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ヌーッティのイメチェン
1.ヌーッティの企み
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ある暖かい春の日の午後。
明るく眩い明かりがカーテンの開けられた窓を通して2階の角部屋に差し込んでいた。
その部屋の壁面は書棚で覆われており、棚の中には大小様々な本で目一杯埋め尽くされていた。本の大半は「Mytologia」と銘打たれた分厚く古びた書籍に「Suomen kansan」から始まる書籍群、「Folkloric」「Anthological」と冠された英文献や「Kalevala」という文字が書かれた書籍であった。
また、棚に収まりきらない本は書棚の下、床の上に乱雑に積まれている。そして、部屋の窓寄りには大きな木製のデスクが鎮座している。
重厚な造りのデスクに上に一冊の雑誌が置かれていた。その雑誌のタイトルは、本棚に収められている書籍の表題とはやや趣きが異なっていた。雑誌の表紙には中年の男性がキメ顔で載っており、「Tule kauniiksi karhuksi!」と書かれていた。
「『かっこいいくまになれ』? これ、なんだヌー?」
雑誌のもとに立つ小熊の妖精ヌーッティはタイトルを口に出して首を捻った。
ヌーッティはしゃがみ込むと表紙を一枚めくった。それからページをぱらぱらとめくり、ヌーッティは雑誌を斜め読みし始めた。すると、あるページでヌーッティの手がぴたりと止まる。
「今年のイケメンはこの髪型でキマる?」
紙面の見出しを音読したヌーッティの目が輝いた。ヌーッティはさらに一枚めくると、今度はゆっくりと読みだした。
ページをめくる度に様々な男性が色々な髪型でポーズをとっている写真がヌーッティの目に映る。
「アキのおじーちゃんはこういうのよく読んで、かっこよくしてるというわけだヌー」
そう独り言ちたヌーッティは、アキの祖父の部屋の机に置かれていた雑誌を、好奇を湛えた表情で読み進める。
そして、あるページの写真にヌーッティは強い関心を惹かれた。
「な、なんだヌー⁈ このかっこいい髪型は! ヌーもやってみたいヌー! どうしたら……あ! そうだ! いいこと思いついたヌー!」
ヌーッティは目をさんらんと輝かせ立ち上がると、助走をつけて机の上を走り、窓へ向かって跳躍した。だが、運動神経の鈍いヌーッティが一跳躍で窓に到達することができるはずもなく、窓まであとわずかというところで宙に浮く体が落下し始めた。
しかし、ヌーッティは咄嗟にカーテンを両手で掴んで落下を防いだ。そうして、カーテン伝いに窓へ無事に着いた。
窓に着いたヌーッティは窓硝子をどんどん叩き、
「アレクシー? アレクシいるヌー?」
友人である風の精霊アレクシを呼んだ。
同時にカーテンがふわりと揺れた。
「何の用だい?」
片手にブルーベリーを持った赤リス姿の風の精霊アレクシがヌーッティの背後に現れた。
声を聞いてヌーッティは振り返ると、
「かっこよさを追求しているアレクシに相談したいことがあるヌー!」
意気揚々とアレクシに頼んだ。
「イケリスの僕に?」
アレクシの言葉にヌーッティは強く頷いて答える。それを見てアレクシはほくそ笑む。
「いいよ。それで相談っていうのは?」
ヌーッティは満面の笑みで口を開ける。
こうして、ヌーッティの新たなる企みが始まったのである。
明るく眩い明かりがカーテンの開けられた窓を通して2階の角部屋に差し込んでいた。
その部屋の壁面は書棚で覆われており、棚の中には大小様々な本で目一杯埋め尽くされていた。本の大半は「Mytologia」と銘打たれた分厚く古びた書籍に「Suomen kansan」から始まる書籍群、「Folkloric」「Anthological」と冠された英文献や「Kalevala」という文字が書かれた書籍であった。
また、棚に収まりきらない本は書棚の下、床の上に乱雑に積まれている。そして、部屋の窓寄りには大きな木製のデスクが鎮座している。
重厚な造りのデスクに上に一冊の雑誌が置かれていた。その雑誌のタイトルは、本棚に収められている書籍の表題とはやや趣きが異なっていた。雑誌の表紙には中年の男性がキメ顔で載っており、「Tule kauniiksi karhuksi!」と書かれていた。
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雑誌のもとに立つ小熊の妖精ヌーッティはタイトルを口に出して首を捻った。
ヌーッティはしゃがみ込むと表紙を一枚めくった。それからページをぱらぱらとめくり、ヌーッティは雑誌を斜め読みし始めた。すると、あるページでヌーッティの手がぴたりと止まる。
「今年のイケメンはこの髪型でキマる?」
紙面の見出しを音読したヌーッティの目が輝いた。ヌーッティはさらに一枚めくると、今度はゆっくりと読みだした。
ページをめくる度に様々な男性が色々な髪型でポーズをとっている写真がヌーッティの目に映る。
「アキのおじーちゃんはこういうのよく読んで、かっこよくしてるというわけだヌー」
そう独り言ちたヌーッティは、アキの祖父の部屋の机に置かれていた雑誌を、好奇を湛えた表情で読み進める。
そして、あるページの写真にヌーッティは強い関心を惹かれた。
「な、なんだヌー⁈ このかっこいい髪型は! ヌーもやってみたいヌー! どうしたら……あ! そうだ! いいこと思いついたヌー!」
ヌーッティは目をさんらんと輝かせ立ち上がると、助走をつけて机の上を走り、窓へ向かって跳躍した。だが、運動神経の鈍いヌーッティが一跳躍で窓に到達することができるはずもなく、窓まであとわずかというところで宙に浮く体が落下し始めた。
しかし、ヌーッティは咄嗟にカーテンを両手で掴んで落下を防いだ。そうして、カーテン伝いに窓へ無事に着いた。
窓に着いたヌーッティは窓硝子をどんどん叩き、
「アレクシー? アレクシいるヌー?」
友人である風の精霊アレクシを呼んだ。
同時にカーテンがふわりと揺れた。
「何の用だい?」
片手にブルーベリーを持った赤リス姿の風の精霊アレクシがヌーッティの背後に現れた。
声を聞いてヌーッティは振り返ると、
「かっこよさを追求しているアレクシに相談したいことがあるヌー!」
意気揚々とアレクシに頼んだ。
「イケリスの僕に?」
アレクシの言葉にヌーッティは強く頷いて答える。それを見てアレクシはほくそ笑む。
「いいよ。それで相談っていうのは?」
ヌーッティは満面の笑みで口を開ける。
こうして、ヌーッティの新たなる企みが始まったのである。
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