13 / 27
課金アイテム(オースティンside)
しおりを挟む
※少し時は巻き戻って、ヒロインが現れた時の時系列のお話です。
先ほどまで良い雰囲気だったエリックとエレノア様。
明らかに誰が見ても両思い。他人が付け入る隙は見当たらない。
それなのに···あの女が現れたせいで二人の関係に亀裂が入ってしまった。
異常は彼女が現れた瞬間に感じた。
招待客リストに彼女の家は載っていない。
実は今回のパーティーは、すれ違い、歪んでいた関係からやっと前に進み始めた二人をコッソリ応援したい王妃様が企画したパーティーだった。
その招待客のリストも、学園で問題のある生徒の家は外されているのだ。
なぜその事を私が知っているか?
それは、ブラックリストを作ったのが私だからだ。
二人を応援するのに、問題のある人間を呼ぶわけにはいかない。
だから学園の生徒であり、宰相の父を持つエリックの側近である私に、王妃様はブラックリストを作るように要請してきた。
今、一番問題がある人間。
それは、今日現れたユリア・サージェントをおいて他にいないだろう。
彼女は男爵家の令嬢ではあるが、家が没落寸前の貧しい家庭故に、奨学金制度を利用して学園に入学してきた。
我が国の奨学金制度は二種類ある。
一つは特待生制度。この制度は優秀な学生を確保する為の制度で、学期末のテストで常に10位以内に入っていれば、入学に必要な準備金、寮費、食費その他学園に通う為にかかる雑費のすべてを国が負担するというもの。
こちらは常に10位以内をキープしなければならず、条件が厳しい為、金銭的な負担はゼロ。
しかし、二回続けて順位が10位以下になってしまうと、特待生制度の権利は剥奪されてしまう。
逆にキープし続けることが出来るなら、卒業まで学園に通う為の費用は全くかからない。ゼロなのだ。
もう1つの奨学金制度は、国から学園に通う為の費用を借りる制度だ。
こちらの制度はどんな生徒も利用できる制度になっている。卒業して就職して仕事をし始めたら毎月少しずつ奨学金の返済をしていくシステムだ
ユリア嬢は、このシステムの特待生制度を利用して入学してきた。
しかし彼女を調べると、小テストではいつも赤点ギリギリ。
学園では容姿が美しく、身分がある男を追い回すのに必死でまるで勉強をしている様子がない。
そんな彼女が特待生制度を利用できるのは、おかしくないだろうか?
明らかに何らかの不正をしている。
きっとその線は···間違いではないだろう。
そして学園でも彼女は事件を起こしていた。
その事件は、婚約者のいる伯爵家の嫡男の生徒が何日かユリア嬢に追い回されていた。
彼は婚約者を深く愛しているので、ユリア嬢の誘いをことごとく突っぱねた。
何日後かに、またユリア嬢が彼の前に現れた。
そして今日のエリックの様に、伯爵家の令息の耳元で何か呟くと、伯爵家の令息は表情が抜けたような虚ろな瞳になり、ユリア嬢が指示した通りに···まるで操られているかのように伯爵家の令息は婚約者に婚約破棄を突きつけたのだ。
まさに今日のエリックを見ている様だった。
しかし、短時間の効き目は強力ではあるが、長い時間持続はしないらしい。すぐに令息は正気を取り戻した。
私はその光景をすべて見ていたので、婚約者にも、令息にも状況を説明した。
この洗脳のようなもののたちの悪さは短時間で効果は短いが、和解しても、確実に二人の間にはしこりが残る。
それが亀裂となり、どうなるかわからないことが恐ろしい。
昔は、王族も魅了や洗脳が効きにくい耐性を持っていた。
しかし代替わりをするごとに、徐々にその耐性は薄れている。
数十年前に、その状況を危惧した当時の王が、魅了と洗脳を禁術とした。
禁術を使用すれば、使用した本人、それに関わった人間、使用した者の一族、すべて処刑される。それもかなり残酷な方法でだ。
国民は、その罰の恐ろしさを知っているから禁忌を犯そうなんて者はいなかった。
あの女は無知なのか、それとも恐れ知らずなのか?
それを見ていた私は、この事件は禁術が関わっている恐れがある為、父上に報告して指示を仰いだ。
父上はすぐに国王陛下に報告した。
事が事だけに、極秘で話が進んでいた。
まずは魅了または洗脳にかからないようにする為の魅了、洗脳、毒無効の魔道具の準備。
今まで禁術を使おうとする人間はいなかった為、少し時間がかかってしまった。
魅了、洗脳、毒の無効という効果を三重付与しなければならない為に、作れる魔道具師が限られてしまったのだ。
急ぎ王族、重要なポストについている人物の分を確保するので手一杯だった。
一番いいのが、あの女に魔封じの腕輪を装着してしまうのが早いのだが、どんな方法で禁術を使っているのかが不明。
状況的に難しい。
魅了魔法なのか?それとも魅了効果のある魔道具を使っているのかが確認できなかったからだ。
しかし、人を意のままに操れるほどの強力な効果には、魔道具でも魔法でも“対価”が必要なはずだ。
あの女は何を“対価”にしている?
私は考えを巡らせる。
そして一つの考えにたどり着いた。
あの女の実家サージェント領は、本来男爵家にしては豊かな領地だったはずだ。
産業、農業も豊かで裕福な領地だったと記憶している。
それが何故、その領地を持つ男爵家の令嬢が“特待生制度”を利用しなければならないほどに困窮した?
大きな災害があった訳でもないのに···。
没落寸前にまで落ち込むほどの事態になったのは、つい最近の話。
ここまで急激に困窮するなど、普通なら考えられない。
それに、急激に困窮するような事が起きたなら、国に報告が上がるはずだ。
そこで私は、一つの考えに行き着く。
もしや···。
その対価とは、“資産”なのではないか?と。
この短期間にこれだけ男爵家が困窮するなど、それしか考えられないだろう。
やはりあの女は黒だ。
入学時の不正。そして招待されていない人間が王城に忍び込むなんて···普通はできるはずがない。
状況的には確実に黒。
しかし、証拠が少ない。
禁術を使ったとして裁くには、確実な証拠が必要だ。
一族郎党根絶やしにするのだから、当たり前の事だろう。
確実な証拠を掴むには、禁術を使った事がわかる証拠が必要だ。
私は、魔道具師にもう二つ機能を追加するように指示を出した。
魅了を使った事がわかるように、禁術が使われると魔道具に変化がわかるようにする機能と禁術が使われた事を記録する機能だ。
反応があれば、もう言い逃れはできない。
私は魔道具の完成を待った。
先ほどまで良い雰囲気だったエリックとエレノア様。
明らかに誰が見ても両思い。他人が付け入る隙は見当たらない。
それなのに···あの女が現れたせいで二人の関係に亀裂が入ってしまった。
異常は彼女が現れた瞬間に感じた。
招待客リストに彼女の家は載っていない。
実は今回のパーティーは、すれ違い、歪んでいた関係からやっと前に進み始めた二人をコッソリ応援したい王妃様が企画したパーティーだった。
その招待客のリストも、学園で問題のある生徒の家は外されているのだ。
なぜその事を私が知っているか?
それは、ブラックリストを作ったのが私だからだ。
二人を応援するのに、問題のある人間を呼ぶわけにはいかない。
だから学園の生徒であり、宰相の父を持つエリックの側近である私に、王妃様はブラックリストを作るように要請してきた。
今、一番問題がある人間。
それは、今日現れたユリア・サージェントをおいて他にいないだろう。
彼女は男爵家の令嬢ではあるが、家が没落寸前の貧しい家庭故に、奨学金制度を利用して学園に入学してきた。
我が国の奨学金制度は二種類ある。
一つは特待生制度。この制度は優秀な学生を確保する為の制度で、学期末のテストで常に10位以内に入っていれば、入学に必要な準備金、寮費、食費その他学園に通う為にかかる雑費のすべてを国が負担するというもの。
こちらは常に10位以内をキープしなければならず、条件が厳しい為、金銭的な負担はゼロ。
しかし、二回続けて順位が10位以下になってしまうと、特待生制度の権利は剥奪されてしまう。
逆にキープし続けることが出来るなら、卒業まで学園に通う為の費用は全くかからない。ゼロなのだ。
もう1つの奨学金制度は、国から学園に通う為の費用を借りる制度だ。
こちらの制度はどんな生徒も利用できる制度になっている。卒業して就職して仕事をし始めたら毎月少しずつ奨学金の返済をしていくシステムだ
ユリア嬢は、このシステムの特待生制度を利用して入学してきた。
しかし彼女を調べると、小テストではいつも赤点ギリギリ。
学園では容姿が美しく、身分がある男を追い回すのに必死でまるで勉強をしている様子がない。
そんな彼女が特待生制度を利用できるのは、おかしくないだろうか?
明らかに何らかの不正をしている。
きっとその線は···間違いではないだろう。
そして学園でも彼女は事件を起こしていた。
その事件は、婚約者のいる伯爵家の嫡男の生徒が何日かユリア嬢に追い回されていた。
彼は婚約者を深く愛しているので、ユリア嬢の誘いをことごとく突っぱねた。
何日後かに、またユリア嬢が彼の前に現れた。
そして今日のエリックの様に、伯爵家の令息の耳元で何か呟くと、伯爵家の令息は表情が抜けたような虚ろな瞳になり、ユリア嬢が指示した通りに···まるで操られているかのように伯爵家の令息は婚約者に婚約破棄を突きつけたのだ。
まさに今日のエリックを見ている様だった。
しかし、短時間の効き目は強力ではあるが、長い時間持続はしないらしい。すぐに令息は正気を取り戻した。
私はその光景をすべて見ていたので、婚約者にも、令息にも状況を説明した。
この洗脳のようなもののたちの悪さは短時間で効果は短いが、和解しても、確実に二人の間にはしこりが残る。
それが亀裂となり、どうなるかわからないことが恐ろしい。
昔は、王族も魅了や洗脳が効きにくい耐性を持っていた。
しかし代替わりをするごとに、徐々にその耐性は薄れている。
数十年前に、その状況を危惧した当時の王が、魅了と洗脳を禁術とした。
禁術を使用すれば、使用した本人、それに関わった人間、使用した者の一族、すべて処刑される。それもかなり残酷な方法でだ。
国民は、その罰の恐ろしさを知っているから禁忌を犯そうなんて者はいなかった。
あの女は無知なのか、それとも恐れ知らずなのか?
それを見ていた私は、この事件は禁術が関わっている恐れがある為、父上に報告して指示を仰いだ。
父上はすぐに国王陛下に報告した。
事が事だけに、極秘で話が進んでいた。
まずは魅了または洗脳にかからないようにする為の魅了、洗脳、毒無効の魔道具の準備。
今まで禁術を使おうとする人間はいなかった為、少し時間がかかってしまった。
魅了、洗脳、毒の無効という効果を三重付与しなければならない為に、作れる魔道具師が限られてしまったのだ。
急ぎ王族、重要なポストについている人物の分を確保するので手一杯だった。
一番いいのが、あの女に魔封じの腕輪を装着してしまうのが早いのだが、どんな方法で禁術を使っているのかが不明。
状況的に難しい。
魅了魔法なのか?それとも魅了効果のある魔道具を使っているのかが確認できなかったからだ。
しかし、人を意のままに操れるほどの強力な効果には、魔道具でも魔法でも“対価”が必要なはずだ。
あの女は何を“対価”にしている?
私は考えを巡らせる。
そして一つの考えにたどり着いた。
あの女の実家サージェント領は、本来男爵家にしては豊かな領地だったはずだ。
産業、農業も豊かで裕福な領地だったと記憶している。
それが何故、その領地を持つ男爵家の令嬢が“特待生制度”を利用しなければならないほどに困窮した?
大きな災害があった訳でもないのに···。
没落寸前にまで落ち込むほどの事態になったのは、つい最近の話。
ここまで急激に困窮するなど、普通なら考えられない。
それに、急激に困窮するような事が起きたなら、国に報告が上がるはずだ。
そこで私は、一つの考えに行き着く。
もしや···。
その対価とは、“資産”なのではないか?と。
この短期間にこれだけ男爵家が困窮するなど、それしか考えられないだろう。
やはりあの女は黒だ。
入学時の不正。そして招待されていない人間が王城に忍び込むなんて···普通はできるはずがない。
状況的には確実に黒。
しかし、証拠が少ない。
禁術を使ったとして裁くには、確実な証拠が必要だ。
一族郎党根絶やしにするのだから、当たり前の事だろう。
確実な証拠を掴むには、禁術を使った事がわかる証拠が必要だ。
私は、魔道具師にもう二つ機能を追加するように指示を出した。
魅了を使った事がわかるように、禁術が使われると魔道具に変化がわかるようにする機能と禁術が使われた事を記録する機能だ。
反応があれば、もう言い逃れはできない。
私は魔道具の完成を待った。
1
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
枯れ専で何が悪い!
嘉ノ海祈
恋愛
―何かが違う。侯爵令嬢であるエリワイドはその違和感に頭を抱えていた。違うのだ。かっこいいと思う基準が。周りの令嬢は若くて顔の良い貴族令息に黄色い声を上げる中、エリワイドは一人節くれだったおじさま方の姿に見惚れていた。数多くの有名令息からの縁談も、おじさま好きであるエリワイドの心には響かない。もうすぐ迎える18歳になって初めての社交界で、婚約者をパートナーとして連れて行かなければならないエリワイドはずっと恋焦がれていたとある人物に婚約を申し込む。しかし、その人物は40年以上誰とも結婚をしていないくせ者だった。
絶対に彼と婚約をしたい侯爵令嬢と、絶対に婚約を結びたくない辺境伯の恋の攻防物語。
※小説家になろうにも掲載しています。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
婚約者の浮気から、どうしてこうなった?
下菊みこと
恋愛
なにがどうしてかそうなったお話。
婚約者と浮気相手は微妙にざまぁ展開。多分主人公の一人勝ち。婚約者に裏切られてから立場も仕事もある意味恵まれたり、思わぬ方からのアプローチがあったり。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
長編版 王太子に婚約破棄されましたが幼馴染からの愛に気付いたので問題ありません
天田れおぽん
恋愛
頑張れば愛されると、いつから錯覚していた?
18歳のアリシア・ダナン侯爵令嬢は、長年婚約関係にあった王太子ペドロに婚約破棄を宣言される。
今までの努力は一体何のためだったの?
燃え尽きたようなアリシアの元に幼馴染の青年レアンが現れ、彼女の知らなかった事実と共にふたりの愛が動き出す。
私は私のまま、アナタに愛されたい ――――――。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
他サイトでも掲載中
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
HOTランキング入りできました。
ありがとうございます。m(_ _)m
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
初書籍
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
【完結】婚約破棄された公爵令嬢は、イケオジ沼に突き落とされる。
たまこ
恋愛
公爵令嬢のクラウディアは、王太子の婚約者として公務に追われる日々を過ごす。横暴な王太子は、クラウディアへ仕事を押し付け、遊び暮らしている。
ある日、出逢った素敵なイケオジをきっかけに、イケオジ沼に落ちていくクラウディア。そして、王太子の浮気により、婚約破棄を告げられたクラウディアは……。イケオジを愛でる、公爵令嬢のお話。
※本編は全年齢対象ですが、番外編はR-15となっております。苦手な方は本編のみお楽しみください※
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
夫が浮気をしたので、子供を連れて離婚し、農園を始める事にしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
10月29日「小説家になろう」日間異世界恋愛ランキング6位
11月2日「小説家になろう」週間異世界恋愛ランキング17位
11月4日「小説家になろう」月間異世界恋愛ランキング78位
11月4日「カクヨム」日間異世界恋愛ランキング71位
完結詐欺と言われても、このチャンスは生かしたいので、第2章を書きます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる