TS異世界魔法少女英雄譚

ポカリ

文字の大きさ
上 下
1 / 6

『びっくり♡今日からボクは魔法少女』

しおりを挟む

「んっ、くぅ……っぁぁ……!」

 もぞもぞと布団の中で蠢いて、微睡みを誤魔化す。その状態で深呼吸を1つ、2つ、3つ……。
 ぐっとお腹に力を籠め、勢い良く起き上がったボクは、決して広くない部屋の中に掛け布団を散乱させながら爽やかな目覚めの時を迎えた。

「おはよう! 新世界~~っ!」

 元気よく天上に向かって叫びながら、自分の体に触れる。
 ぷるんぷるんのおっぱい、むっちむちのお尻、そして……男なら朝に勃起している筈の性器の代わりにつるつるの割れ目が存在していることを確認したボクは、自分が女のままであることに満足気な笑みを浮かべた。

 とん、とんと上機嫌でスキップ。閉まっているカーテンを開け、外の景色を眺める。
 そこに広がっていたのは、懐かしいような、そうでもないような、そんな光景。コンクリート製の建物や車が走る道路が並ぶ、現代日本の景色だ。
 でも、ボクにはわかる。この世界は、かつてボクが住んでいた世界とよく似ている別の世界なんだってことが。そして、この世界でボクはしなければならないことがあることも理解していた。








 一応、自己紹介をしておこう。ボクの名前は田中マコト、かつては16歳の男子高校生として現代の日本で生きていた何処にでもいる普通の男の子だった。 そんなボクの人生が変わったのは、高校に入ってから初めての夏休みのある日のことだ。

 その日、部屋で寝ていたボクは、バランスの女神と名乗る女性に唐突に夢の中に連れ去られた。自分の名前や生い立ちを確認し、ボクが田中マコトであることを確認した彼女は、これまた唐突にこう言ってのけた。

 「あなたを異世界に転移させます。それも、女の子に性転換してね」

 それで、そのまま女神の手引きでTSしたボクは、早々に彼女の用意した道具によって処女を散らされて、女の子の体の気持ち良さを軽く教え込まれてしまった状態で、RPGゲームの舞台みたいなファンタジーな異世界へと転移することとなったのだ。

 そこから先の人生を語ると、それはもう長くなってしまう。だから、ここで語るのは止そう。どうしても気になる人は、『TS異世界生活記』で検索してみてね!
 ……さて、そんなこんなで異世界転移したボクであったが……その世界で生活しているうちに、もうどっぷりと女の子の体に嵌ってしまったのだ。
 男の人たちに犯され、抱かれ、愛される悦びを知ってしまったボクは、元男だとは思えないくらいに性に乱れ切った生活を送り……気が付けば、何処に出しても恥ずかしくない淫乱変態娘ビッチになっていましたとさ♡

 ドMでセックス大好きな女の子と化したボクは、異世界でありとあらゆるえっちを経験した。ノーマルなセックスから始まり、複数の男の人たちに抱かれる乱交プレイ。輪姦におねショタに搾乳にアナルセックスに性奴隷プレイ。果ては異種姦やら妊娠出産までも楽しんだボクは、完全に仕上がった雌になって毎日スケベに生き続けてきたわけだ。
 で、だ……そんな風に自由に楽しく人生を謳歌してたボクだけど、何事にも終わりはある。ボクの淫らな異世界生活は、ある日に終わりを迎えた。

 まあ、わかりやすく言ってしまえば……ボクは、死んだ。どんな終わりを迎えたのかは忘れたし、思い出したくはない。自分が死ぬときのことなんて、誰だって考えたくはないでしょう?
 異世界で誰かと結婚し、幸せな人生を送った上での大往生なのか。はたまた若くしてアホでエロいことをし続けた結果、誰かに利用されて命を落としたのか。その辺は不明だ。1つ言えることがあるとすれば、過去を振り返るなんて無意味なことをせず、前を向いて生きた方が有意義だということだろう。
 そうとも、なんにせよボクはこうして第3の人生をスタートすることになったのだから、これからのことを考えた方が良いに決まっている。

 やや脱線してしまったが、ボクのこれまでに関してはご理解頂けたと思う。では、ここからは何故ボクが今までの記憶を有した上で新たな人生を送ることになったのかを説明することにしよう。

 ファンタジー世界で死んだボクは、件のバランスの女神に呼び出された。
 彼女とは異世界生活を送っていくにつれて良い関係を築き上げられたと思っている。彼女はボクに様々な能力や道具を渡すことで助け、ボクはそれを活かすことによって彼女を楽しませた。正にwin-winの関係だろう。
 そんな彼女の呼び出しを受けて、随分と長い間、女の子として生きて来たボクは自分が元の世界に戻れるということをようやく思い出した。でも、正直あんまり嬉しくなかったんだよね。
 だってボク、異世界生活でスケベに開発されちゃったし、今さら男としての生活を送るなんて考えられなかったんだもん。
 いや、男に戻ってもおちんぽを恵んでもらうことは出来るだろうけど、出来たら前も後ろも同時に犯して欲しいって言うか、ボクが自分の体に欲しいのはおちんぽよりもおまんこだったって言うか……まあ、とにかくそんな感じだったわけだ。そして、そんなボクの思いを見透かしていたのか、女神はボクに2つの選択肢を与えてくれた。

 1つ、このまま異世界旅行を終了し、元の世界に戻ってただの男子高校生である田中誠としての人生を送る。今までの記憶を消しても良いし、消さなくても良い。これまでの出来事が全てなかったこととして、本来の人生を送る道。
 2つ、元の世界のボクの存在を抹消し、女の子であるマコトとして生きていく道。異世界への転生を繰り返し、そこで女の子として人生を送り、死んだらまた別の世界へ転生する。その世界で得た能力や年齢はリセット、体の開発具合と一部の記憶を持ちこした状態で延々と女の子として生き続けるという道。

 ここまでボクの話を聞いてくれたみんななら、ボクがどちらの選択をしたのかなんて考えるまでもないだろう。そう、ボクは後者の道を選んだ。これまでの人生に別れを告げ、TSしたままの人生を送ることにしたのだ。
 で、その代わりに女神から1つの条件を提示されることになる。それは、転生した世界では、ボクには毎回仕事を与えられるというものだった。
 ある意味では無限の命を与える代償として、ボクは女神の眷属になる。そして、彼女の指示に従ってその世界で役割を果たさなければならない。これからはボクも彼女の側、天界の一員となって活動することになるとのことで、やや大変そうながらもボクはその運命を受け入れた。
 女の子として生きて、毎日セックス出来るなら、そのくらいのことはへっちゃらだもんね♡

 こうして天界の使者となって異世界転生を繰り返す人生を選択したボクは、早速とばかりに初めてのお仕事をこなすために、無数にある現代日本の並行世界の中の1つであるこの世界に転移して来たというわけであった。

 さて、異世界転生したらまずやるべきことは決まっている。自分の所持品や能力を調べることだ。
 前回はファンタジー世界であったから魔法やマジックアイテムの類を最初に支給されたが、今回はそういうおとぎ話のような世界ではない。ここでいきなり魔法を使ったり、トンデモな力を持つアイテムをもらっちゃったりしてたら、使い道に困ってしまうのだが――

「……うん、見事に生活必需品ばっか。しかも、大体1ヶ月くらいで無くなりそうな量だね」

 シンプルなTシャツとハーフパンツが数着。食料はお米やらパンやらと缶詰が少し。料理道具や収納器具、食器やある程度の家具なんかは揃ってるけど……言い換えれば、生きていく上で必要な物以外は殆ど無いも同然だ。
 テーブルの上には銀行の預金通帳と判子が置いてある。中には30万円ものお金が入っているから、これを当面の活動資金にしろってことなんだろう。元の世界でもそうだったけど、自分の生活は自分で面倒を見ろってことらしい。

「うわ、これ参ったなぁ……ボクの年齢や学歴じゃ、まともに就職なんか出来ないぞ。そもそも、ボクはこの世界ではどんな立場の人間なんだ?」

 これは困った。転生前のボクは高校1年生、つまりは16歳だ。ギリギリアルバイトなんかは出来るけど、そんなんじゃ相当に頑張らないと生活費を稼げないだろう。かと言って、中卒で女の子のボクをほいほいと雇ってくれる会社なんてそうは見つからないだろうし、そうなったとしても仕事で手一杯で女神からの指令をこなす余裕なんかなくなってしまう。
 そもそも、この世界のボクは何をしている人なんだ? 1人暮らしをしてるから家族はいないみたいだけど、前の世界みたいに完全に0からのスタートってことで良いんだろうか? そうなるといざって時に頼れる人がいないってことになるから、やっぱり生活面での不安は残ってしまう。
 って言うか、ボクはこの世界で何をすればいいんだろう? 転生の時には何も言われなかったから、どうすればいいのかがわからないや。
 山積みの問題と不安を抱え、転生直後にパニックになってしまうボク。とにかく、現状を整理できるだけの情報が欲しい、そう思った時だった。

「はぁい、マコト。どうやらちゃ~んと転生は成功したみたいね」

 少し気の抜けた、聞き覚えのある声が背後から聞こえた。思わず振り返ったボクは、何時の間にやら部屋の中に出現していたバランスの女神の姿を見て大声で叫ぶ。

「女神! よかったぁ……! ボク、なにをどうすれば良いのか全くわからなくって困ってたんだよ」

「ふふふ……! 仕方ないわね、マコトちゃんは……でも安心して、この私が来たからには、マコトのすべきことをしっかりと教えてあげるから!」

 何故かドヤ顔で語り始める女神は、鼻高々と言った様子でボクに対して胸を張っている。どうせもっと上の立場の神様から命じられたことをボクに伝えているだけなのだろうが、やっぱり知った顔がいるというのは心強い。この憎めない雰囲気も安心するし、今回の異世界転生でも彼女には何度も助けてもらうことになりそうだ。

 女神の出現に喜ぶボクは、敷いてある布団の上に座ると彼女を見上げる姿勢で話を聞くことにした。話は長くなりそうだし、リラックスして聞いた方が良いだろう。長い付き合いの女神に今さら気を遣う必要もないだろうしね。
 ボクが話を聞く体勢を取ったことを確認した女神は、これまた得意気な表情でふんすと鼻息を荒くして胸を張ると……ボクがこの世界で与えられた使命について語り出した。

「え~……今回、マコトに与えられた使命は……魔法少女となって、この世界の秩序を守ることです!」

「ふぇ!? 魔法少女ぉ!? な、なんか、物凄い予想外の言葉が出てきたんだけど!?」

「ふふっ、まあ驚くのも無理ないわね。では、詳しい説明の前に、この世界について簡単に話しておきましょうか」

 そう言った女神が手をパンパンと叩けば、彼女の魔法か何かで作り出された四角いスクリーンが空中に浮かび上がった。
 そこには可愛らしい格好をした女の子と、彼女たちと戦うモンスターの姿が映し出されている。

「えっとね、この世界では、魔法少女の存在が広く認知されているの。少女、と呼ぶにはそれなりに歳を取った人もいるけど、不思議な力を使って怪物たちと戦う女性のことを魔法少女と呼ぶ、って考えてちょうだい」

「そっちの方はわかったけど、魔法少女が戦う怪物ってどういう存在なの? 世界征服が目的とか?」

「ううん、そうじゃないわ。怪物についての資料はっと……あった、これこれ! えっと……この世界の怪物たちは、人間たちの欲望によって生み出されるらしいわ。あれが欲しい! とか、これがしたい! って思いが膨れ上がると誕生する怪物……名前は『ザイマ』ね。ザイマは欲望の持ち主の願望に従って暴れ回るから、それを退治するために魔法少女がたたかうみたい」

「ふ~ん、へ~、ほ~……それじゃ、ボクもそのザイマと戦う正義の魔法少女になれってことなんだね。でも、それってボクがやる必要あるの?」

 女神の説明を聞いたボクは、素直な感想を彼女に伝える。一応、上司みたいな立場である彼女にこういった口の利き方をするのはおかしいのだろうが、ボクと女神の関係だからと納得して許してほしい。 
 さて、ボクが魔法少女になるという件だが、こうして説明を聞いてもボクがそれをやる必要性が何一つとして見いだせないのが問題だ。決して無駄だとは思わないが、わざわざ天の遣いとしてボクを派遣してまでやることだとは到底思えない。
 これがボクを唯一の魔法少女としてザイマと戦わせるという話だったらまだ納得出来た。神様の遣いとしてボクに力を与え、強大な悪と戦うスーパーヒロインとしての役目を担わせるというのなら、まあボクがやるのもおかしくはないかなと思える(それでも、何でこの世界の住人にやらせないんだとは思うけどね)。
 でも、この世界にはこの世界の魔法少女がいるのだ。ならば彼女たちに全てを任せればいいし、戦力が足りないならまた新しい魔法少女を生み出せばいい。神様たちならそんなの余裕だろうし、それを行わない理由だって無いはずだ。

 ボクの意見を総評するなら、「命令ならやるけど、それってボクじゃなきゃダメなの?」と言った所だろう。立場上、上からの命令に逆らうつもりもないから、やれと言われればやるけども……正直、ボクよりも向いてる人って山ほどいると思うんだけどなぁ。
 なんて、消極的かつ否定的な意見をボクが思い浮かべた時だった。

「……大丈夫よぉ、マコト。あなた以上にこの使命を果たせる人材なんて存在しないわ」

 意味深な口調と声色でそう呟いた女神は、ボクの大好きなとっても不敵な笑みを浮かべている。その笑顔を見た瞬間、ボクの子宮がきゅんっ♡ とときめいた。
 昔っから……前の異世界の時からそうだった。女神がこの笑顔を浮かべる時、それは最高に楽しいことを始めるということを意味している。きっと、今回もそう。まだ口にしていないだけで、ボクの役目には何か重大な秘密が隠されているのだろう。
 だから、ボクも彼女が大好きであろう期待を込めた笑みを浮かべてみせた。お互いの信頼関係を思わせる絆(それが良いものだとは限らないが)を感じながら、話はどんどん進んでいく。

「あのね、マコト……ザイマが魔法少女に倒されてしまうことで、とんでもない悪影響が残ることが判明したのよ。ザイマは、『倒されると主となった人物から、その欲望を抹消してしまう』の」

「欲望を、抹消……? え? 怪物を生み出す原因が消えるからいいことなんじゃないの?」

「ううん、そうじゃないの。そうね、わかりにくいから例え話で説明しましょうか」

 そう言って女神が再度手を叩くと、スクリーンの画が紙芝居のようなものに変わった。そこにはザイマと思わしき怪物の絵と、その主となった悪い顔をしている人間の姿が書かれている。
 そんな絵を見せながら、女神はザイマを倒されることによって生まれるデメリットについての解説を開始した。

「ここに花子さんという女性がいます。彼女は宝石店で見た超大粒のダイアモンドが欲しくて欲しくて堪りません。その欲望はザイマを生み出すまでになり、花子さんの欲望を受けて誕生したザイマは、執拗に目的のダイアモンドを狙って暴れ始めます」

 そこまで話した女神がぺらりとページを捲れば、次に魔法少女に倒されるザイマの姿が描かれた絵がボクの眼に飛び込んでくる。

「でも大丈夫! この世界には魔法少女がいるから、花子さんの欲望から生み出されたザイマをあっという間に退治してくれます! ザイマが消え去ったことで世界に平和が戻り、事件は無事に解決です! ……さて、ここでマコトに問題よ。この場合、花子さんはどうなると思う?」

「どうって……さっき女神が話した内容から考えるに、欲しかったダイアモンドが欲しくなくなるんじゃないの?」

「ええ、正解よ! ……そして、。なにがあったとしても、花子さんはダイアモンドを欲しいとは一生思わなくなるわ」

「……え?」

 何か、とても引っ掛かる表現があったような気がする。もう二度と、一生、欲しかった物を欲しがらなくなる……その部分に違和感を感じるボクに向け、女神は第二の例を挙げて話を始めた。

「ここに太郎さんという男性がいます。太郎さんはセックスがしたくてしたくて堪らないのですが、恋人もいないし、風俗店に行く度胸も無いため、その欲望を募らせていました。そして、ついに性欲からザイマを生み出してしまいます」

 花子さんの時と同じような例で、同じような話。次のページを捲れば、また同じようにザイマが魔法少女に倒されているページがボクの目に入る。

「でも大丈夫! この世界には魔法少女がいるから、太郎さんの欲望から生み出されたザイマをあっという間に退治してくれます! ザイマが消え去ったことで世界に平和が戻り、事件は無事に解決です! ……さて、ここでマコトに問題よ。この場合、太郎さんはどうなると思う?」

 女神の口調も、話も、ほぼほぼ同じだ。答えるべき内容も同じで、それが正解なのも同じ。だけど、この問題には先ほどの問題とはたった一つだけ違う点がある。そしてその違いは、とんでもない被害をこの世界にもたらすのだ。
 ボクは、やや震えた声で思い浮かべた答えを口にする。もしかしたら、ボクがこの世界で担うのは、とても重大な役目なのかもしれないと考えながら――

「……太郎さんから性欲がなくなって、もう二度と芽生えない。それが正解、でしょ?」

「またまた正解! さて、ここまで話せば、ザイマを倒されるデメリットについてもわかってきたんじゃないかしら?」

 こくりと、ボクは女神に頷いてみせた。なるほど、確かにこれは無視できない大問題だ。
 ザイマが倒されると、主となった人間からその欲望が完全に抹消されてしまう。そしてその欲望は二度と芽生えることはない。一見、もう二度と事件を起こすことがないから安心だと思えるかもしれないが……抹消されてしまうものが性欲の場合に限り、とんでもない悪影響を残してしまうのだ。

 人間から性欲が消えるということは、その人物は性行為をしたいとは思わなくなってしまうということになる。本当に噛み砕いて言ってしまえば、性欲のザイマを倒された場合、その人物は一生賢者タイムのままということになるのだろう。
 そんな状況じゃあオナニーはおろか、セックスだってやりたくないだろう。セックスが出来なきゃ子供は生まれない。性欲のザイマを倒されてしまった人間は、性欲がなくなったが故にもう子供を成すことが出来なくなってしまう。そんな人間が数十人、数百人と出現し、増え続けていけば……人類はお終いだ。
 そんなボクの考えが正しいとばかりに、女神があるデータを持ち出してこの世界の現状を説明する。

「天界の調査では、この世界の出生率はザイマが出現し始めた頃と比べて70%に低下したとの結果が出ているわ。もう、この世界の終わりは始まっているのよ。かといって、性欲に関するザイマを放っておくことも出来ない。そんなことしたら、ザイマによるレイプが横行する社会になって、それはそれで世界が終わってしまうもの。ザイマを倒しても、放っておいてもお終い。しかもザイマの主が誰であるかは生み出した本人にすらわからない。ザイマの主に会って、欲望を解消させることも非常に困難ね」

「……じゃあ、どうすればいいの?」

 真剣で、真面目で、大事な話。この世界の行く末に関わる、非常に重要なことを話しているボクたちの表情は……満面の笑みに溢れていた。
 ふざけてる訳じゃない。これでもボクも女神も真剣なんだよ? でもね……どうしても笑いが抑えられない時ってあるでしょう? ボクたちにとって、それが今だってだけなんだ。

「簡単よ、とっても簡単。ザイマを倒すんじゃなくて、満足させてあげればいいの。欲望を満たされたザイマは消滅せず、その充足感を主に与えるために帰還する……そうすれば、該当人物の性欲は消滅しないし、ザイマによる犯罪も防ぐことが出来るわ」

「あははっ! 確かに簡単だね! でも、それにはすんごいスケベな魔法少女が必要なんじゃない? どんな性欲も喜んで受け止められて、相手が怪物だろうと気にせずにえっち出来て、そんな爛れた性活を続けられる淫乱ビッチ魔法少女じゃなきゃ、この役目は荷が重いんじゃない?」

「ええ、そうなのよ。この世界をくまなく探したけど、そんな娘はいないみたい。だから……別世界から逸材を呼ぶことにしたわ」

 意味のない、ただの小芝居。もうお互いが何を言いたいかもわかってるし、聞く必要もない。だけど、せっかくだから楽しもうじゃないかとばかりに話を続けて……ボクたちは笑う。
 なるほど、確かにこれはボクにぴったりのお仕事だ。世界広しといえど、こんなエロスキルが必要な仕事をこなせる女の子はボクしかいないだろう。
 ひとしきり笑い、楽しみ、お互いがこのやり取りに満足したことを確認した後で……最終的な目的を、女神が言葉としてボクに伝える。

「という訳で……マコト、あなたがその淫乱魔法少女の役目を担ってちょうだい! 天界が頑張って、性欲に関するザイマの出現地点をこの世界の日本に限定したわ! あなたは続々出現するそのエロザイマたちを満足させる性欲の履け口……性技の淫乱魔法少女・マコトとなって、ヤリまくるのよ!」

「りょ~かいっ♡ あははっ♡ 確かにこれはボクにうってつけのお仕事だね♡」

「でしょ? マコトが天の遣いになってくれて助かったわ~! ……あ、そうそう、余裕があればなんだけど、この世界に淫乱魔法少女の文化を根付かせるために後進の育成もよろしくね~! マコトがこれは! って思った素質のある子を、スケベに育ててくれたら助かるわ!」

「ん、覚えとくよ! ……あ、そうだ。ボクの生活費ってどうなるの? あと、仕事に使う用の道具とかってなんかある?」

「その辺のことは……このマニュアルに書いてあるから、一読しといてちょうだい! 私お手製の本だから、捨てたりしちゃダメよ?」

 『女神お手製・淫乱魔法少女の心得』と書かれた本を一瞥して、ボクは彼女に向かって頷いた。最初からこれを渡してくれればよかったのにとかは思ってはいけない。こんな楽しいことは、誰かの口から直接教えてもらわないとね!

 さて、これでボクのすべきことも世界の現状もわかった。この世界の平和と未来を守るため、文字通り一肌脱ぐとしましょうか!

「という訳だから、淫乱魔法少女のお仕事、頑張ってね! 私もちょくちょく遊びに来るから、何かあったらその時にでも聞くわ。それじゃあね~!」

 別れの挨拶を残した女神は、瞬き一つの間に姿を消してしまった。再び一人きりになった部屋の中で、ボクは幸せの笑みを浮かべ、布団に倒れ込む。
 いいじゃないか。最高じゃないか。淫乱魔法少女。まさにボクにぴったりのお仕事。世界中で可愛い女の子たちが怪物たちと戦う中、その怪物たちを相手にに腰を振ってセックスするボク。うん、考えただけで興奮しちゃうね♡
 しかもこの仕事は世界のためになるものだ。なにも後ろめたいことを考えずにえっちに没頭出来る。ああ、いや、違った。ボクが没頭するのは淫乱魔法少女のお仕事で、その内容がえっちなだけ。いや~、お仕事だからって毎日のように大好きなえっちをしなきゃいけないなんて大変だな~!
 
「おっと、こんなことをしてる場合じゃなかった。まずはマニュアル読んで、色々と勉強しよう。この家の周りも散歩して、何があるかも把握しておかないとな……」

 一刻も早くお仕事を始めるための勉強を開始したボクは、頭の中にこれからの生活を思い浮かべてはおまんこを濡らしていた。きっと刺激的で、気持ち良くて、退屈しないエロエロな出来事が待ち受けているのだろう。
 こうして、淫乱魔法少女として生きることになったボクは、この世界と自分の仕事について学ぶことで、その一歩目を踏み出したのでありました……♡
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...