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ヌーッティと魔法のティーポット
4.ヌーッティと恐怖の大魔王
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「なんでハンナがここにいるヌー?」
怯えた形相でヌーッティはハンナを見据える。
「何でって、今日みんなでクリスマスパーティをいつするか話し合うので来たんだよ。それより、何かわたしだけ除け者みたいに言って、酷いよヌーッティ」
アキと同じ高校に通う友人のハンナは頬を膨らませながらカウンターに沿って歩き、アキや健、ヌーッティたちのいるテーブルへやって来た。
「ちょうどいいところに来た! ハンナ、手を貸して!」
アキはハンナを見つめた。
ハンナは手袋を取りコートのポケットに入れ、マフラーとコートを脱ぐと空いている席の背もたれに掛けた。
「もしかして、ヌーッティがティーポットに入っていることと関係あるの?」
ハンナの言葉にアキは頷き、これまでの仔細を話した。
「なんだ。そんなことか。もっと深刻な話かと思ったじゃん。わたしに任せて。カウンターをちょっと借りるね」
そう言うとハンナはティーポットを両手で持ちカウンターの中へと入っていく。
アキと健はハンナが何をするのかが気になりカウンター越しに、シンクの前に立つハンナとハンナに抱えられたヌーッティポットをまじまじと見る。カウンターの台に腰掛けているトゥーリもくるりと身体の向きを変えてハンナとヌーッティに視線を移す。
ハンナはシンクの中にヌーッティ入りのティーポットをそっと置いた。
がくがく震えているヌーッティは視線を上げてハンナを見る。
「痛くしないヌー? 怖いことしないヌー?」
ハンナは怯えているヌーッティに笑顔を向ける。
「大丈夫だよ。そんなことしないよ」
ハンナはセーターの袖を捲し上げる。
「なんで腕まくりしてるヌー?」
首を小刻みに横に振るヌーッティ。
「ちょっと冷たくてぬるぬるするけど、すぐに楽になるからね」
ハンナは言いながら食器用洗剤のボトルを手に取る。
「うそだヌー! 同じことアキも言ったヌー!」
ヌーッティは上半身を捩らせ抜け出し逃げようと試みる。だが、アキや健が引っ張っても引き抜けなかったヌーッティの身体を、ヌーッティ自身が彼自身の力だけで抜け出すことはもはや無理なことであった。
ハンナはそんな様子のヌーッティを無視して片手でティーポットをがっしりと押さえ、ヌーッティとティーポットの境目に食器用洗剤を流し込む。
「冷たいヌー! ぬるぬるしてて気持ち悪いヌー!」
「ちょっとの我慢だよ。はい、終わり」
ティーポットにはまっているヌーッティの胴体に、ぐるりと食器用洗剤を回しかけると少しだけぬるま湯を出して泡立てた。
「そうか。滑らせて取るのか」
アキの言葉にハンナは頷き、健は納得した。
「力押しなんてヌーッティが痛いだけで取れないよ」
得意げに話すハンナをヌーッティは目を輝かせて見上げた。
「ハンナはただの変なひとじゃなかったヌー」
「もう、わたしをどういうふうに見てるの。失礼だなぁ」
そう言いながらハンナはヌーッティの頭を優しく撫でると、
「さてと、そろそろいいかな。せーので抜くからね、ヌーッティ」
「りょうかいだヌー!」
ヌーッティは元気よく返事をした。
ハンナの右手がヌーッティの胴体を掴む。
そして、
「せーの!」
掛け声と同時にハンナの手がつるっと滑ってヌーッティの胴体を強く捻った。ヌーッティが例えようのない叫び声を上げた。
ハンナはもう一度もう一度と言いながら、3、4回同じ方法を試した。けれども、ヌーッティがティーポットから抜けることはなかった。それを見かねたアキがハンナの5度目の挑戦を制止した。
「だめかー。何でだろ?」
ハンナは首を傾げ、泡立った食器用洗剤で泡まみれになっているヌーッティを見る。
「て、訂正だヌー」
力弱く泡を身に纏うヌーッティがハンナを恐怖を湛えた瞳で見据える。
「やっぱりハンナは変だヌー! 恐怖の大魔王だヌー!」
それを聞いたハンナは無言で蛇口のハンドルレバーを上げるとヌーッティに水をぶっかけた。
アキは怒っている様子のハンナをなだめ、健は身体を捩らせ笑い、トゥーリは重い溜め息をこぼした。
そして、トゥーリが立ち上がろうとした時、再びドアベルが鳴った。
「ごめんなさい。遅れた?」
亜麻色の緩やかなウェーブの長い髪を持つ長身の美少女がいた。
「アイノ!」
トゥーリの声がカフェに響いた。
アキたちの様子を一目したアイノは、
「何があったの?」
怪訝な面持ちでアキたちの元へ歩み寄る。
こうして、引き抜けヌーッティ大作戦に新たなな仲間が加わった。
他方、水浸しのヌーッティはこの世の終わりがやって来たという表情で身体を震わせていた。
怯えた形相でヌーッティはハンナを見据える。
「何でって、今日みんなでクリスマスパーティをいつするか話し合うので来たんだよ。それより、何かわたしだけ除け者みたいに言って、酷いよヌーッティ」
アキと同じ高校に通う友人のハンナは頬を膨らませながらカウンターに沿って歩き、アキや健、ヌーッティたちのいるテーブルへやって来た。
「ちょうどいいところに来た! ハンナ、手を貸して!」
アキはハンナを見つめた。
ハンナは手袋を取りコートのポケットに入れ、マフラーとコートを脱ぐと空いている席の背もたれに掛けた。
「もしかして、ヌーッティがティーポットに入っていることと関係あるの?」
ハンナの言葉にアキは頷き、これまでの仔細を話した。
「なんだ。そんなことか。もっと深刻な話かと思ったじゃん。わたしに任せて。カウンターをちょっと借りるね」
そう言うとハンナはティーポットを両手で持ちカウンターの中へと入っていく。
アキと健はハンナが何をするのかが気になりカウンター越しに、シンクの前に立つハンナとハンナに抱えられたヌーッティポットをまじまじと見る。カウンターの台に腰掛けているトゥーリもくるりと身体の向きを変えてハンナとヌーッティに視線を移す。
ハンナはシンクの中にヌーッティ入りのティーポットをそっと置いた。
がくがく震えているヌーッティは視線を上げてハンナを見る。
「痛くしないヌー? 怖いことしないヌー?」
ハンナは怯えているヌーッティに笑顔を向ける。
「大丈夫だよ。そんなことしないよ」
ハンナはセーターの袖を捲し上げる。
「なんで腕まくりしてるヌー?」
首を小刻みに横に振るヌーッティ。
「ちょっと冷たくてぬるぬるするけど、すぐに楽になるからね」
ハンナは言いながら食器用洗剤のボトルを手に取る。
「うそだヌー! 同じことアキも言ったヌー!」
ヌーッティは上半身を捩らせ抜け出し逃げようと試みる。だが、アキや健が引っ張っても引き抜けなかったヌーッティの身体を、ヌーッティ自身が彼自身の力だけで抜け出すことはもはや無理なことであった。
ハンナはそんな様子のヌーッティを無視して片手でティーポットをがっしりと押さえ、ヌーッティとティーポットの境目に食器用洗剤を流し込む。
「冷たいヌー! ぬるぬるしてて気持ち悪いヌー!」
「ちょっとの我慢だよ。はい、終わり」
ティーポットにはまっているヌーッティの胴体に、ぐるりと食器用洗剤を回しかけると少しだけぬるま湯を出して泡立てた。
「そうか。滑らせて取るのか」
アキの言葉にハンナは頷き、健は納得した。
「力押しなんてヌーッティが痛いだけで取れないよ」
得意げに話すハンナをヌーッティは目を輝かせて見上げた。
「ハンナはただの変なひとじゃなかったヌー」
「もう、わたしをどういうふうに見てるの。失礼だなぁ」
そう言いながらハンナはヌーッティの頭を優しく撫でると、
「さてと、そろそろいいかな。せーので抜くからね、ヌーッティ」
「りょうかいだヌー!」
ヌーッティは元気よく返事をした。
ハンナの右手がヌーッティの胴体を掴む。
そして、
「せーの!」
掛け声と同時にハンナの手がつるっと滑ってヌーッティの胴体を強く捻った。ヌーッティが例えようのない叫び声を上げた。
ハンナはもう一度もう一度と言いながら、3、4回同じ方法を試した。けれども、ヌーッティがティーポットから抜けることはなかった。それを見かねたアキがハンナの5度目の挑戦を制止した。
「だめかー。何でだろ?」
ハンナは首を傾げ、泡立った食器用洗剤で泡まみれになっているヌーッティを見る。
「て、訂正だヌー」
力弱く泡を身に纏うヌーッティがハンナを恐怖を湛えた瞳で見据える。
「やっぱりハンナは変だヌー! 恐怖の大魔王だヌー!」
それを聞いたハンナは無言で蛇口のハンドルレバーを上げるとヌーッティに水をぶっかけた。
アキは怒っている様子のハンナをなだめ、健は身体を捩らせ笑い、トゥーリは重い溜め息をこぼした。
そして、トゥーリが立ち上がろうとした時、再びドアベルが鳴った。
「ごめんなさい。遅れた?」
亜麻色の緩やかなウェーブの長い髪を持つ長身の美少女がいた。
「アイノ!」
トゥーリの声がカフェに響いた。
アキたちの様子を一目したアイノは、
「何があったの?」
怪訝な面持ちでアキたちの元へ歩み寄る。
こうして、引き抜けヌーッティ大作戦に新たなな仲間が加わった。
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