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ヌーッティとアレクシ
2.鏡の中のヌーッティはアレクシ
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鏡の中のアレクシの顔から血の気が引いた。
「ヌーじゃないヌー! いつもの可愛いヌーはなんで隣にいるヌー⁈」
アレクシ姿のヌーッティは鏡に向かって問いかけた。鏡に近づいてみても、離れてみても、眉をひそめてみても、頬をむにゅっと押しやってみても、アレクシが変わるだけで、隣のヌーッティに変化は起こらなかった。
「どうしてヌーがアレクシなんだヌー⁈ ヌーはこんなにひょろっこい体じゃないヌー! もっとたくましいヌー!」
「ぼくだってこんなぶよぶよの体じゃないさ! あああ、どうしてヌーッティになってしまったんだ! いつもの凛々しい姿を返してくれ!」
ヌーッティ姿のアレクシはその場に崩れ落ち、悲観に暮れている。
「アレクシはそんなに凛々しくないヌー。勘違いだヌー」
床にうずくまるアレクシには、ヌーッティはあっけらかんと指摘した。
涙を浮かべているアレクシはヌーッティを睨みつける。
「きみのほうこそ甚だしい勘違いをしているだろ。どこが世界一可愛い小熊なのさ! ただの丸い小熊のくせに!」
その言葉を聞いて、アレクシ姿のヌーッティは目を釣り上げて怒った。
「みにくい嫉妬だヌー! 可愛いヌーに嫉妬するのは仕方のないことだけど、酷い言いようだヌー! そんなこと言うと、アレクシの自慢のおひげを引っ張っちゃうヌー!」
ヌーッティは言い終えるが早いか、アレクシの細長い髭を引っ張った。
「痛いヌー!」
それもそのはず、今のヌーッティはアレクシの姿になっているわけだから、ヌーッティがヌーッティを引っ張るのと同じであり、もちろん、痛みもヌーッティへ返ってくる。
そんな痛がるヌーッティを横目にアレクシは溜め息をひとつ吐くと、
「ともかくだ。この入れ替わりがなぜ起きたのか、その原因を探らなければ……!」
そこに、軋んだ音をたててドアの開く音がヌーッティとアレクシの耳に入った。
「ヌーッティ? アレクシ? どうかしたの?」
開いたドアからトゥーリが部屋へ入ってきた。
アレクシ姿のヌーッティはドアのとことにいるトゥーリを見ると、
「トゥーリ! 大変だヌー!」
助けを乞う声でトゥーリのもとへ駆け寄った。
しかし、
「アレクシやめて。気持ち悪い」
トゥーリは言うより先にアレクシ姿のヌーッティを突っぱねた。
突っ張られたヌーッティは体のバランスを崩し、尻もちをつくと、
「違うヌー! ヌーはアレクシになっちゃったんだヌー! 助けて欲しいヌー!」
トゥーリの足にしがみついた。
「はぁ? 何言ってるの? だってヌーッティは……」
トゥーリは顔を上げると、歩み寄って来るヌーッティに気がついた。いつもとは違う雰囲気をまとい歩いているヌーッティと、泣きじゃくりながら足にしがみつくアレクシを交互に見て、
「……え? 嘘でしょ?」
顔が青ざめていった。
トゥーリたちのもとに来たヌーッティ姿のアレクシは、
「嘘じゃないさ。ぼくがヌーッティで、ヌーッティがアレクシになっていたんだ」
憂鬱な表情を湛えて、トゥーリに答えた。
トゥーリは屈み込むと、
「ごめんね、ヌーッティ! アレクシだと思って、ちょっと力込めちゃった!」
泣きわめくアレクシ姿のヌーッティの頭を撫でた。
ヌーッティ姿のアレクシは、トゥーリの発言にやや不満を抱いたが、
「それはさて置き、この事態をトゥーリも知らないということは、ここにいるぼくたち以外の誰かの仕業とみて間違いなさそう……」
アレクシは言葉を切った。
気づいたからである。
今、この場にいなく、入れ替わりをさせそうな人物を。
「アキじゃないヌー。アキはこんなことしないヌー」
そう、つまりは、
「……リュリュ」
トゥーリとアレクシの声が重なった。
ヌーッティ姿のアレクシは大きく息を吸って、
「リュリュ! トゥーリが大変だヌー!」
ヌーッティの喋り方を真似て、雪の精霊の名を呼んだ。
同時に、窓が勢いよく開き、わずかな隙間をすり抜けて一匹の真っ白な体のオコジョが部屋へ入って来た。
「何事ですか⁈」
ヌーッティたちの前にリュリュが現れた。
役者は揃った。
これから、ヌーッティとアレクシを入れ替えた犯人探しが始まるのであった。
「ヌーじゃないヌー! いつもの可愛いヌーはなんで隣にいるヌー⁈」
アレクシ姿のヌーッティは鏡に向かって問いかけた。鏡に近づいてみても、離れてみても、眉をひそめてみても、頬をむにゅっと押しやってみても、アレクシが変わるだけで、隣のヌーッティに変化は起こらなかった。
「どうしてヌーがアレクシなんだヌー⁈ ヌーはこんなにひょろっこい体じゃないヌー! もっとたくましいヌー!」
「ぼくだってこんなぶよぶよの体じゃないさ! あああ、どうしてヌーッティになってしまったんだ! いつもの凛々しい姿を返してくれ!」
ヌーッティ姿のアレクシはその場に崩れ落ち、悲観に暮れている。
「アレクシはそんなに凛々しくないヌー。勘違いだヌー」
床にうずくまるアレクシには、ヌーッティはあっけらかんと指摘した。
涙を浮かべているアレクシはヌーッティを睨みつける。
「きみのほうこそ甚だしい勘違いをしているだろ。どこが世界一可愛い小熊なのさ! ただの丸い小熊のくせに!」
その言葉を聞いて、アレクシ姿のヌーッティは目を釣り上げて怒った。
「みにくい嫉妬だヌー! 可愛いヌーに嫉妬するのは仕方のないことだけど、酷い言いようだヌー! そんなこと言うと、アレクシの自慢のおひげを引っ張っちゃうヌー!」
ヌーッティは言い終えるが早いか、アレクシの細長い髭を引っ張った。
「痛いヌー!」
それもそのはず、今のヌーッティはアレクシの姿になっているわけだから、ヌーッティがヌーッティを引っ張るのと同じであり、もちろん、痛みもヌーッティへ返ってくる。
そんな痛がるヌーッティを横目にアレクシは溜め息をひとつ吐くと、
「ともかくだ。この入れ替わりがなぜ起きたのか、その原因を探らなければ……!」
そこに、軋んだ音をたててドアの開く音がヌーッティとアレクシの耳に入った。
「ヌーッティ? アレクシ? どうかしたの?」
開いたドアからトゥーリが部屋へ入ってきた。
アレクシ姿のヌーッティはドアのとことにいるトゥーリを見ると、
「トゥーリ! 大変だヌー!」
助けを乞う声でトゥーリのもとへ駆け寄った。
しかし、
「アレクシやめて。気持ち悪い」
トゥーリは言うより先にアレクシ姿のヌーッティを突っぱねた。
突っ張られたヌーッティは体のバランスを崩し、尻もちをつくと、
「違うヌー! ヌーはアレクシになっちゃったんだヌー! 助けて欲しいヌー!」
トゥーリの足にしがみついた。
「はぁ? 何言ってるの? だってヌーッティは……」
トゥーリは顔を上げると、歩み寄って来るヌーッティに気がついた。いつもとは違う雰囲気をまとい歩いているヌーッティと、泣きじゃくりながら足にしがみつくアレクシを交互に見て、
「……え? 嘘でしょ?」
顔が青ざめていった。
トゥーリたちのもとに来たヌーッティ姿のアレクシは、
「嘘じゃないさ。ぼくがヌーッティで、ヌーッティがアレクシになっていたんだ」
憂鬱な表情を湛えて、トゥーリに答えた。
トゥーリは屈み込むと、
「ごめんね、ヌーッティ! アレクシだと思って、ちょっと力込めちゃった!」
泣きわめくアレクシ姿のヌーッティの頭を撫でた。
ヌーッティ姿のアレクシは、トゥーリの発言にやや不満を抱いたが、
「それはさて置き、この事態をトゥーリも知らないということは、ここにいるぼくたち以外の誰かの仕業とみて間違いなさそう……」
アレクシは言葉を切った。
気づいたからである。
今、この場にいなく、入れ替わりをさせそうな人物を。
「アキじゃないヌー。アキはこんなことしないヌー」
そう、つまりは、
「……リュリュ」
トゥーリとアレクシの声が重なった。
ヌーッティ姿のアレクシは大きく息を吸って、
「リュリュ! トゥーリが大変だヌー!」
ヌーッティの喋り方を真似て、雪の精霊の名を呼んだ。
同時に、窓が勢いよく開き、わずかな隙間をすり抜けて一匹の真っ白な体のオコジョが部屋へ入って来た。
「何事ですか⁈」
ヌーッティたちの前にリュリュが現れた。
役者は揃った。
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