偽りの告白─偽りから始まる恋─

海野すじこ

文字の大きさ
上 下
13 / 19

第13話 断罪 (前編)

しおりを挟む



あの事件から2日後、シルヴィアの体調が落ちついたので、あの日の事を詳しく聞く為に、ヘルムート、コーネリウス、法廷書記官と共にローエンシュタイン家へやって来た。

先日、長年の誤解が解けてやっと両思いになった恋人達は朝からラブラブ全開である。

(( 帰りたい... ))

やって来た一同は心の中で思った。

ゴホンと咳払いするコーネリウス。

「 ヘルムート、ラブラブなのは仲睦まじくていい事だが、目的を忘れるなよ?」

ハッと気付いた二人は顔を赤くして距離を取る。

「シルヴィア...今日は先日の事を詳しく聞きに来たんだ。話したくない事もあると思うけど...できるだけ詳しく話してもらえると助かる。私達は、前からイザベル嬢を法廷で裁く為に、証拠集めをしているんだ。シルヴィアだけじゃなく被害者がたくさんいてね...シルヴィアも被害者でつらい立場なのはわかるが協力して貰えるとありがたい。」

ヘルムート様の役に立てるならば...と私はあの日起きた事すべてを話した。

私の話はすべて法廷書記官が記録する。

そして、この間傷つけられた箇所を、映像を録画できる魔法石に記録した。

映像を録画すると、ヘルムート様が治癒魔法で私の傷をすべて綺麗に治してくれた。

「 協力してくれてありがとうシルヴィア。しばらく証拠をまとめて裁判の準備をしたり、バタバタすると思う。会えなくても君の事を愛してる。時間が空いたら、必ず君のもとへ行くから...少しだけ寂しい思いさせてしまう事を許してほしい。」

ヘルムート様は私の額にキスをした。

あの日から、一気に恋人らしい距離感になって、まだ馴染めないでいたが、ヘルムート様はより情熱的になり、恥ずかしさはあったが嬉しかった。

「ヘルムート様もお忙しいと思いますがお身体に気をつけてくださいね。」

私も思いきって頬にキスをした。

後ろでコーネリウスと書記官が

(( 俺も可愛い彼女欲しい... ))

と見ていたのには気付いていなかった。


──────



やっとすべての証拠が揃い、2週間後裁判が行われる事になった。

場所は、貴族を裁く為に使われる大法廷場。

裁判長と裁判官達が入廷する。

「被告、イザベル・ベルナー、エリーズ・ベル、ナタリー・クレーマン前に出なさい。」

三人が出てきた。
エリーズとナタリーは顔が真っ青で今にも倒れそうだ。
しかし、リーダー格のイザベルだけは納得できないという顔で強気な態度を崩さなかった。

「君達にはたくさんの令嬢に対する陰湿な嫌がらせや暴力の訴えが上がっている。覚えはあるかね?」


イザベルは裁判長を睨みつけ「そんなのあるわけありませんわ!」と怒鳴った。他の令嬢二人はおとなしく罪を認めた。

「イザベル嬢、君が主犯格で今まで、長期に渡ってたくさんの令嬢に対する陰湿な嫌がらせや暴力を行っていた証拠も提出されている。」

そう裁判官が述べると裁判官は映像石を取り出した。

「 これはすべて、君達が行った暴力によって、令嬢達が負った傷の映像だ。こちらに診断書もある。」

映像を見せながら傷を負わされた令嬢達の名前を裁判官は読み上げる。被害にあった令嬢達は20人にも及んだ。

「そんなのでっち上げですわ!きっと誰かがわたくしを貶めようとしているのに違いありませんわ!?」

まだ罪を認めようとしないイザベル。

「すべて目撃情報もある。その日の君の行動もすべて目撃情報と一致しているが?」

裁判官がイザベルを睨む。

「 そんなの状況証拠にすぎませんわ?実際暴力を行っている映像もないじゃない!そんなの証拠にもならないわ!!本当に私がやったというなら証拠を出しなさいよ!! 」

これだけ証拠を提出されてもまだイザベルは自分の罪を認めなかった。

「では先日シルヴィア・ローエンシュタイン侯爵令嬢へ行った暴力の証拠映像をお見せしよう。証人前へ。」

裁判官の声にシルヴィアとヘルムートが証言台へ登った。

「私シルヴィア・ローエンシュタインは、先日、勤務中にイザベル・ベルナー嬢、エリーズ・ベル嬢、ナタリー・クレーマン嬢により空き部屋に無理矢理連れていかれ、いわれのない悪態をつかれ、暴力を受けました。そして部屋に閉じ込められた所を、ヴァレンティン卿と騎士団の方々に助けていただきました。」

私がされたことを話すとすぐにヘルムート様がフォローする。

「先日、勤務中にシルヴィア嬢の兄上から、妹が財務部に資料を届けに行ったまま戻らないと捜索の依頼がありました。王宮図書館内でもシルヴィア嬢が行方不明だと大騒ぎになっており、私と、その日残っていた数名の騎士達で捜索を行いました。」

そこまで言うとイザベルの方を向きヘルムートは睨みつけた。


「 図書館と財務部の間にあった空き部屋の前に、複数の足跡を発見したので...ドアを蹴破ると、シルヴィア嬢が倒れていたのを発見しました。ドアには鍵がかかっていました。あの日は寒い日でしたので...これは殺人未遂になりますよね?実際私が見つけるのが遅かったら...本当にシルヴィア嬢は凍死していたかもしれない。意地悪では済まされないことです。」

ヘルムートはシルヴィアの胸に付けられたブローチをシルヴィアから預かった。





─────



長くなりそうなので分けます(^-^;
後編更新までお待ち下さい。

















しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

もう惚れたりしないから

夢川渡
恋愛
恋をしたリーナは仲の良かった幼馴染に嫌がらせをしたり、想い人へ罪を犯してしまう。 恋は盲目 気づいたときにはもう遅かった____ 監獄の中で眠りにつき、この世を去ったリーナが次に目覚めた場所は リーナが恋に落ちたその場面だった。 「もう貴方に惚れたりしない」から 本編完結済 番外編更新中

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします

皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。 完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

処理中です...