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欲望のトライアングル
2.足跡は誰だ?
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リュリュとヌーッティのチョコレート作りは、リュリュが寝床にしているアキの自宅の地下一階、そこにあるサウナ室横のクローゼットルームで行われることとなった。ここならばトゥーリが来ることも滅多にないからであった。
クローゼットルームの奥の奥、リュリュとヌーッティの2人はいそいそと動いていた。
「さあ、チョコレート作りに取りかかりましょう!」
意気揚々とリュリュが棚から自身の身長より大きな橙色のキャニスターを取り、蓋を開けた。手を入れて2粒の黒くて丸いラクリッツを取り出した。
「チョコレートはどこだヌー?」
ヌーッティはきょろきょろ辺りを見回した。
「1番下の棚にありますわ」
言われてヌーッティは爪先立ちで棚を見た。けれどもチョコレートはどこにもなかった。あるのは畳まれて積まれているタオルだけであった。
「ないヌー。棚にあるタオルに挟んで隠したヌー?」
ヌーッティはリュリュに尋ねた。
「そんなヌーッティみたいなことをするわけがないでしょう。ちょっといいかしら」
リュリュに言われてヌーッティは棚から離れる。ヌーッティと入れ替わりでリュリュが棚の前に来ると、手を伸ばしてタオルを避けて探した。
リュリュは眉をひそめた。
「おかしいですわね。確かにここに置いておいたはずですわ」
がさがさと探しつつリュリュは考えを巡らせた。12インチのラップトップパソコンと同じ大きさの一枚のチョコレート、そうそう見当たらなくなるわけがないと考えた。しかし、リュリュは一つの疑念を抱いた。すなわち、誰かに食べられたのではないかと。
その時であった。ふと視線を下げたリュリュの目に、床に足跡のようなものを発見した。はっと顔を上げてリュリュはヌーッティを見た。そして、もう一度足跡を見た。足跡は小さく細いものであった。
「ヌーッティ、手を借りてもよろしいかしら?」
リュリュはヌーッティの返答を待たずに手を掴むと、床の足跡の横にヌーッティの手を置いた。
「これはヌーの手のあとじゃないヌー」
その足跡は、明らかにヌーッティの手と大きさが違っていたし、ヌーッティの肉球の形とも異なっていた。
そこへ、がたん! と何かが当たった物音が響いた。
リュリュは振り向いた。
先端が黒っぽくなっている赤毛の尻尾を視界に捉えた。
「お待ちなさい!」
リュリュは言いながらヌーッティの手を引っ張ってクローゼットを出る。
談話室を横断している小さな影があった。
リュリュはヌーッティの手を離す。
勢いのついたヌーッティが先行する。
リュリュが走り、
「行け! ヌーッティ!」
叫ぶと同時にヌーッティのお尻に蹴りを入れる。
ヌーッティがリュリュの蹴りで弾丸のように宙を飛ぶ。
「ヌーアタックだヌー!」
そして、逃げる影にヌーッティが体当たりをかました。
「捕まえた……ヌー⁈」
取り押さえたものはヌーッティのよく知るものであった。
リュリュがヌーッティのもとへ駆け寄ると、
「アレクシ⁈」
リュリュとヌーッティの声が重なった。
ヌーッティが取り押さえたのは、赤リス姿の風の精霊アレクシであった。
クローゼットルームの奥の奥、リュリュとヌーッティの2人はいそいそと動いていた。
「さあ、チョコレート作りに取りかかりましょう!」
意気揚々とリュリュが棚から自身の身長より大きな橙色のキャニスターを取り、蓋を開けた。手を入れて2粒の黒くて丸いラクリッツを取り出した。
「チョコレートはどこだヌー?」
ヌーッティはきょろきょろ辺りを見回した。
「1番下の棚にありますわ」
言われてヌーッティは爪先立ちで棚を見た。けれどもチョコレートはどこにもなかった。あるのは畳まれて積まれているタオルだけであった。
「ないヌー。棚にあるタオルに挟んで隠したヌー?」
ヌーッティはリュリュに尋ねた。
「そんなヌーッティみたいなことをするわけがないでしょう。ちょっといいかしら」
リュリュに言われてヌーッティは棚から離れる。ヌーッティと入れ替わりでリュリュが棚の前に来ると、手を伸ばしてタオルを避けて探した。
リュリュは眉をひそめた。
「おかしいですわね。確かにここに置いておいたはずですわ」
がさがさと探しつつリュリュは考えを巡らせた。12インチのラップトップパソコンと同じ大きさの一枚のチョコレート、そうそう見当たらなくなるわけがないと考えた。しかし、リュリュは一つの疑念を抱いた。すなわち、誰かに食べられたのではないかと。
その時であった。ふと視線を下げたリュリュの目に、床に足跡のようなものを発見した。はっと顔を上げてリュリュはヌーッティを見た。そして、もう一度足跡を見た。足跡は小さく細いものであった。
「ヌーッティ、手を借りてもよろしいかしら?」
リュリュはヌーッティの返答を待たずに手を掴むと、床の足跡の横にヌーッティの手を置いた。
「これはヌーの手のあとじゃないヌー」
その足跡は、明らかにヌーッティの手と大きさが違っていたし、ヌーッティの肉球の形とも異なっていた。
そこへ、がたん! と何かが当たった物音が響いた。
リュリュは振り向いた。
先端が黒っぽくなっている赤毛の尻尾を視界に捉えた。
「お待ちなさい!」
リュリュは言いながらヌーッティの手を引っ張ってクローゼットを出る。
談話室を横断している小さな影があった。
リュリュはヌーッティの手を離す。
勢いのついたヌーッティが先行する。
リュリュが走り、
「行け! ヌーッティ!」
叫ぶと同時にヌーッティのお尻に蹴りを入れる。
ヌーッティがリュリュの蹴りで弾丸のように宙を飛ぶ。
「ヌーアタックだヌー!」
そして、逃げる影にヌーッティが体当たりをかました。
「捕まえた……ヌー⁈」
取り押さえたものはヌーッティのよく知るものであった。
リュリュがヌーッティのもとへ駆け寄ると、
「アレクシ⁈」
リュリュとヌーッティの声が重なった。
ヌーッティが取り押さえたのは、赤リス姿の風の精霊アレクシであった。
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