26 / 27
エピローグ
しおりを挟むその日は雲一つない晴天だった。
たくさんの鳩が二人をまるで祝っているように一斉に羽ばたく。
たくさんの人々に囲まれた二人が幸せそうに大聖堂の階段を降りていく姿を皆微笑みながら見守っている。
二人は囲まれた招待客達に笑顔を振り撒き手を振った。
二人が今日この日を迎えるまでには、途方のない苦労の日々があったことを知る招待客達は幸せそうな二人を心から祝福している。
「ついに結婚してしまいましたね。エレノア嬢。ルデオンは彼女に気持ちを伝えなくて良かったのですか?ずっと好きだったんでしょう?」
オースティンがルデオンをチラリと横目で見つめる。
「俺は一生この気持ちを伝えるつもりはなかったよ。俺の大好きな二人がやっと幸せを掴んだんだ···。心から祝福してるさ。そういうオースティンもエレノア嬢のこと好きだったんだろう?伝えなくて良かったのか?」
苦笑いをしながらルデオンはオースティンに同じ事を聞き返した。
「言える訳がないでしょう?あんなに幸せそうな二人を見たら一生言うつもりはありませんよ。墓場まで持っていくつもりです。私も大好きな人と、大事な友の良き日を心から祝福していますよ。」
ルデオン自身がエレノア嬢を好きだった事もあり、オースティンがいつも熱の篭った眼差しでエレノア嬢を見つめていた事に気付いていた。
今も失恋の心の痛みで悲しげな笑みを浮かべる友を心配していた。ルデオンも今同じ痛みを抱えているからこそ少しでも心が軽くなればと思ったのだ。
「でも良かったな。二人共。あんなにいい笑顔で笑えるようになって。色々ありすぎて···一時はダメになるかもって思ってたから···心底安心したよ。あんな幸せそうな笑顔を見せられたら祝わずにはいられないよな。もう誰にもあの幸せを壊させないように···俺達側近が二人を、これから生まれてくる二人の子達も守っていかないと···な?」
「そうですね。彼等の幸せはやっと始まったばかりです。これからも、この先も···二人が、これから生まれる二人の子供達が幸せに笑って過ごせるように私達も気合いを入れてお守りしていきましょう。」
ニカッとルデオンが笑い、普段めったに笑わない男オースティンも満面の笑みを浮かべた。
二人の目の前には、純白のドレスを身に纏い幸せそうに微笑む美しい新婦と、新婦を愛しそうに見つめ甘い笑みを浮かべる美しい新郎の姿があった。
「こんな晴れの日に言うのは何ですが···今夜一杯やりませんか?失恋記念に。祝福はしていても···やはり失恋は辛いので付き合ってくれませんか?」
オースティンの気持ちを察したルデオンはなるべく明るい声と表情で言葉を返す。
「いいなそれ!失恋記念か···。朝まで語り明かそうぜ。美味い酒と美味い飯も食いながらさ?」
ルデオンがいつもの調子で返すものだから思わずオースティンの体から力が抜けて笑ってしまった。
この日二人は、深酒をしすぎてしまい···翌朝同じベッドで目覚め、友情から違う感情が生まれてしまうのはまた別のお話···。
────
結婚式が終わり御披露目のパレードを終えた私達は、二人の為に新たに建築された“ブルースター宮”へ向かう。
ここが私達の新たな新居ブルースター宮。
名前の由来は、庭にたくさんのブルースターが植えられているからだ。
ブルースターの花言葉は「幸福な愛」「信じ合う心」という意味がある。
陛下や王妃様の気持ちが伝わって来る花言葉だった。
私達の結婚指輪にもデザインされている花だ。
「なんだか今日まであっという間だったね。」
エリックがタイを外しながらベッドに腰掛ける。
私もエリックの隣に腰掛けた。
「本当にあっという間の出来事で、正直まだ結婚したって実感がないわ。でも私達やっと結婚できたのね···。ここまで色々あったから、今日この日をエリックと迎えられて良かった。」
エリックに向けて微笑むとエリックもホッとしたように笑みを浮かべた。
「私もエレノアと今日という日を迎えられて良かった。一度はもうこんな日は来ないかもしれないって諦めかけていた事もあったから···今すごく安堵してる。今、私の目の前に君が妻としてそこにいてくれる事がどれだけ嬉しいか···結婚した実感がないなんて言えないほど君を愛すから覚悟して?」
そう言うとエリックが私をベッドに押し倒した。
エリックは私の両手を掴み私の姿を見下ろしている。
いつもの優しいエリックと違い、エリックの瞳には熱い熱を感じる。
妖艶な笑みを浮かべるエリックに胸がドキドキしてしまう。こんなエリックの姿はゲームでも見たことがなかった。
エリックに両手を掴まれてしまった為に身を捩る事が出来ずエリックと見つめ合うしか出来なかった。
「エレノア···君が好きだ。大好きだ。エレノア愛している···私が君を絶対に幸せにする。だからエレノア···君の全てが欲しい。」
熱い瞳に射抜かれた私は頷く事しか出来なかった。
見つめ合い触れあう唇、口づけはどんどん深くなった。
エリックの肌と私の肌が触れ合い一つになる。
その日私は、エリックに何度も何度も愛され···彼の愛情の深さと絶倫さを知る事になった。
翌日、侍女達がエレノアの身支度をする際にあまりのキスマークの多さに苦笑いし、エレノアは恥ずかしさのあまり穴に入りたくなった。
─────
とある夜会の中心には美しい王妃がいた。
周りの若い令息達は一目彼女の姿を見ようと彼女の周りを取り囲んでいる。
「エレノア王妃···どうか今夜私とダンスを一曲踊っていただけませんか?」
エレノアの美貌は年々輝きが増していた。
若く美しい令息達は、うっとりとした表情でエレノアの姿を見つめている。
「ごめんなさい。陛下がヤキモチを妬いてしまうからご遠慮するわ。」
国王となったエリックは愛妻家で有名だ。
エレノアとエリックの間には、長男のエイリークと長女リリノア、次女のエレジアともう3人の子供がいる。
「エレノア王妃はエリック陛下を今も愛しているのですか···?私は美しさと若さでは陛下に負けません。どうか今宵は私をダンスのお相手に選んでいただけませんか?」
なかなか諦めない令息にエレノアは美しい笑みを浮かべてこう述べた。
「私おじ専なのでお構いなく。今も昔も誰よりもエリックを愛しているわ。どんどん美しく年を重ねていくエリックに夢中だから他の男性は目に入らないの。ごめんなさいね。」
そう言うとエレノアは最愛のエリックの元へと去っていく。エレノアはエリック以外の男性とダンスを踊ることはありませんでした。
エリックは優理花好みの筋肉を維持し、美しく年を重ねていました。その“イケオジ”っぷりは、若い貴族令嬢の一部と同年代の夫人達からの人気は絶大でした。
もちろんエレノアもそんなエリックに夢中です。
優理花は夢を叶え、幸せの絶頂にいたのです。
素敵な夫と愛しい子供達に囲まれ、優理花はこの世界でハッピーエンドを迎えることができました。
これから先、もっともっと魅力が増していくエリックと子供達と幸せに暮らしていくのでした。
(完)
1
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
四葉美名
恋愛
(どうして? 誰も私のこと覚えてないの?)
約一年前、私「渡辺咲良・わたなべさくら」は異世界の瘴気を浄化する聖女として召喚された。しかしどういうわけか、あと一箇所の瘴気の穴を残して、日本に戻ってきてしまう。
召喚された異世界で一緒に旅した若き騎士団長のカイルと恋人になっていた咲良は、どうにか帰れないかと泣き暮らす日々。
そんなある日、足元に再び魔法陣が現れ、異世界に再召喚される。
「やっとカイルに会えるんだわ!」
しかし自分が去った一年後のその世界では、誰も自分のことを覚えておらず、聖女の力も失っていた。言葉を話そうとしても喉に鋭い痛みが襲い、何も話すことができない。
そのうえ、結婚を約束していた恋人のカイルには、アンジェラ王女という婚約者がいたのだった。
そしてその王女の指示により、咲良は王宮に不法侵入した罪で崖から突き落とされてしまう。
その突き落とした相手は、かつて愛した恋人の「カイル」だった……
世界観はゆるゆるファンタジーです。恋愛小説大賞に参加中の作品です。
婚約者の浮気から、どうしてこうなった?
下菊みこと
恋愛
なにがどうしてかそうなったお話。
婚約者と浮気相手は微妙にざまぁ展開。多分主人公の一人勝ち。婚約者に裏切られてから立場も仕事もある意味恵まれたり、思わぬ方からのアプローチがあったり。
小説家になろう様でも投稿しています。
枯れ専で何が悪い!
嘉ノ海祈
恋愛
―何かが違う。侯爵令嬢であるエリワイドはその違和感に頭を抱えていた。違うのだ。かっこいいと思う基準が。周りの令嬢は若くて顔の良い貴族令息に黄色い声を上げる中、エリワイドは一人節くれだったおじさま方の姿に見惚れていた。数多くの有名令息からの縁談も、おじさま好きであるエリワイドの心には響かない。もうすぐ迎える18歳になって初めての社交界で、婚約者をパートナーとして連れて行かなければならないエリワイドはずっと恋焦がれていたとある人物に婚約を申し込む。しかし、その人物は40年以上誰とも結婚をしていないくせ者だった。
絶対に彼と婚約をしたい侯爵令嬢と、絶対に婚約を結びたくない辺境伯の恋の攻防物語。
※小説家になろうにも掲載しています。
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。
紅蘭
恋愛
西野愛玲奈(えれな)は少しオタクの普通の女子高生だった。あの日、池に落ちるまでは。
目が覚めると知らない天井。知らない人たち。
「もしかして最近流行りの乙女ゲーム転生!?」
しかしエレナはヒロインでもなければ悪役令嬢でもない、ただのモブキャラだった。しかも17歳で妹に婚約者を奪われる可哀想なモブ。
「婚約者とか別にどうでもいいけど、とりあえず妹と仲良くしよう!」
モブキャラだからゲームの進行に関係なし。攻略対象にも関係なし。好き勝手してやる!と意気込んだエレナの賑やかな日常が始まる。
ーー2023.12.25 完結しました
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
悪役令嬢の幸せは新月の晩に
シアノ
恋愛
前世に育児放棄の虐待を受けていた記憶を持つ公爵令嬢エレノア。
その名前も世界も、前世に読んだ古い少女漫画と酷似しており、エレノアの立ち位置はヒロインを虐める悪役令嬢のはずであった。
しかし実際には、今世でも彼女はいてもいなくても変わらない、と家族から空気のような扱いを受けている。
幸せを知らないから不幸であるとも気が付かないエレノアは、かつて助けた吸血鬼の少年ルカーシュと新月の晩に言葉を交わすことだけが彼女の生き甲斐であった。
しかしそんな穏やかな日々も長く続くはずもなく……。
吸血鬼×ドアマット系ヒロインの話です。
最後にはハッピーエンドの予定ですが、ヒロインが辛い描写が多いかと思われます。
ルカーシュは子供なのは最初だけですぐに成長します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる