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食べかけのビスケット

1.はじまりのビスケット

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 ある日曜日の昼下がり。
 アキの部屋で食べかけのビスケットが1枚見つかった。
 誰が、いつ、どうして食べたのかはわからない。 ただ、たった1枚のビスケットが一口だけかじられてアキの自室の勉強机の上に置かれていたのであった。
 ビスケットの食べかすは勉強机の上と下に少し落ちているだけで、食い散らかされていたわけでもなかった。また、部屋には誰もおらず、窓と部屋のドアは閉ざされていた。さらに、部屋にある大きな本棚からは、本が数冊床に落とされており、床に置かれたクッションには小動物が爪で引っ掻いたような跡があった。
 今回は、例の小熊の妖精の仕業ではない可能性が高まった。だからこそ、彼ら4人全員が疑われた。
 それゆえに、究明して欲しいのである。
 誰がビスケットを食べたのかを。

 次から始まる話は、小熊の妖精、小人トントゥ、風の精霊と、雪の精霊の証言である。セオリー通りならば、今回も小熊の妖精の犯行が濃厚ではあるが、彼以外の線も濃厚であった。ゆえに、小熊の妖精はこのように主張した。
「ヌーは悪くないヌー!」
 しかしながら、この言葉が出るときは、大抵、この小熊がやらかしているのが常であった。だが、小熊の妖精はこうも主張した。
「ヌーだったら全部食べちゃうヌー!」
 まさに、である。彼ならばすべて食べるはずでなのであった。つまり、他の人物の犯行と言えなくもないのである。
 どうか、探し出して欲しい。
 4人の証言から、真犯人を。
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