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お月見大騒動
1.団子は行方不明?
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小熊の妖精ヌーッティは両手で団子を丸めながら、ため息を吐いた。
「前のお月見は大変だったヌー」
真正面にいるトントゥの女の子トゥーリは頷きながら、団子を作りながら、ヌーッティの言葉に耳を傾けていた。
「トゥーリにグーパンチされて死ぬかと思ったヌー」
「重要なのはそこじゃないだろ」
同じく団子作りに勤しんでいるアキが突っ込んだ。
「前はヌーッティが団子を喉に詰まらせて、大変だったんだろ? トゥーリはヌーッティを助けただけだし。行動はアレだったけど」
「でもでも! ヌーは、ただ、いっぱいお団子が食べたかっただけだヌー! トゥーリにぼうがいされたヌー!」
ヌーッティのアキへの反論を聞いていたトゥーリは我慢ならなかったのか、作業の手を止めると、
「また喉に団子を詰まらせたいの?」
団子を持つ手を振りかぶって、ヌーッティをにらんだ。
ヌーッティはカタカタと体を震わせながら、首を強く横に振った。
「とにかく」
アキは、こほんと軽く咳払いをすると、
「今年のお月見は、団子を喉に詰まらせない、グーパンチをしない、みんなで平穏に過ごすこと。いい?」
トゥーリとヌーッティに視線を送った。
「いいヌー! みんなでお団子を食べるヌー!」
「わかった。グーパンチはしない」
二人から返答を聞いたアキはひとつうなずくと、再び三人で団子を作り始めた。
しばらくして団子を作り終えると、アキが作った団子を置く台、三方に15個の団子を積み上げた。
余った団子はお皿の上に置き、あんこをかけて、この日のおやつになった。
三方に乗せた団子を1階のリビングの窓際に置いた。
団子が乗った三方の近くには、小さなテーブルがあり、その上には、果物や野菜が飾られていた。
「ススキはないけど、まあ、こんなもんかな」
月見の準備を整え終えて、アキはそう独り言ちた。
「ススキの代わりに、アキのおばーちゃんの部屋からハーブを持ってきて飾ればいいヌー!」
「だめだよ。ススキを飾るのにはちゃんと理由があるんだよ」
ヌーッティの提案を棄却したトゥーリが、ヌーッティにススキを飾る意味を教えた。
以前、アキと共に、日本で暮らしていたときに仕入れた知識であった。
それから、トゥーリとヌーッティは、おやつを持ったアキと共に、アキの部屋へ戻って行った。
部屋に入ったアキは、大きな木製の勉強机の上にあんこがかかった団子の皿を乗せると、子ども用のフォークをトゥーリとヌーッティに手渡した。
そして、三人で食べるときの挨拶をして、作りたての団子を食べ始めた。
団子が残り数個となったときであった。
部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
トゥーリは食べる手を止めて、口にあんこがついたヌーッティの手を取って、机の上に積まれた本の背面へと隠れた。
同時に、ドアが開き、アキの祖母が顔を出した。
「アキ。もう団子は作り終えたの?」
「リビングの窓際に飾ったよ。どうして?」
「果物と野菜はあったけど、団子だけがないのよ。今、食べてる団子は?」
困った様子の祖母に、アキは、
「これは余った団子だよ。ばーちゃんたちのもキッチンに置いておいたよ」
「それがないのよ。アキが書いたメモはあったのだけど、団子がどこにもないの」
アキは不可解な面持ちになった。
それもそのはず、つい先ほど団子を作り、供えたところであったからである。
「トントゥや妖精が出て、食べちゃったのかしらねぇ。とりあえず、食べ終えてからでいいから、また、団子を作ってくれる?」
「あ、うん。いいよ」
アキが返事をすると、祖母はドアを閉めて、1階へ下りていった。
足音が聞こえなくなってから、隠れて話を聞いていたトゥーリとヌーッティがアキの前に現れた。
「どういうこと?」
アキは訝って、二人に尋ねた。
「さっき飾ったばかりだヌー! お団子がなくなるなんて変だヌー!」
「それに、アキのおばーちゃん、私たちが食べちゃったみたいに言ってた。私たちじゃないのに」
「わかってる。でも、どうして……」
アキはあごに手を当てて、考え始めた。
「ねえ、ヌーッティ。このまま、私たちがお団子を盗み食いした犯人になっちゃうのってやじゃない?」
眉毛を釣り上げて、トゥーリがヌーッティに訊いた。
「いやだヌー。ヌーたちは何もしてないヌー!」
ヌーッティはトゥーリの顔を見て、うなずいた。
トゥーリも、こくりと頷いた。
二人の意見は合致した。
「犯人を探して、ヌーたちの汚名を返上するヌー!」
「行くよ! ヌーッティ!」
こうして、トゥーリとヌーッティの行方不明の団子捜査が開始された。
「前のお月見は大変だったヌー」
真正面にいるトントゥの女の子トゥーリは頷きながら、団子を作りながら、ヌーッティの言葉に耳を傾けていた。
「トゥーリにグーパンチされて死ぬかと思ったヌー」
「重要なのはそこじゃないだろ」
同じく団子作りに勤しんでいるアキが突っ込んだ。
「前はヌーッティが団子を喉に詰まらせて、大変だったんだろ? トゥーリはヌーッティを助けただけだし。行動はアレだったけど」
「でもでも! ヌーは、ただ、いっぱいお団子が食べたかっただけだヌー! トゥーリにぼうがいされたヌー!」
ヌーッティのアキへの反論を聞いていたトゥーリは我慢ならなかったのか、作業の手を止めると、
「また喉に団子を詰まらせたいの?」
団子を持つ手を振りかぶって、ヌーッティをにらんだ。
ヌーッティはカタカタと体を震わせながら、首を強く横に振った。
「とにかく」
アキは、こほんと軽く咳払いをすると、
「今年のお月見は、団子を喉に詰まらせない、グーパンチをしない、みんなで平穏に過ごすこと。いい?」
トゥーリとヌーッティに視線を送った。
「いいヌー! みんなでお団子を食べるヌー!」
「わかった。グーパンチはしない」
二人から返答を聞いたアキはひとつうなずくと、再び三人で団子を作り始めた。
しばらくして団子を作り終えると、アキが作った団子を置く台、三方に15個の団子を積み上げた。
余った団子はお皿の上に置き、あんこをかけて、この日のおやつになった。
三方に乗せた団子を1階のリビングの窓際に置いた。
団子が乗った三方の近くには、小さなテーブルがあり、その上には、果物や野菜が飾られていた。
「ススキはないけど、まあ、こんなもんかな」
月見の準備を整え終えて、アキはそう独り言ちた。
「ススキの代わりに、アキのおばーちゃんの部屋からハーブを持ってきて飾ればいいヌー!」
「だめだよ。ススキを飾るのにはちゃんと理由があるんだよ」
ヌーッティの提案を棄却したトゥーリが、ヌーッティにススキを飾る意味を教えた。
以前、アキと共に、日本で暮らしていたときに仕入れた知識であった。
それから、トゥーリとヌーッティは、おやつを持ったアキと共に、アキの部屋へ戻って行った。
部屋に入ったアキは、大きな木製の勉強机の上にあんこがかかった団子の皿を乗せると、子ども用のフォークをトゥーリとヌーッティに手渡した。
そして、三人で食べるときの挨拶をして、作りたての団子を食べ始めた。
団子が残り数個となったときであった。
部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
トゥーリは食べる手を止めて、口にあんこがついたヌーッティの手を取って、机の上に積まれた本の背面へと隠れた。
同時に、ドアが開き、アキの祖母が顔を出した。
「アキ。もう団子は作り終えたの?」
「リビングの窓際に飾ったよ。どうして?」
「果物と野菜はあったけど、団子だけがないのよ。今、食べてる団子は?」
困った様子の祖母に、アキは、
「これは余った団子だよ。ばーちゃんたちのもキッチンに置いておいたよ」
「それがないのよ。アキが書いたメモはあったのだけど、団子がどこにもないの」
アキは不可解な面持ちになった。
それもそのはず、つい先ほど団子を作り、供えたところであったからである。
「トントゥや妖精が出て、食べちゃったのかしらねぇ。とりあえず、食べ終えてからでいいから、また、団子を作ってくれる?」
「あ、うん。いいよ」
アキが返事をすると、祖母はドアを閉めて、1階へ下りていった。
足音が聞こえなくなってから、隠れて話を聞いていたトゥーリとヌーッティがアキの前に現れた。
「どういうこと?」
アキは訝って、二人に尋ねた。
「さっき飾ったばかりだヌー! お団子がなくなるなんて変だヌー!」
「それに、アキのおばーちゃん、私たちが食べちゃったみたいに言ってた。私たちじゃないのに」
「わかってる。でも、どうして……」
アキはあごに手を当てて、考え始めた。
「ねえ、ヌーッティ。このまま、私たちがお団子を盗み食いした犯人になっちゃうのってやじゃない?」
眉毛を釣り上げて、トゥーリがヌーッティに訊いた。
「いやだヌー。ヌーたちは何もしてないヌー!」
ヌーッティはトゥーリの顔を見て、うなずいた。
トゥーリも、こくりと頷いた。
二人の意見は合致した。
「犯人を探して、ヌーたちの汚名を返上するヌー!」
「行くよ! ヌーッティ!」
こうして、トゥーリとヌーッティの行方不明の団子捜査が開始された。
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