼いてしまうカイル。カイルは焦り、打開策を考える。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました。ルカとカイル。の番外編です。
ルカとカイル
松石 愛弓
児童書・童話
異世界に転移してきた魔法を使えるルカと、金色の虎から人の姿に変身できるカイルの日常。童話のパロディや、森の動物たちの日常をコメディ路線で書いてゆく予定です。
ほぼショートショートの読み切りのお話です。すぐに気楽に読めると思います。よろしくお願いします。不定期更新です。
下出部町内漫遊記
月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。
ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。
「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。
そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。
あんなに練習したのに……。
意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。
迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった!
あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。
じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。
それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。
ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。
ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん!
七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。
奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。
妖精さん達と暮らそう 改訂版
東郷 珠
児童書・童話
私にしか見えない妖精さん。
色んな妖精さんが、女の子を助けます。
女の子は、妖精さんと毎日楽しく生活します。
妖精さんと暮らす女の子の日常。
温かく優しいひと時を描く、ほのぼのストーリーをお楽しみ下さい。
[完結済]ボクの小説日記2
テキトーセイバー
ホラー
前作「ボクの小説日記」の続編ホラー短編集です。
前作主人公ボクの他にカノジョが登場します。
解説オチもボクとカノジョが会話して解説ショーを送りします。
シルク航路〜ホール・アウェイ〜
ままかりなんばん
児童書・童話
海賊黄金時代にかげりが見えた西暦1701年。
南の海にて、イカロス海軍船ジョージ・セイル号が行方不明に。
その直前、海軍船に乗っていた少年は海賊船チャルチウィトリクエ号へとやっかい払いされたため一命を取り留める。
少年の名はシルク。
愉快な20人の海賊との出会いと脅威との戦い、そして別れの海洋冒険小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる