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ヌーッティの秘密・後編

6.いつか会えるその日を信じて

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「お願いがあるの、ミエリッキ!」
 トゥーリは立ち上がってミエリッキに呼びかけた。
「ヌーッティはいつも本当にわがままで、いたずらばっかりするけど、頼りになるときもあるの。今日だって、魔物ヘルマンニに襲われたときに助けてくれた。それに、北の大地を統べる最悪の魔女ロウヒと戦ったときだって、アキのことを助けようとしたの」
 トゥーリはそこでひと呼吸置いた。そして、
「だから、お願い! ヌーッティはとっても頼りになる、立派な小熊の妖精だよって、みんなに、世界中の精霊や妖精たちに伝えて欲しいの!」
 トゥーリは思うことのありったけをミエリッキに伝えた。
 そんなトゥーリを見ていたイーリスとマイッキも立ち上がり、
「私たちからも。お願い、ミエリッキ」
 トゥーリの願いを後押しするように、二人の願いも重ねて伝えた。
 4者の様子を見ていたミエリッキは柔らかい笑みを湛えて、立ち上がった。
「わかったわ。私にできることをしましょう!」
 そして、ミエリッキは精霊や妖精、動物や植物に呼びかけた。
「さあ、私の親愛なる大切な友人たちよ! 森の女主人の名のもとにあたなたちに話しましょう、私の望みを!」
 ミエリッキはたおやかな歌声で詩を紡いだ。
 ヌーッティの出生の真実を。
 ヌーッティが頼りになる小熊の妖精であることを。
 木々が、草が、風がミエリッキの歌に応えるかのように響き合った。
 ミエリッキは目を閉じ、耳を澄ました。
「そう、ありがとう」
 独り言ちるように囁くと、目を開けトゥーリたちを見やった。
「これで、もう大丈夫よ。精霊や妖精たちが本当のヌーッティを世界中に伝えてくれるわ」
 ミエリッキはにこりと柔和な笑みを湛えてみせた。
 トゥーリはほっと胸を撫で下ろし、隣で涙ぐんでいるヌーッティの背中をさすった。
「ねえ、ヌーッティ」
 イーリスの呼びかけに、ヌーッティは目をごしごしこするとイーリスの顔を見た。
「記憶を取り戻すまでここにいない?」
 姉の提案にヌーッティは首を横に振り、トゥーリの手をぎゅっと握った。
「おねーさんたちも大事だけど、トゥーリやアキと一緒にいたいヌー」
 トゥーリはヌーッティの返答を聞くや否や隣に立つヌーッティに思いっきり抱きついた。
「だって、こんなに仲良しなんだヌー!」
 ヌーッティは嬉しそうな顔で、トゥーリを思いっきり抱きしめた。
 しばらく抱きしめ合っていたヌーッティとトゥーリは身体を離すと、ヌーッティはイーリスとマイッキに視線を移して、
「イーリス、マイッキ。ときどき遊びに来てもいいヌー?」
 ちょっとだけ困った表情を浮かべて、聞きづらそうに尋ねた。
「もちろんよ」
 イーリズが笑顔で答えた。
「今度はお友だちのアキくんを紹介してちょうだい」
 マイッキも嬉しそうな面持ちで答えた。
 宵闇が訪れる前に、ミエリッキが雷鳥2羽を呼び寄せると、トゥーリとヌーッティはその鳥の背に乗った。
「また来るヌー!」
 ヌーッティとトゥーリは片手を大きく振って、ミエリッキとイーリスとマイッキに別れの挨拶をした。
 こうして、ヌーッティとトゥーリの旅は終わりを迎えるのであった。
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