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お月見大騒動
5.出会い
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アキの自宅から最寄りのトラム停留所まで徒歩で行くと、緑色の車体のトラムがちょうど来ていた。
アキと、その隣に並んで歩く人間に扮したオッツォは、やや駆け足気味にトラムに乗り込んだ。
発車した3両編成のトラムは大通りをまっすぐ南へ下っていく。
座席に座っているオッツォは窓越しに外の風景を眺めている。
音楽劇場を通過すると、道路は混み始め、人の姿も比例するように多くなった。
中心部にあるデパートに差しかかるタイミングで、アキは停車のボタンを押した。
やがてトラムがデパート横の停留所に停まる。
アキはオッツォの手を取って、トラムから降りた。
それから、信号が青になるのを待って、アキたちは道路を横断して、脇道へ入る。
少し歩くと左右に公園が見えてきた。
アキとオッツォが右側の公園へ入ると、ワイナミョイネンとアイノと、2人に挟まれているエリアス・リョンロットの銅像があった。
「着いた」
アキは独り言ちると、周囲を見回し、
「トゥーリ、ヌーッティ。もう出てきても大丈夫だよ」
フードの中にいる2人に声をかけた。
アキの言葉を待っていたトゥーリとヌーッティがひょこっと顔を出す。
きょろきょろ辺りを見ると、フードから出て、アキの肩の上に立った。
「オッツォ。キルシの気配の跡は残ってる?」
トゥーリがオッツォに尋ねた。
オッツォはコートの襟を手で少し下げると、鼻をひくひくさせて匂いを嗅ぐような仕草をした。
「うーん。もう残ってないみたいだ。最初から探さないとだめっぽいね」
残念そうに言い終えて、オッツォは、再び鼻を襟で覆った。
もんもんと悩むオッツォとトゥーリとアキをよそに、ヌーッティがオッツォの真似をするかのように、鼻をひくひく動かした。
「あっちだヌー!」
言い終えるが早いか、ヌーッティはアキの肩から跳躍し、大地に降り立った。
そして、周りの目など気にすることなく駆け出した。
「ヌーッティ⁈」
気づいたトゥーリとアキの声が重なった。
ヌーッティはすでに公園を出ていた。
「アキ! 追いかけて! ヌーッティも迷子になっちゃう!」
トゥーリの言葉が終わらぬうちにアキも駆け出した。
やや遅れて、オッツォもヌーッティとアキの後を追った。
飛び出すように走り出したヌーッティは風を切り、多くの人が行き交う道を全力で駆けていた。
「匂う匂う匂うヌー! こっちから匂いがするヌー! 甘くて美味しいものの匂いがすつヌー!」
ヌーッティの口からよだれが少し垂れた。
オールドチャーチの公園を左側に見つつ、ヌーッティは走った。
ヌーッティの目の前にブレヴァルディ大通りが見え、右折しようとしたときであった。
右手側の建物の陰から小さい何かが現れ、ヌーッティはどんっとぶつかった。
「痛いヌー! なんだヌー⁈」
尻もちをついたヌーッティは軽く目を回した。
頭を振ったヌーッティが、目の前に現れた何かを視界に捉えた。
そこには、うす桃色の毛並みの、ヌーッティと同じ大きさの小熊の女の子がいた。
「いったぁ……。何なの、もう」
小熊の女の子は額に手を当てて、頭を振っていた。
そこへ、アキとトゥーリとオッツォが、やや遅れてヌーッティのもとに着いた。
ヌーッティの前に座り込んでいる小熊の女の子を見たオッツォが目を見開き、
「キルシ!」
探していた小熊の精霊の女の子の名を呼んだ。
ヌーッティとトゥーリとアキの視線がキルシと呼ばれた小熊の女の子に向けられた。
ヌーッティの瞳にキルシが映った。
運命の歯車は回り始めたのであった。
アキと、その隣に並んで歩く人間に扮したオッツォは、やや駆け足気味にトラムに乗り込んだ。
発車した3両編成のトラムは大通りをまっすぐ南へ下っていく。
座席に座っているオッツォは窓越しに外の風景を眺めている。
音楽劇場を通過すると、道路は混み始め、人の姿も比例するように多くなった。
中心部にあるデパートに差しかかるタイミングで、アキは停車のボタンを押した。
やがてトラムがデパート横の停留所に停まる。
アキはオッツォの手を取って、トラムから降りた。
それから、信号が青になるのを待って、アキたちは道路を横断して、脇道へ入る。
少し歩くと左右に公園が見えてきた。
アキとオッツォが右側の公園へ入ると、ワイナミョイネンとアイノと、2人に挟まれているエリアス・リョンロットの銅像があった。
「着いた」
アキは独り言ちると、周囲を見回し、
「トゥーリ、ヌーッティ。もう出てきても大丈夫だよ」
フードの中にいる2人に声をかけた。
アキの言葉を待っていたトゥーリとヌーッティがひょこっと顔を出す。
きょろきょろ辺りを見ると、フードから出て、アキの肩の上に立った。
「オッツォ。キルシの気配の跡は残ってる?」
トゥーリがオッツォに尋ねた。
オッツォはコートの襟を手で少し下げると、鼻をひくひくさせて匂いを嗅ぐような仕草をした。
「うーん。もう残ってないみたいだ。最初から探さないとだめっぽいね」
残念そうに言い終えて、オッツォは、再び鼻を襟で覆った。
もんもんと悩むオッツォとトゥーリとアキをよそに、ヌーッティがオッツォの真似をするかのように、鼻をひくひく動かした。
「あっちだヌー!」
言い終えるが早いか、ヌーッティはアキの肩から跳躍し、大地に降り立った。
そして、周りの目など気にすることなく駆け出した。
「ヌーッティ⁈」
気づいたトゥーリとアキの声が重なった。
ヌーッティはすでに公園を出ていた。
「アキ! 追いかけて! ヌーッティも迷子になっちゃう!」
トゥーリの言葉が終わらぬうちにアキも駆け出した。
やや遅れて、オッツォもヌーッティとアキの後を追った。
飛び出すように走り出したヌーッティは風を切り、多くの人が行き交う道を全力で駆けていた。
「匂う匂う匂うヌー! こっちから匂いがするヌー! 甘くて美味しいものの匂いがすつヌー!」
ヌーッティの口からよだれが少し垂れた。
オールドチャーチの公園を左側に見つつ、ヌーッティは走った。
ヌーッティの目の前にブレヴァルディ大通りが見え、右折しようとしたときであった。
右手側の建物の陰から小さい何かが現れ、ヌーッティはどんっとぶつかった。
「痛いヌー! なんだヌー⁈」
尻もちをついたヌーッティは軽く目を回した。
頭を振ったヌーッティが、目の前に現れた何かを視界に捉えた。
そこには、うす桃色の毛並みの、ヌーッティと同じ大きさの小熊の女の子がいた。
「いったぁ……。何なの、もう」
小熊の女の子は額に手を当てて、頭を振っていた。
そこへ、アキとトゥーリとオッツォが、やや遅れてヌーッティのもとに着いた。
ヌーッティの前に座り込んでいる小熊の女の子を見たオッツォが目を見開き、
「キルシ!」
探していた小熊の精霊の女の子の名を呼んだ。
ヌーッティとトゥーリとアキの視線がキルシと呼ばれた小熊の女の子に向けられた。
ヌーッティの瞳にキルシが映った。
運命の歯車は回り始めたのであった。
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