62 / 159
ヌーッティの7日間ダイエット
3.トゥーリズ・ブート・キャンプ
しおりを挟む
トゥーリは、まず、ヌーッティの全身を裁縫用のメジャーで測定した。
それから、忘れないうちに勉強机に置かれていていたメモ紙に青のペンで、測ったヌーッティの体長とお腹まわりとヒップのサイズを書き出した。
「どうヌー? ヌーの肉体美は?」
上腕を隆盛させるポーズをとりながらヌーッティは尋ねた。
「聞きたい?」
トゥーリはちらっとヌーッティを見た。
ヌーッティは頷いた。
「体長33センチ、お腹30センチ、おしり29センチ」
「うそだヌー!」
ヌーッティは顔を真っ赤にして否定した。
「事実だよ。受け止めて。ポテトチップス250グラムをひとりで食べたんだよ? このくらいになるよ」
淡々とトゥーリに言われてヌーッティは言葉を失い、さらに、ヌーッティの顔が赤から紫へ、そして青色、白へと変化した。
トゥーリは腕を胸の前で組んでうなる。
「そうだなぁ。体長は変えられないとして、お腹は23センチで、お尻は22センチにしたいよね」
そう言うと、トゥーリは先ほど書いた数値の横に、今度は赤のペンで目立つように大きく書いた。
「よし! じゃあ、始めるよ!」
トゥーリは手をぱんっと叩いた。
「え⁈ もうやるヌー⁈」
「あたりまえでしょ? さ、ヌーッティ、仰向けに寝転がって」
ヌーッティは右往左往しつつも、言われるがままに床の上に寝そべった。
トゥーリはがしっと寝転んだヌーッティの両足を両手で押さえる。
「膝は軽く曲げて。手は前に突き出していいから、それで、上体を起こす!」
「わかったヌー。楽勝だヌー。せーの……」
だが、上体は起き上がらなかった。
「おかしいヌー。もう一回だヌー。せーの!」
ヌーッティは寝そべったまま、両手を上へ伸ばしつつ固まった。
「ちょっと待って、ヌーッティ。もしかして、起き上がれないの?」
トゥーリの質問に、ヌーッティはトゥーリを見つめることで答えた。
「わかった」
トゥーリは言うやいなや、ヌーッティとあい向かいに座った。
それから、両手で持っていたヌーッティの足を彼女自身の足で踏んで固定し、ヌーッティの手を取って、思いっきり引っ張った。
「痛いヌーっ!」
ヌーッティの上体がようやく起き上がった。
すると、トゥーリは起き上がったヌーッティを突っぱねて寝転がせる。
ごんっと音を立てて、ヌーッティの頭が床に激突した。
「痛いヌーっ!」
トゥーリはこれを50回繰り返した。
50回目が終わる頃には、ヌーッティは虫の息であった。
「立って!」
トゥーリはヌーッティの腕を引っ張って立ち上がり、ふらふらと立ち上がったヌーッティの胴体に紐を括りつけた。それから、ぶらりと垂れ下がっているほうの紐をトゥーリの腰に巻きつけた。
ヌーッティは嫌な予感しかしなかった。
「な、なにするヌー?」
恐る恐る尋ねた。
「家を走る」
トゥーリは軽くストレッチをしながら答えた。
ヌーッティは首を横に振った。
だが、遅かった。
「よしっ!」
トゥーリは言うと駆け出した。
ヌーッティがぐいっと引っ張られた。
足をもたつかせたヌーッティが転ぶ。
転倒したヌーッティを引き連れて(引きずって?)、トゥーリが家中を走った。全力で。ヌーッティを走らせるために。
しかし、
「止まってヌーっ!」
ヌーッティが転がる。跳ねる。廊下の角に激突する。
トゥーリがアキの部屋を出発してから10分後。
「まあまあ走ったかな」
トゥーリは息を整えながら満足そうな顔で、後ろにいるヌーッティを見た。
ヌーッティはうつ伏せでぜえぜえと呼吸荒くトゥーリを見上げていた。
「次はスクワットやるよ!」
「い、いやだヌー!」
そのとき、
「トゥーリ、ヌーッティ? おやつ食べる?」
部屋のドアを開けて、大袋のポテトチップスを手に持つアキが入って来た。
「アキー! トゥーリがいじめるヌー!」
ヌーッティがアキの胸にジャンプしてしがみつく。
「は?」
アキは何事かといった表情で泣きじゃくるヌーッティを見ると、トゥーリに視線を移す。
「違う! ヌーッティがダイエットしたいって言うから手伝ってあげてたんでしょ!」
トゥーリは頬を膨らませて全否定した。
「ダイエット?」
「そうだよ! ヌーッティが250グラムのポテトチップスとビスケットを食べ過ぎて、ヒーローの服が着られなくなって、もとの体型に戻りたいって言うから……!」
「えっと、詳しく教えて。トゥーリ」
トゥーリはこくんと頷いた。そして、ことのあらましをアキに説明した。
事情を聴いたアキは手を額に当て、頭を垂れた。
「そういうことか。それなら、おれも手伝うから、7日間じゃなくて、1ヶ月でもとの体型に戻ろう。な?」
アキは胸で泣くヌーッティを抱えると、そっと床にいるトゥーリの隣に下ろした。
「ヌーッティ。トゥーリはヌーッティのためにって手伝ってくれたんだから、そういうときは何て言うんだっけ?」
アキはしゃがみ込んで、ヌーッティの背中をぽんっと軽く押した。
ヌーッティは目を手でこすると、
「……ありがとうだヌー。さっきは言い過ぎてごめんだヌー」
トゥーリはワンピースのポケットから小さなハンカチを取り出すと、ヌーッティへ差し出した。
ヌーッティはハンカチを受け取って、びーんと鼻をかんだ。それから、アキが足元に置いたポテトチップスに目をやった。
ヌーッティの目がきらりと輝いた。
「ヌーっ!」
叫んだヌーッティがポテトチップスの袋に飛びかかる。
それから、忘れないうちに勉強机に置かれていていたメモ紙に青のペンで、測ったヌーッティの体長とお腹まわりとヒップのサイズを書き出した。
「どうヌー? ヌーの肉体美は?」
上腕を隆盛させるポーズをとりながらヌーッティは尋ねた。
「聞きたい?」
トゥーリはちらっとヌーッティを見た。
ヌーッティは頷いた。
「体長33センチ、お腹30センチ、おしり29センチ」
「うそだヌー!」
ヌーッティは顔を真っ赤にして否定した。
「事実だよ。受け止めて。ポテトチップス250グラムをひとりで食べたんだよ? このくらいになるよ」
淡々とトゥーリに言われてヌーッティは言葉を失い、さらに、ヌーッティの顔が赤から紫へ、そして青色、白へと変化した。
トゥーリは腕を胸の前で組んでうなる。
「そうだなぁ。体長は変えられないとして、お腹は23センチで、お尻は22センチにしたいよね」
そう言うと、トゥーリは先ほど書いた数値の横に、今度は赤のペンで目立つように大きく書いた。
「よし! じゃあ、始めるよ!」
トゥーリは手をぱんっと叩いた。
「え⁈ もうやるヌー⁈」
「あたりまえでしょ? さ、ヌーッティ、仰向けに寝転がって」
ヌーッティは右往左往しつつも、言われるがままに床の上に寝そべった。
トゥーリはがしっと寝転んだヌーッティの両足を両手で押さえる。
「膝は軽く曲げて。手は前に突き出していいから、それで、上体を起こす!」
「わかったヌー。楽勝だヌー。せーの……」
だが、上体は起き上がらなかった。
「おかしいヌー。もう一回だヌー。せーの!」
ヌーッティは寝そべったまま、両手を上へ伸ばしつつ固まった。
「ちょっと待って、ヌーッティ。もしかして、起き上がれないの?」
トゥーリの質問に、ヌーッティはトゥーリを見つめることで答えた。
「わかった」
トゥーリは言うやいなや、ヌーッティとあい向かいに座った。
それから、両手で持っていたヌーッティの足を彼女自身の足で踏んで固定し、ヌーッティの手を取って、思いっきり引っ張った。
「痛いヌーっ!」
ヌーッティの上体がようやく起き上がった。
すると、トゥーリは起き上がったヌーッティを突っぱねて寝転がせる。
ごんっと音を立てて、ヌーッティの頭が床に激突した。
「痛いヌーっ!」
トゥーリはこれを50回繰り返した。
50回目が終わる頃には、ヌーッティは虫の息であった。
「立って!」
トゥーリはヌーッティの腕を引っ張って立ち上がり、ふらふらと立ち上がったヌーッティの胴体に紐を括りつけた。それから、ぶらりと垂れ下がっているほうの紐をトゥーリの腰に巻きつけた。
ヌーッティは嫌な予感しかしなかった。
「な、なにするヌー?」
恐る恐る尋ねた。
「家を走る」
トゥーリは軽くストレッチをしながら答えた。
ヌーッティは首を横に振った。
だが、遅かった。
「よしっ!」
トゥーリは言うと駆け出した。
ヌーッティがぐいっと引っ張られた。
足をもたつかせたヌーッティが転ぶ。
転倒したヌーッティを引き連れて(引きずって?)、トゥーリが家中を走った。全力で。ヌーッティを走らせるために。
しかし、
「止まってヌーっ!」
ヌーッティが転がる。跳ねる。廊下の角に激突する。
トゥーリがアキの部屋を出発してから10分後。
「まあまあ走ったかな」
トゥーリは息を整えながら満足そうな顔で、後ろにいるヌーッティを見た。
ヌーッティはうつ伏せでぜえぜえと呼吸荒くトゥーリを見上げていた。
「次はスクワットやるよ!」
「い、いやだヌー!」
そのとき、
「トゥーリ、ヌーッティ? おやつ食べる?」
部屋のドアを開けて、大袋のポテトチップスを手に持つアキが入って来た。
「アキー! トゥーリがいじめるヌー!」
ヌーッティがアキの胸にジャンプしてしがみつく。
「は?」
アキは何事かといった表情で泣きじゃくるヌーッティを見ると、トゥーリに視線を移す。
「違う! ヌーッティがダイエットしたいって言うから手伝ってあげてたんでしょ!」
トゥーリは頬を膨らませて全否定した。
「ダイエット?」
「そうだよ! ヌーッティが250グラムのポテトチップスとビスケットを食べ過ぎて、ヒーローの服が着られなくなって、もとの体型に戻りたいって言うから……!」
「えっと、詳しく教えて。トゥーリ」
トゥーリはこくんと頷いた。そして、ことのあらましをアキに説明した。
事情を聴いたアキは手を額に当て、頭を垂れた。
「そういうことか。それなら、おれも手伝うから、7日間じゃなくて、1ヶ月でもとの体型に戻ろう。な?」
アキは胸で泣くヌーッティを抱えると、そっと床にいるトゥーリの隣に下ろした。
「ヌーッティ。トゥーリはヌーッティのためにって手伝ってくれたんだから、そういうときは何て言うんだっけ?」
アキはしゃがみ込んで、ヌーッティの背中をぽんっと軽く押した。
ヌーッティは目を手でこすると、
「……ありがとうだヌー。さっきは言い過ぎてごめんだヌー」
トゥーリはワンピースのポケットから小さなハンカチを取り出すと、ヌーッティへ差し出した。
ヌーッティはハンカチを受け取って、びーんと鼻をかんだ。それから、アキが足元に置いたポテトチップスに目をやった。
ヌーッティの目がきらりと輝いた。
「ヌーっ!」
叫んだヌーッティがポテトチップスの袋に飛びかかる。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。


下出部町内漫遊記
月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。
ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。
「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。
そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。
あんなに練習したのに……。
意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。
迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった!
あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。
じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。
それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。
ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。
ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん!
七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。
奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。
セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』
マイマイン
児童書・童話
『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。
このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。
随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

ためいきのしずく
絵南 玲子
児童書・童話
美しい景色を眺めながら過ごした、見はらしが丘での静かな暮らし。「私」はそれに飽き足らず、もっと自由に生きたいと願った。そして、念願の翼を得たものの、空の上の暮らしは、ままならなかった。次に生まれ変わった時、今度こそ願いは叶ったはずだったのだが、「私」の心は……。

YouTuber犬『みたらし』の日常
雪月風花
児童書・童話
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
飼い主のパパさんは、YouTubeで一発当てることを夢見て、先月仕事を辞めた。
まぁいい。
オレには関係ない。
エサさえ貰えればそれでいい。
これは、そんなオレの話だ。
本作は、他小説投稿サイト『小説家になろう』『カクヨム』さんでも投稿している、いわゆる多重投稿作品となっております。
無断転載作品ではありませんので、ご注意ください。

釣りガールレッドブルマ(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる