15 / 159
ヌーッティ危機一髪
4.ヌーッティ危機一髪
しおりを挟む
「吐いて! 吐くんだよ、ヌーッティ!」
慌てたアキは片手で団子を喉に詰まらせたヌーッティの背中を叩いた。
ヌーッティは首を横に振った。吐き出したくないという意思表示であった。
「このままだと死んじゃうから吐く!」
けれどもヌーッティは首を横に振った。加えて、あろうことか空いている両手で団子を二つ掴み取り、食べようとしている。
「だめだめだめ! とにかく吐くんだよ!」
アキは空いている方の手でヌーッティの手を止めた。
その時であった。
「アキ、任せて」
デスクの上にいるトゥーリはすっと立ち上がると、ヌーッティとアキのいるベッドサイドテーブルへひとっ飛びで移る。
トゥーリは青ざめているアキの顔を見つめると、
「ヌーッティから手を離してて」
アキはそっとヌーッティの背中から手を離した。
「もう大丈夫だよ、ヌーッティ。絶対に死なせないから」
トゥーリは優しく言葉をかけると、右手をぐっと握り締め、拳を作る。
ヌーッティはそれを見て首を強く横に振る。
「すぐに楽になるからね」
トゥーリは右肘をぐっと後ろへ引き、上半身を軽く捻る。
そして、上半身を元に戻す勢いを利用し、右の拳をヌーッティの腹へぶち込んだ。
「ごぇふぅっ⁈」
嗚咽を発したヌーッティの口からペースト状になった団子と一塊の団子が飛び出した。
ヌーッティは腹を両手で抱えながらテーブルの上にうつ伏せで突っ伏した。
「これでよし!」
ひと仕事を終えた感のある表情でトゥーリはアキに親指を立てて見せた。
困惑した様相のアキは、痙攣を起こしながらテーブルにうつ伏せで横たわっているヌーッティと、何事もないような表情のトゥーリを交互に見て、
「トゥーリ。ヌーッティが泡を吹いているんだけど……?」
「喉に詰まらせた団子を吐いたから大丈夫だよ」
悠然と答えるトゥーリにアキは再び尋ねる。
「えーっと、団子は吐いたけど、青ざめているんだけど?」
「そのうち起きるでしょ」
トゥーリはそう答えるとデスクへ戻って行き、何事もなかったかのように、小皿に乗っている団子を再び頬張り始めた。
アキは気を失っているヌーッティの口元をティッシュで拭うと、ヌーッティをベッドへ運んで寝かせた。それからティッシュとウェットティッシュを使い、ベッドサイドテーブルの上に吐き散らかされた吐瀉物を片付けた。
こうして十五夜の夜が過ぎていった。
翌日のお昼過ぎ。
「団子を食べるヌー!」
ヌーッティは誰もいないキッチンで一人昨晩の残りの団子を食べ始めた。
昨日団子を喉に詰まらせ窮地に陥ったことなどもう記憶には残っていないかのように、次から次へと、咀嚼し飲み込む前に、団子を食べている。
そして、再びヌーッティの身の上に厄災が降りかかるのであった。
その後のことは誰も知らない。
慌てたアキは片手で団子を喉に詰まらせたヌーッティの背中を叩いた。
ヌーッティは首を横に振った。吐き出したくないという意思表示であった。
「このままだと死んじゃうから吐く!」
けれどもヌーッティは首を横に振った。加えて、あろうことか空いている両手で団子を二つ掴み取り、食べようとしている。
「だめだめだめ! とにかく吐くんだよ!」
アキは空いている方の手でヌーッティの手を止めた。
その時であった。
「アキ、任せて」
デスクの上にいるトゥーリはすっと立ち上がると、ヌーッティとアキのいるベッドサイドテーブルへひとっ飛びで移る。
トゥーリは青ざめているアキの顔を見つめると、
「ヌーッティから手を離してて」
アキはそっとヌーッティの背中から手を離した。
「もう大丈夫だよ、ヌーッティ。絶対に死なせないから」
トゥーリは優しく言葉をかけると、右手をぐっと握り締め、拳を作る。
ヌーッティはそれを見て首を強く横に振る。
「すぐに楽になるからね」
トゥーリは右肘をぐっと後ろへ引き、上半身を軽く捻る。
そして、上半身を元に戻す勢いを利用し、右の拳をヌーッティの腹へぶち込んだ。
「ごぇふぅっ⁈」
嗚咽を発したヌーッティの口からペースト状になった団子と一塊の団子が飛び出した。
ヌーッティは腹を両手で抱えながらテーブルの上にうつ伏せで突っ伏した。
「これでよし!」
ひと仕事を終えた感のある表情でトゥーリはアキに親指を立てて見せた。
困惑した様相のアキは、痙攣を起こしながらテーブルにうつ伏せで横たわっているヌーッティと、何事もないような表情のトゥーリを交互に見て、
「トゥーリ。ヌーッティが泡を吹いているんだけど……?」
「喉に詰まらせた団子を吐いたから大丈夫だよ」
悠然と答えるトゥーリにアキは再び尋ねる。
「えーっと、団子は吐いたけど、青ざめているんだけど?」
「そのうち起きるでしょ」
トゥーリはそう答えるとデスクへ戻って行き、何事もなかったかのように、小皿に乗っている団子を再び頬張り始めた。
アキは気を失っているヌーッティの口元をティッシュで拭うと、ヌーッティをベッドへ運んで寝かせた。それからティッシュとウェットティッシュを使い、ベッドサイドテーブルの上に吐き散らかされた吐瀉物を片付けた。
こうして十五夜の夜が過ぎていった。
翌日のお昼過ぎ。
「団子を食べるヌー!」
ヌーッティは誰もいないキッチンで一人昨晩の残りの団子を食べ始めた。
昨日団子を喉に詰まらせ窮地に陥ったことなどもう記憶には残っていないかのように、次から次へと、咀嚼し飲み込む前に、団子を食べている。
そして、再びヌーッティの身の上に厄災が降りかかるのであった。
その後のことは誰も知らない。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
昨日の敵は今日のパパ!
波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。
画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。
迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。
親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。
私、そんなの困ります!!
アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。
家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。
そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない!
アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか?
どうせなら楽しく過ごしたい!
そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる