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課金アイテム(オースティンside)

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※少し時は巻き戻って、ヒロインが現れた時の時系列のお話です。



先ほどまで良い雰囲気だったエリックとエレノア様。
明らかに誰が見ても両思い。他人が付け入る隙は見当たらない。

それなのに···あの女が現れたせいで二人の関係に亀裂が入ってしまった。

異常は彼女が現れた瞬間に感じた。

招待客リストに彼女の家は載っていない。

実は今回のパーティーは、すれ違い、歪んでいた関係からやっと前に進み始めた二人をコッソリ応援したい王妃様が企画したパーティーだった。

その招待客のリストも、学園で問題のある生徒の家は外されているのだ。

なぜその事を私が知っているか?
それは、ブラックリストを作ったのが私だからだ。

二人を応援するのに、問題のある人間を呼ぶわけにはいかない。

だから学園の生徒であり、宰相の父を持つエリックの側近である私に、王妃様はブラックリストを作るように要請してきた。

今、一番問題がある人間。
それは、今日現れたユリア・サージェントをおいて他にいないだろう。

彼女は男爵家の令嬢ではあるが、家が没落寸前の貧しい家庭故に、奨学金制度を利用して学園に入学してきた。

我が国の奨学金制度は二種類ある。
一つは特待生制度。この制度は優秀な学生を確保する為の制度で、学期末のテストで常に10位以内に入っていれば、入学に必要な準備金、寮費、食費その他学園に通う為にかかる雑費のすべてを国が負担するというもの。

こちらは常に10位以内をキープしなければならず、条件が厳しい為、金銭的な負担はゼロ。

しかし、二回続けて順位が10位以下になってしまうと、特待生制度の権利は剥奪されてしまう。

逆にキープし続けることが出来るなら、卒業まで学園に通う為の費用は全くかからない。ゼロなのだ。

もう1つの奨学金制度は、国から学園に通う為の費用を借りる制度だ。

こちらの制度はどんな生徒も利用できる制度になっている。卒業して就職して仕事をし始めたら毎月少しずつ奨学金の返済をしていくシステムだ

ユリア嬢は、このシステムの特待生制度を利用して入学してきた。

しかし彼女を調べると、小テストではいつも赤点ギリギリ。

学園では容姿が美しく、身分がある男を追い回すのに必死でまるで勉強をしている様子がない。

そんな彼女が特待生制度を利用できるのは、おかしくないだろうか?

明らかに何らかの不正をしている。
きっとその線は···間違いではないだろう。

そして学園でも彼女は事件を起こしていた。

その事件は、婚約者のいる伯爵家の嫡男の生徒が何日かユリア嬢に追い回されていた。

彼は婚約者を深く愛しているので、ユリア嬢の誘いをことごとく突っぱねた。

何日後かに、またユリア嬢が彼の前に現れた。

そして今日のエリックの様に、伯爵家の令息の耳元で何か呟くと、伯爵家の令息は表情が抜けたような虚ろな瞳になり、ユリア嬢が指示した通りに···まるで操られているかのように伯爵家の令息は婚約者に婚約破棄を突きつけたのだ。

まさに今日のエリックを見ている様だった。

しかし、短時間の効き目は強力ではあるが、長い時間持続はしないらしい。すぐに令息は正気を取り戻した。

私はその光景をすべて見ていたので、婚約者にも、令息にも状況を説明した。

この洗脳のようなもののたちの悪さは短時間で効果は短いが、和解しても、確実に二人の間にはしこりが残る。

それが亀裂となり、どうなるかわからないことが恐ろしい。

昔は、王族も魅了や洗脳が効きにくい耐性を持っていた。

しかし代替わりをするごとに、徐々にその耐性は薄れている。

数十年前に、その状況を危惧した当時の王が、魅了と洗脳を禁術とした。

禁術を使用すれば、使用した本人、それに関わった人間、使用した者の一族、すべて処刑される。それもかなり残酷な方法でだ。

国民は、その罰の恐ろしさを知っているから禁忌を犯そうなんて者はいなかった。

あの女は無知なのか、それとも恐れ知らずなのか?

それを見ていた私は、この事件は禁術が関わっている恐れがある為、父上に報告して指示を仰いだ。

父上はすぐに国王陛下に報告した。

事が事だけに、極秘で話が進んでいた。

まずは魅了または洗脳にかからないようにする為の魅了、洗脳、毒無効の魔道具の準備。

今まで禁術を使おうとする人間はいなかった為、少し時間がかかってしまった。

魅了、洗脳、毒の無効という効果を三重付与しなければならない為に、作れる魔道具師が限られてしまったのだ。

急ぎ王族、重要なポストについている人物の分を確保するので手一杯だった。

一番いいのが、あの女に魔封じの腕輪を装着してしまうのが早いのだが、どんな方法で禁術を使っているのかが不明。
状況的に難しい。

魅了魔法なのか?それとも魅了効果のある魔道具を使っているのかが確認できなかったからだ。

しかし、人を意のままに操れるほどの強力な効果には、魔道具でも魔法でも“対価”が必要なはずだ。

あの女は何を“対価”にしている?

私は考えを巡らせる。

そして一つの考えにたどり着いた。

あの女の実家サージェント領は、本来男爵家にしては豊かな領地だったはずだ。

産業、農業も豊かで裕福な領地だったと記憶している。

それが何故、その領地を持つ男爵家の令嬢が“特待生制度”を利用しなければならないほどに困窮した?

大きな災害があった訳でもないのに···。

没落寸前にまで落ち込むほどの事態になったのは、つい最近の話。

ここまで急激に困窮するなど、普通なら考えられない。

それに、急激に困窮するような事が起きたなら、国に報告が上がるはずだ。

そこで私は、一つの考えに行き着く。

もしや···。

その対価とは、“資産”なのではないか?と。

この短期間にこれだけ男爵家が困窮するなど、それしか考えられないだろう。

やはりあの女は黒だ。

入学時の不正。そして招待されていない人間が王城に忍び込むなんて···普通はできるはずがない。

状況的には確実に黒。

しかし、証拠が少ない。

禁術を使ったとして裁くには、確実な証拠が必要だ。

一族郎党根絶やしにするのだから、当たり前の事だろう。

確実な証拠を掴むには、禁術を使った事がわかる証拠が必要だ。

私は、魔道具師にもう二つ機能を追加するように指示を出した。

魅了を使った事がわかるように、禁術が使われると魔道具に変化がわかるようにする機能と禁術が使われた事を記録する機能だ。

反応があれば、もう言い逃れはできない。

私は魔道具の完成を待った。












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