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探偵ヌーッティ
3.探偵ヌーッティ
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アキが住まう祖父母の邸宅の地下には暖炉のある入浴用のタオルや小物がしまってあるクローゼットとサウナ室と浴室がある。一階から地下へ続く階段に落ちている羽根の跡を辿って、ヌーッティは地下へとやって来た。
「犯人はどこだヌー!」
鼻息荒いヌーッティは地下に着くと部屋の電気を点け、周囲を見回した。そこには大量の羽根が散乱していた。左側のクローゼットのほうにも、右側のサウナと浴室のほうにも羽根の跡は続いており、ヌーッティどちらへ行くべきかで迷った。
そこでヌーッティは右と左に手を振って、
「どちらにしようかな、ミエリッキのいうとおり!」
という手段をとり、ヌーッティの手は左側を差した。
「左だヌー! クローゼットのほうだヌー!」
ヌーッティは落ちている羽根を足に纏わせ、あるいは走る勢いで羽根を舞い上がらせてへ急いだ。
駆ける勢いそのままにドアノブへジャンプし、ドアノブを下げてドアを引き開けた。
ヌーッティは床に飛び降りると半分開いたドアを全開にし、
「出てくるヌー! かんねんするヌー! カツ丼はないヌー!」
暗いクローゼットにヌーッティの声が響いただけであった。
「ヌーッティ⁈」
そこへ、アキを連れたトゥーリたちがやって来た。
「何なんだよ、これ」
アキは床へトゥーリたちを降ろしながら、嫌な予感を孕ませた口調でぼやいた。
「真犯人のしわざヌー! この前会った白鳥が真犯人だヌー! ヌーッティを罠にはめようとしたんだヌー!」
ヌーッティはアキに向かって力説した。
「白鳥?」
不可解な面持ちになったアキにトゥーリとアレクシがここまでの経緯を説明した。
「ようするに、その白鳥がヌーッティへ復讐をするべくこんなことをしたと?」
ヌーッティは力一杯頷いた。
「そんなわけないだろ? アレクシの推測にもヌーッティの説明も矛盾する以前に筋が通ってなくて破綻してるって」
アキの言葉に頷いたのはトゥーリとリュリュだけであった。
「まだわかんないヌー! サウナ室はまだ見てないヌー!」
ヌーッティは自身の潔白を証明するためにサウナ室へ走った。浴室のドアを開けると真っ暗なサウナ室から蒸気が出ているのが視認できた。
ヌーッティの後に続いて浴室へやって来たアキたちも蒸気に気付いた。
アキが浴室とサウナ室の電気を点ける。
ぱっと明るくなった浴室ではあったが、サウナ室のほうは蒸気がもんもんとしていてよく見えなかった。
「誰かいるのか?」
言いながらアキは一歩サウナ室へ近づく。
がたん! ばっさばっさ。ばたん!
サウナ室の中から異音が聞こえた。
その音はその場にいる全員に聞こえたほどの大きさであった。
明らかな異音にヌーッティだけでなくアキやトゥーリたちも警戒し始める。
トゥーリはポケットから透明な小石を取り出し、アレクシに視線を送る。それに気づいたアレクシはトゥーリへ頷いて応える。
「開けるぞ」
アキはヌーッティやトゥーリたちに聞こえるだけの声量で声をかけた。
アキの手がドアノブにかかり、
「出てくるヌー! 犯人は完全に包囲されてるヌー!」
アキがドアを開けたのと同時に、アキの足元にいるヌーッティが叫んだ。
蒸気がヌーッティたちに向かって、空気の流れに沿ってドアから溢れ出てくる。
ヌーッティたちの視界が完全に塞がった。
その時であった。
トゥーリがサウナ室に向かって小石を投げ放ったのは。
「アレクシ!」
トゥーリが呼びかけた。
アレクシの歌はもう完成していた。
Herätän Ahtoa Ahtolasta
ーー水の主アハトを彼の地より呼び覚まさん
Pyydän armoisimmalta
ぼくは求めん、最も慈悲ある者へと
Rukoilen, että hän toisi vettä
ぼくは願う、アハトに水を生じさせよと
Pulpauttaisi Ahtolasta
水は湧き出でる。アハトの住処たるアハトラより
アレクシの詩に応えてトゥーリが放った小石が砕け散る。
砕けた小石は雲を生み出しサウナ室の天井に溜まる。同時に勢いよく天井の雲から水が雨の様に降った。
「冷たい! 冷たい! 冷たい!」
冷たい水によってサウナ室の蒸気が徐々に薄らいでいく。すると、サウナ室の中に一つの大きな黒い影が動いているのが目で確認できた。
大きな翼をばたつかせ、片翼にはヴィヒタと呼ばれる白樺の若枝を束ねたサウナの必需品を持った、アキの肩までゆうに届く体長の白鳥が1匹いた。
「犯人はどこだヌー!」
鼻息荒いヌーッティは地下に着くと部屋の電気を点け、周囲を見回した。そこには大量の羽根が散乱していた。左側のクローゼットのほうにも、右側のサウナと浴室のほうにも羽根の跡は続いており、ヌーッティどちらへ行くべきかで迷った。
そこでヌーッティは右と左に手を振って、
「どちらにしようかな、ミエリッキのいうとおり!」
という手段をとり、ヌーッティの手は左側を差した。
「左だヌー! クローゼットのほうだヌー!」
ヌーッティは落ちている羽根を足に纏わせ、あるいは走る勢いで羽根を舞い上がらせてへ急いだ。
駆ける勢いそのままにドアノブへジャンプし、ドアノブを下げてドアを引き開けた。
ヌーッティは床に飛び降りると半分開いたドアを全開にし、
「出てくるヌー! かんねんするヌー! カツ丼はないヌー!」
暗いクローゼットにヌーッティの声が響いただけであった。
「ヌーッティ⁈」
そこへ、アキを連れたトゥーリたちがやって来た。
「何なんだよ、これ」
アキは床へトゥーリたちを降ろしながら、嫌な予感を孕ませた口調でぼやいた。
「真犯人のしわざヌー! この前会った白鳥が真犯人だヌー! ヌーッティを罠にはめようとしたんだヌー!」
ヌーッティはアキに向かって力説した。
「白鳥?」
不可解な面持ちになったアキにトゥーリとアレクシがここまでの経緯を説明した。
「ようするに、その白鳥がヌーッティへ復讐をするべくこんなことをしたと?」
ヌーッティは力一杯頷いた。
「そんなわけないだろ? アレクシの推測にもヌーッティの説明も矛盾する以前に筋が通ってなくて破綻してるって」
アキの言葉に頷いたのはトゥーリとリュリュだけであった。
「まだわかんないヌー! サウナ室はまだ見てないヌー!」
ヌーッティは自身の潔白を証明するためにサウナ室へ走った。浴室のドアを開けると真っ暗なサウナ室から蒸気が出ているのが視認できた。
ヌーッティの後に続いて浴室へやって来たアキたちも蒸気に気付いた。
アキが浴室とサウナ室の電気を点ける。
ぱっと明るくなった浴室ではあったが、サウナ室のほうは蒸気がもんもんとしていてよく見えなかった。
「誰かいるのか?」
言いながらアキは一歩サウナ室へ近づく。
がたん! ばっさばっさ。ばたん!
サウナ室の中から異音が聞こえた。
その音はその場にいる全員に聞こえたほどの大きさであった。
明らかな異音にヌーッティだけでなくアキやトゥーリたちも警戒し始める。
トゥーリはポケットから透明な小石を取り出し、アレクシに視線を送る。それに気づいたアレクシはトゥーリへ頷いて応える。
「開けるぞ」
アキはヌーッティやトゥーリたちに聞こえるだけの声量で声をかけた。
アキの手がドアノブにかかり、
「出てくるヌー! 犯人は完全に包囲されてるヌー!」
アキがドアを開けたのと同時に、アキの足元にいるヌーッティが叫んだ。
蒸気がヌーッティたちに向かって、空気の流れに沿ってドアから溢れ出てくる。
ヌーッティたちの視界が完全に塞がった。
その時であった。
トゥーリがサウナ室に向かって小石を投げ放ったのは。
「アレクシ!」
トゥーリが呼びかけた。
アレクシの歌はもう完成していた。
Herätän Ahtoa Ahtolasta
ーー水の主アハトを彼の地より呼び覚まさん
Pyydän armoisimmalta
ぼくは求めん、最も慈悲ある者へと
Rukoilen, että hän toisi vettä
ぼくは願う、アハトに水を生じさせよと
Pulpauttaisi Ahtolasta
水は湧き出でる。アハトの住処たるアハトラより
アレクシの詩に応えてトゥーリが放った小石が砕け散る。
砕けた小石は雲を生み出しサウナ室の天井に溜まる。同時に勢いよく天井の雲から水が雨の様に降った。
「冷たい! 冷たい! 冷たい!」
冷たい水によってサウナ室の蒸気が徐々に薄らいでいく。すると、サウナ室の中に一つの大きな黒い影が動いているのが目で確認できた。
大きな翼をばたつかせ、片翼にはヴィヒタと呼ばれる白樺の若枝を束ねたサウナの必需品を持った、アキの肩までゆうに届く体長の白鳥が1匹いた。
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