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可愛いは誰の手に?
3.くまの歌
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ヌーッティとキルシのどちらが可愛いのかを巡る勝負の1回戦が引き分けとなり、2回戦が始まろうとしていた。
「それで、今度はどんな勝負なの?」
木製の勉強机の上に腰掛けているトゥーリがキルシに尋ねた。
「どちらが歌を上手に歌えるかの勝負よ! 課題曲は『くまの歌』にするわ!」
仁王立ち姿のキルシが胸を張って答えた。
「よく歌うお歌だヌー! それに、ヌーはお歌を歌うのが上手だヌー!」
そして、キルシとヌーッティはそれぞれ声を出して、歌う準備をし始めた。
三分後。
「まずは、わたしから」
キルシはぺこりとアキとトゥーリにお辞儀をした。
顔を上げて、深呼吸をひとつ。そして、詩を歌い始める。
Mahtava nalle tanssii maalla
laulelen ja loikiskellen
——踊るよ、小熊はここで、
歌いながら、跳ねながら
キルシは愛くるしい声で歌い始めた。
安定した音程で、的確に韻を踏みながら。
Nalle sanoo vanhoja sanoja
pyörien ja juoksennellen
——話すよ、小熊は古い言葉を、
回りながら、走りながら
韻はしっかり踏んでいるし、音程も外していない。
けれども、アキとトゥーリはどこか違和感を抱いた。
Tulkaa pyhien henget tänne
——さあ、おいでませ! 聖なる精霊さんたち!
ようやく、アキとトゥーリは違和感の正体に気がついた。
途中からリズムが徐々にズレ始めていたのであった。
laulamaan yhdessä miun kanssa
——小さなくまと一緒に歌うために!
最後の一節がズレの最骨頂となった。
だが、歌い終えたキルシは得意顔で胸を張っていた。
「どうです⁈」
キルシは目を輝かせてアキとトゥーリに問いかけた。
「えっと……よかったんじゃないかな?」
アキが言葉を選んで感想を述べた。
聞いてキルシはふんっと鼻を鳴らした。
しかし、
「リズムがかなりズレてたけどね」
トゥーリのひとことでキルシの表情が無へと還った。
「じゃあ、次はヌーの番だヌー!」
ヌーッティは全身をフリフリ動かしながら歌い始めた。
キルシに負けず劣らずの愛郷のある歌声であった。
韻を的確に踏みながら、リズムに乗って、軽やかに楽しそうにヌーッティは歌った。
しかし、それを聴いていたアキとトゥーリの表情が強ばり始めた。
リズムはいいのに、なぜか次第に音程がズレていったのであった。
そして、
「……laulamaan yhdessä Nuun kanssa! ——小さなヌーと一緒に歌うために!」
誰が聞いても不協和。
何をどうしたらここまで音程が外れるのかというほどの致命的な音程のズレが表出され、歌は締めくくられた。
「どうだー!」
えっへんと自慢気な表情でヌーッティに対して、
「えっと……よかったんじゃないかな?」
アキは肩を落として答えた。
ヌーッティがドヤ顔でキルシを見た瞬間、
「音程がかなりズレてたけどね」
トゥーリのひとことでヌーッティの表情が無に帰した。
そして、2つめの歌の勝負も引き分けとなった。
はたして、次の勝負で決着がつくのか。
こうして、ヌーッティとキルシの勝負はついに最終決戦を迎えるのであった。
「それで、今度はどんな勝負なの?」
木製の勉強机の上に腰掛けているトゥーリがキルシに尋ねた。
「どちらが歌を上手に歌えるかの勝負よ! 課題曲は『くまの歌』にするわ!」
仁王立ち姿のキルシが胸を張って答えた。
「よく歌うお歌だヌー! それに、ヌーはお歌を歌うのが上手だヌー!」
そして、キルシとヌーッティはそれぞれ声を出して、歌う準備をし始めた。
三分後。
「まずは、わたしから」
キルシはぺこりとアキとトゥーリにお辞儀をした。
顔を上げて、深呼吸をひとつ。そして、詩を歌い始める。
Mahtava nalle tanssii maalla
laulelen ja loikiskellen
——踊るよ、小熊はここで、
歌いながら、跳ねながら
キルシは愛くるしい声で歌い始めた。
安定した音程で、的確に韻を踏みながら。
Nalle sanoo vanhoja sanoja
pyörien ja juoksennellen
——話すよ、小熊は古い言葉を、
回りながら、走りながら
韻はしっかり踏んでいるし、音程も外していない。
けれども、アキとトゥーリはどこか違和感を抱いた。
Tulkaa pyhien henget tänne
——さあ、おいでませ! 聖なる精霊さんたち!
ようやく、アキとトゥーリは違和感の正体に気がついた。
途中からリズムが徐々にズレ始めていたのであった。
laulamaan yhdessä miun kanssa
——小さなくまと一緒に歌うために!
最後の一節がズレの最骨頂となった。
だが、歌い終えたキルシは得意顔で胸を張っていた。
「どうです⁈」
キルシは目を輝かせてアキとトゥーリに問いかけた。
「えっと……よかったんじゃないかな?」
アキが言葉を選んで感想を述べた。
聞いてキルシはふんっと鼻を鳴らした。
しかし、
「リズムがかなりズレてたけどね」
トゥーリのひとことでキルシの表情が無へと還った。
「じゃあ、次はヌーの番だヌー!」
ヌーッティは全身をフリフリ動かしながら歌い始めた。
キルシに負けず劣らずの愛郷のある歌声であった。
韻を的確に踏みながら、リズムに乗って、軽やかに楽しそうにヌーッティは歌った。
しかし、それを聴いていたアキとトゥーリの表情が強ばり始めた。
リズムはいいのに、なぜか次第に音程がズレていったのであった。
そして、
「……laulamaan yhdessä Nuun kanssa! ——小さなヌーと一緒に歌うために!」
誰が聞いても不協和。
何をどうしたらここまで音程が外れるのかというほどの致命的な音程のズレが表出され、歌は締めくくられた。
「どうだー!」
えっへんと自慢気な表情でヌーッティに対して、
「えっと……よかったんじゃないかな?」
アキは肩を落として答えた。
ヌーッティがドヤ顔でキルシを見た瞬間、
「音程がかなりズレてたけどね」
トゥーリのひとことでヌーッティの表情が無に帰した。
そして、2つめの歌の勝負も引き分けとなった。
はたして、次の勝負で決着がつくのか。
こうして、ヌーッティとキルシの勝負はついに最終決戦を迎えるのであった。
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