58 / 159
ヌーッティとアレクシ
3.秘密のビスケット
しおりを挟む
勢いよく部屋へ入って来たリュリュに、ヌーッティたちの視線が集まった。リュリュは3人に見つめられ、眉間に皺を寄せた。
「何が起こったというのです?」
リュリュはヌーッティたちへ歩み寄りながら尋ねた。
「真犯人はリュリュだヌー!」
アレクシ姿のヌーッティがリュリュを指さした。
「はあ?」
リュリュは訝る。トゥーリは足にしがみつくヌーッティを見やり、
「待って。まだ、リュリュがやったって証拠ないでしょ」
興奮するヌーッティを落ち着かせるような口調で、諭すように言った。
「わたくしには何がなんだかわかりませんわ」
「知っているさ。ぼくを大好きなきみが、ぼくをこんなわけのわからない小熊の妖精にすることはないって」
ヌーッティ姿のアレクシは、リュリュに向かってウインクをひとつ飛ばした。
「やめなさい、ヌーッティ。気持ち悪いですわ」
リュリュはアレクシのウインクを言葉で一刀両断した。
「ち、違うよ! ぼくだよ! ぼく!」
そうだと気づいて慌てたアレクシは自身を指さし、リュリュに目一杯主張した。だが、リュリュは首を傾げるだけであったが、
「それ、詐欺師っぽいから止めなよ、アレクシ」
トゥーリの言葉を聞いてはっとした表情になった。
「もしかして、ヌーッティがアレクシで、アレクシがヌーッティに⁈」
リュリュに交互に見られているヌーッティとアレクシは頷くと、振り返って窓のほうを見た。
「ベッドサイドテーブルに置いておいたビスケット……誰が食べたのですか?」
リュリュの質問で、トゥーリが足元にいるヌーッティを見た。
「まさか、また拾い食いしたの?」
アレクシ姿のヌーッティがびくりと体を震わせた。
「ヌーッティだけではありませんわ。ビスケットは2枚あったはずですわ」
リュリュとトゥーリとヌーッティは、そっぽを向けて口笛を吹いているヌーッティ姿のアレクシを見た。
「アレクシ?」
トゥーリの低い声でアレクシの口笛が止まる。
アレクシがゆっくりと顔をトゥーリへ向ける。
「えっと……いやぁ、あのぉ……」
顔が青ざめていくアレクシの肩をトゥーリはぽんっと叩くと、
「ちょっと廊下へ出て話そうか?」
「ごめん! ごめん! たしかに食べた! だから、その握った右手を下ろしてくれ!」
アレクシはあっさりと白状した。
トゥーリは怯えるアレクシからリュリュへ顔を向け直すと、
「そのビスケット、食べるとどうなるの?」
「食べた2人の人格が入れ替わりますわ」
リュリュは頬に手を当てて重い溜め息を吐いた。
「なんで、リュリュはそんなビスケットを作ったヌー?」
アレクシ姿のリュリュが尋ねると、リュリュの表情が強張った。トゥーリとヌーッティとアレクシがじっとリュリュを見据える。リュリュの目が泳ぐ。
「リュリュ?」
トゥーリの冷たい目がリュリュを捉える。
「えー……、本日は雪日和ですわねぇ……」
リュリュの声が静まった部屋に溶け消えた。
だが、沈黙に耐えきれなくなったリュリュが、
「ちょっとした出来心ですわ! ヌーッティとわたくしを入れ替えてみようかと……」
トゥーリに向かって謝った。
そんなリュリュに構うことなくヌーッティが笑みを浮かべた。
「世界一可愛いヌーになりたかったんだヌー!」
「違います」
リュリュが即座に否定した。
「わたくしは、ただ、トゥーリ様ともっと一緒にいたくて……」
トゥーリは右手を額に当てて、うな垂れた。
「それで、どうすれば元に戻るの?」
「わかりませんわ。調合したのはアキですもの」
「え⁈」
突然出てきたその名前に、トゥーリたちは驚きの様相を顔に出した。
そこへ、
「リュリュ。あの薬草どうした?」
アキが部屋へ入って来た。
驚きの表情のトゥーリたちは一斉にアキを見た。
あの薬草とは何か。ヌーッティとアレクシは元に戻ることができるのか。すべてはアキに委ねられたのであった。
「何が起こったというのです?」
リュリュはヌーッティたちへ歩み寄りながら尋ねた。
「真犯人はリュリュだヌー!」
アレクシ姿のヌーッティがリュリュを指さした。
「はあ?」
リュリュは訝る。トゥーリは足にしがみつくヌーッティを見やり、
「待って。まだ、リュリュがやったって証拠ないでしょ」
興奮するヌーッティを落ち着かせるような口調で、諭すように言った。
「わたくしには何がなんだかわかりませんわ」
「知っているさ。ぼくを大好きなきみが、ぼくをこんなわけのわからない小熊の妖精にすることはないって」
ヌーッティ姿のアレクシは、リュリュに向かってウインクをひとつ飛ばした。
「やめなさい、ヌーッティ。気持ち悪いですわ」
リュリュはアレクシのウインクを言葉で一刀両断した。
「ち、違うよ! ぼくだよ! ぼく!」
そうだと気づいて慌てたアレクシは自身を指さし、リュリュに目一杯主張した。だが、リュリュは首を傾げるだけであったが、
「それ、詐欺師っぽいから止めなよ、アレクシ」
トゥーリの言葉を聞いてはっとした表情になった。
「もしかして、ヌーッティがアレクシで、アレクシがヌーッティに⁈」
リュリュに交互に見られているヌーッティとアレクシは頷くと、振り返って窓のほうを見た。
「ベッドサイドテーブルに置いておいたビスケット……誰が食べたのですか?」
リュリュの質問で、トゥーリが足元にいるヌーッティを見た。
「まさか、また拾い食いしたの?」
アレクシ姿のヌーッティがびくりと体を震わせた。
「ヌーッティだけではありませんわ。ビスケットは2枚あったはずですわ」
リュリュとトゥーリとヌーッティは、そっぽを向けて口笛を吹いているヌーッティ姿のアレクシを見た。
「アレクシ?」
トゥーリの低い声でアレクシの口笛が止まる。
アレクシがゆっくりと顔をトゥーリへ向ける。
「えっと……いやぁ、あのぉ……」
顔が青ざめていくアレクシの肩をトゥーリはぽんっと叩くと、
「ちょっと廊下へ出て話そうか?」
「ごめん! ごめん! たしかに食べた! だから、その握った右手を下ろしてくれ!」
アレクシはあっさりと白状した。
トゥーリは怯えるアレクシからリュリュへ顔を向け直すと、
「そのビスケット、食べるとどうなるの?」
「食べた2人の人格が入れ替わりますわ」
リュリュは頬に手を当てて重い溜め息を吐いた。
「なんで、リュリュはそんなビスケットを作ったヌー?」
アレクシ姿のリュリュが尋ねると、リュリュの表情が強張った。トゥーリとヌーッティとアレクシがじっとリュリュを見据える。リュリュの目が泳ぐ。
「リュリュ?」
トゥーリの冷たい目がリュリュを捉える。
「えー……、本日は雪日和ですわねぇ……」
リュリュの声が静まった部屋に溶け消えた。
だが、沈黙に耐えきれなくなったリュリュが、
「ちょっとした出来心ですわ! ヌーッティとわたくしを入れ替えてみようかと……」
トゥーリに向かって謝った。
そんなリュリュに構うことなくヌーッティが笑みを浮かべた。
「世界一可愛いヌーになりたかったんだヌー!」
「違います」
リュリュが即座に否定した。
「わたくしは、ただ、トゥーリ様ともっと一緒にいたくて……」
トゥーリは右手を額に当てて、うな垂れた。
「それで、どうすれば元に戻るの?」
「わかりませんわ。調合したのはアキですもの」
「え⁈」
突然出てきたその名前に、トゥーリたちは驚きの様相を顔に出した。
そこへ、
「リュリュ。あの薬草どうした?」
アキが部屋へ入って来た。
驚きの表情のトゥーリたちは一斉にアキを見た。
あの薬草とは何か。ヌーッティとアレクシは元に戻ることができるのか。すべてはアキに委ねられたのであった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
野良の陰陽師少女♪
健野屋文乃
児童書・童話
吾が名は、野良のあき!ゆきちゃんの心の友にして最強の式神使い?!
いつもは超名門女子小学校に通っている女の子のあき。
不可思議な式神たちと、心の友、引き籠り中の少女ゆきちゃんとの物語は進行中♪
魔法少女はまだ翔べない
東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます!
中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。
キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。
駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。
そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。
果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも?
表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
猫のお知らせ屋
もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。
人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです!
そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします
火星だよ修学旅行!
伊佐坂 風呂糸
児童書・童話
火星まで修学旅行にきたスイちゃん。どうも皆とはぐれて、独りぼっちになったらしい。困っていると、三回だけ助けてもらえる謎のボタンを宇宙服の腕に発見する。
次々と迫り来るピンチ!
四人の心強い味方と仲良くなったスイちゃんは力を合わせ、数々の困難を乗り越えて、修学旅行のメインイベントであったオリンポス山の登頂を成功させる事はできるのでしょうか。
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる