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第12話 やっと実った初恋
しおりを挟むきっと真実を話したら嫌われてしまう...。
そう思っていた。
しかし現実は....。
なぜか...彼女にギュッと抱きしめられている。
まるでもう大丈夫だよ?とでも言わんばかりに。
こんなに情けない姿を見せたのに...。
愚かな少年時代の話をしたのに...。
どうして彼女はこんな私を受け入れてくれるのか...?
酷い目にあったのは君なのに...どうして?
子供の頃からずっと心に抱えて来た後悔...そして君への思い。
一度吐露したら溢れだして止まらなかった。
彼女は私の涙を指で拭うと瞼にキスを落とした。
私は驚いて固まってしまう...。
頭は真っ白だし、顔が熱い...
それに胸がドキドキしておかしくなりそうだ。
すると、固まる私を見てフフッと彼女が笑った。
それは、私がずっとずっと見たかった...彼女の心からの笑顔。
とても可愛い...。
今までも、悲しそうに笑う事はあったが、心からの笑顔は何倍も可愛いらしくて胸が高鳴った。
「 ヘルムート様...。あの告白は、偽りでなかったということでよろしいんですよね?」
私は、彼女の言葉に頷く。
「 私もヘルムート様が大好きです。これで晴れて両思いですわね。」
そう言って彼女が微笑んだ。
私はそれを見て理性が吹き飛んでしまった。
彼女は、情けない私も、愚かな少年の私も、すべて受け入れて抱き留めてくれた。その上で私のことが好きだと...。
幸せすぎて...都合のいい夢を見ているのではないよな?
思い切り、頬をつねるが夢ではないらしい。
もう絶対彼女を泣かせたりしない...。
彼女を離さない。
私の命をかけて...彼女を守る。
絶対私が彼女を幸せにしてみせる...。
彼女を愛している。この世の誰よりも彼女だけを。
彼女を抱きしめキスをした。
好きな人が今私の腕の中にいる。
ずっとずっと恋い焦がれていた彼女が、私を見つめ、微笑んでいる...。
こんなに幸せな気持ちは初めてだった。
もっと彼女とキスしていたい...だけど彼女の体調を考えるとこれ以上はダメだ。我慢しなくては。
でももう一回...くらいなら許されるか?
もう一度唇を重ねようと彼女の顔に手を添えた...
その時...。
「ゴホン」と咳払いする音が聞こえて、医務室の外から医師とコーネリウスがこちらを見ていた。
「 ...そろそろ入ってもいいかね?」
シルヴィアとヘルムートは、ガバッと体を離し赤面してしまった。
(( もしかして...ずっと見られてた!!? ))
シルヴィアは、プシューと効果音が聞こえそうなほど真っ赤になり、ヘルムートは、コーネリウスの側にズカズカと近づき睨み付ける。
( 来てたなら言え!!)
( ええっ!?言える訳ないでしょ...あんないい雰囲気...ぶち壊したらお前絶対怒るじゃん!!)
( シルヴィアに嫌われたらどうしてくれるんだ!!)
( ええ~言っても言わなくても怒られるとかさすがに俺でも泣くよ?)
( お前...どこから見てた?)
( ええ~?(斜め上を見る))
( 最初から見てたな?)
( 気付かないお前が悪い。)
( 明日の鍛練、お前だけ10倍な?)
( ごめんごめん...俺が悪かったからそれは勘弁してよ。でもやっと誤解が解けたみたいで良かったね。)
( ありがとう...。)
小声で二人が、そんなやり取りをしていたのに私は気付かなかった。
「 熱は高いけど、喉とかは腫れていないから、処方する薬を飲んで暖かくしてゆっくり休養を取れば体調はすぐに良くなると思うよ。ケガは治癒魔法で良くなるけど...どうするかい?ケガをさせた証拠とするなら法廷弁護人に見せるまで我慢してそのまま傷は残した方がいいだろうね。」
法廷弁護人?何の話だろう?
医師に診てもらい薬を飲み落ち着いたら意識が遠のいて来た。
まだ眠りたくないのに...。
瞼が重くなり私は意識を手放した。
「今日はこのままシルヴィアを送って行くよ。コーネリウスあの方に報告を頼んだ。フランツ医師も今日はありがとうございました。法廷での証言もよろしくお願いします。」
ヘルムートは二人に頭を下げる。
「 あの方への報告はまかせとけ!シルヴィア嬢の事...絶対守れよ?」
ヘルムートは頷く。
「今日は、シルヴィア嬢をゆっくり休ませてあげなさい。証言の事も任せてほしい。シルヴィア嬢の兄達にも、お父上にもお世話になっているからね。力になるよ。」
改めて二人に礼を述べ、彼女を抱き抱えて馬車に向かう。
帰りの馬車の中...眠る彼女の頬を優しく撫でる。
彼女をこんな目に遭わせた奴を絶対に許さない。
着々と追い詰める準備は進んでいる。
「シルヴィア...君を必ず守るから。」
眠る彼女の頬にキスをした。
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