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第二部: 君の面影を求め往く - 第一章: 南の端の開拓村にて
◆設定集: モンスター紹介(第二部・強)
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名前の表記は◆ 異世界語での呼称 /直訳気味な地球語名(シェガロ命名) ◆です。
************************************************
◆ スィーガーベイツ /マルティコラス(ヒーシー) ◆
特徴:
体高一五〇センチほど、全体的なシルエットは緋色の毛皮を持つライオン。
顔立ちは嫌らしいニヤニヤ笑いを浮かべた老人、あるいは獰猛な大猿ヒヒを思わせる。
大きな口の中に覗く鋭い牙はサメに似て、奥へ向かって二三列も連なる。
サソリのように頭上高く持ち上げられた多節構造の尻尾は、先端部分が大きな瘤状に膨らみ、細く長い毒針を無数に生やしたサボテンそのものといった印象。
主な能力:
通常の攻撃手段は、巨体による体当たり、飛び掛かってからの噛みつき、鋭い爪の引っ掻き。
尻尾の先に生えた無数の毒針を機関銃のように斉射可能。再使用までの時間は四十分ほど。
速効性の毒を帯びた針は筋弛緩をもたらし、場合によってはそのまま死に至ることもありえる。
かなり知能が高く、独自の言語を用いる。群れを作ることなく単独で生きるため、どういった意図で話すのかは不明だが、個体によってはいくつかの魔法術を習得していたりする。
解説:
ダンジョンや秘境の奥地で稀に遭遇する上級モンスター。
戦闘力はそこまで高くないものの、極めて邪悪な性質を持ち、知恵が回る。能力も割りと厄介。
過去、人里近くに現れて甚大な被害を出した記録が冒険者ギルドには少なからず残されている。
暴食の癖があり、特に人肉を好んで喰らったとも。
作中に登場した個体は攪乱と身体強化の効果を併せ持つ魔法術【残影疾駆】を詠唱してみせた。
「こんな奴がふらっと村にやって来なくてホント良かったよ」
『強力な魔物は魔素の濃いダンジョンを離れたがらないと聞くが、物事に絶対はないからなぁ』
登場回: 第二部 第一章 第二十七話「侘野を進む一行」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8991249
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ アロイッサープ /トレント(大樹人) ◆
◆ 大枯木 ◆
特徴:
樹高一五〇メートルを超す、地球の大都市に聳える高層ビル並の巨大樹。
外見はバオバブの樹に似ており、幹の頂から空へ向かって枝を伸ばした特徴的な姿をしている。
ただし、印象としては相当な年を経たことが窺える枯れ木そのもの。
平均して直径二十五メートルほどもある幹は、ところどころ不格好に脹れ、よじれている。
上方で大きく広がる奇妙に拗くれた枝には一枚も葉が付いていない。
下部では無数の太い根が幹を大きく持ち上げ、トンネルのような門構えを成す。
主な能力:
根と枝は手足の如く自在に動かすことができ、伸縮や、新たに生やすことも意のままである。
実は、その気になれば、花や葉、果実などを付けることさえも可能。
幹の表面に浮かんだ皺や凹凸を動かし、巨大な二つの目・高く尖った鼻・深い洞の口を備える巨人の顔じみた瘤を作り、他種族とのコミュニケーションを図る。
と言っても、一般的な言語は用いず、大きな唸り声を上げるだけ。知能は極めて高いのだが。
どう見ても朽ちかけた枯木でありながら、不思議と見る者に畏敬の念を懐かせる。
解説:
風のダンジョン周辺など大森林の奥深くにのみ棲む樹木型の上級モンスター。
前述のデータは本編に登場した唯一の個体であるダンジョン【紅霧の荒野コユセアラ】の門番――通称・大枯木のもの。……しかし、実はこれ、エルダートレントと呼ばれる上位種である。
余談だが、この大枯木はコユセアラの維持管理を司るダンジョンマスターでもあった。
人間たちの与り知らぬことながら、ダンジョン外の自然環境にまで強い影響力を持つ大物。
本来のトレントはこれよりも遙かに小さく、樹高はせいぜい数十メートルといったところ。
外見もまったく異なり、樫、ブナ、イチイ、杉、柳……等々、様々な種類がいる。
上級というモンスターランクも、あくまでそれら通常種を基準とする。
「どうやら温厚な種族?らしいね」
『だが、万が一にも怒らせてしまえば取り返しの付かないことになりそうだ。気を付けろよ』
登場回: 第二部 第一章 第三十一話「いざ草原のダンジョンへ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8998993
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ クゥルビヤニス /アルミラージ(アンガーウサギ) ◆
◆ ナイコーンさま ◆
特徴:
体長は六七十センチほど、全身を薄黄色の毛で覆われたアンゴラウサギ……と言うか、毛玉。
耳はやや短めで垂れ下がるが、顔、手足、尻尾と共にすべて長い毛の中に埋もれ気味。
ただし、額の中央より真っ直ぐ前方へ向かって伸びる一本角は、黒光りし、圧倒的な存在感。
ほとんど胴体の大きさと変わらない五十センチ以上の長さ、先端部は鋭く尖って円錐を成し、全体に木工ドリルのような螺旋状の刃を備えている。
主な能力:
後ろ脚の力が強く、跳躍力に優れる。意外に木登りも得意。反面、地上を走る速度は遅め。
角を真っ直ぐ突き出し、まるで投槍の如く飛び掛かってくる。
犬にも優る、非常に発達した嗅覚を持つ。
特筆すべきは“狂化”と呼ばれる習性である。
これを一匹でも殺したが最後――場合によっては傷つけただけでも、周辺にいる同属がすべて一斉に凶暴化し、下手人を執拗に襲い始める。逃げ隠れしようと臭いを追ってどこまでも!
性格が獰猛になるだけでなく、肉食化し、力と速さが超強化。衝角の威力は大型弩砲レベル。
これは復讐が遂げられるまで鎮まることなく、仲間が傷つけば傷つくほど更に激しさを増す。
解説:
人里離れた深い森林の奥などに数百から数千匹という大群を成す上級モンスター。
その性質から世界的に恐れられており、他の野獣やモンスターにも避けられていると言う。
多くの国々で殺傷禁止及び都市への持ち込み禁止とされ、どちらも重罪!
実は、平常時の性格は人なつっこい。飛び掛かっていくのは、全力でじゃれついてるだけ。
雑食性だが、基本は草食。昼と夜は大人しく、薄暗い朝夕に活発化、夜露に濡れた草木を囓る。
鳴き声の「あたまさわって!」は意味のある言葉ではなく単なる空耳。
※いろいろあってシェガロに懐いた角無しの謎については本編中でもう少し踏み込みます。
「こんな陽気だと見た目からして暑苦しいけど、慣れたら案外かわいいもんだよ」
『そうか? 僕はこういうのは苦手だ。ぐいぐい来られると、どうしていいものやら』
「満足しきって動かなくなるまで徹底的に撫でまくるのがコツさ」
登場回: 第二部 第一章 第三十六話「汚羽根に浮かされる幼児」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8999004
※フォロワーのかごのぼっちさんから頂いたイラスト二点。前話のクサイドリと同じものです。ツーショット。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ スタブナルナザス /ギガントロクソドン(ゾウのジャンボ) ◆
特徴:
体高三十五メートル、体長にして七十メートルを超える巨大なゾウ。
鼻の長さは二十五メートルに達し……要は通常のアフリカゾウのおよそ十倍のサイズとなる。
サイズを除けば、通常のゾウとの目立った違いは無さそうに思われる。
額に縦長な第三眼を持ち、象牙は左右二本ずつ。体色がパステルカラーの碧……その程度か。
主な能力:
巨体の割りに動きは速く、遠目では通常のゾウと変わらない速度で動いているように見える。
つまり、実際はその十倍近いスピードで動くということ! 歩行速度は時速四五十キロ。
最大の武器である長い鼻を、ただ左右に振り回されているだけでも回避困難。
その巨体の攻撃力は言うまでもなく、人の武器がほとんど通じない皮膚の防御力も相当なもの。
少しばかり意外にも思えるが、水泳や潜水を得意としているようだ。
解説:
広大な原野に僅かながら棲息している上級モンスター。
気性は荒く、進路上の障害物や生き物を払い除け、樹木を根こそぎ引っこ抜いて丸かじりする。
とは言え、草食性であるため、他の生き物を積極的に襲ったりすることはない。
本編中での推測通り、牧羊樹が大好物。……草食性とは?
『何はともあれ、これはちょっと戦いたくない相手だ。赤マントがあれば渡り合えるだろうが』
「こいつ、ダンジョン外の草原でも居るところには居るんだって」
『出くわさないように祈っておこう』
登場回: 第二部 第一章 第四十三話「立ちはだかる巨体」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023072
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ ダオゲ・フォンテリー /ルフ(鳥のジャンボ) ◆
特徴:
各部位の特徴はオオワシなどの猛禽類。頭には王冠を思わせる冠羽、尾羽はキジのように長い。
全身を覆う羽根の色は茜色。胴体だけはどことなく哺乳類っぽいフォルムをしている。
何より特筆すべきは、前項の巨ゾウを掴んで飛べるほどの超弩級サイズ。
頭から尾羽の先まで全長一四〇メートル、地上に降り立ったときの全高はおよそ九十メートル、両翼を広げたときの幅――翼開長はなんと二五〇メートルにも達する。
主な能力:
飛翔速度は、通常の滑空時でマッハ〇・一五――時速にして一八〇キロ、秒速五十メートル。
羽ばたくことでマッハ〇・六――時速七三〇キロ、秒速二〇〇メートル以上の突撃が可能。
普通に飛翔しているだけでも激しい暴風を巻き起こすが、羽ばたきにより強烈な突風・竜巻を任意の規模で発生させることもできる。
また、すべての羽根を灼熱の炎に変え、一定時間、燃え盛る火の鳥と化す特殊能力を持つ。
解説:
熱帯地方に一羽だけ存在を確認されている特級モンスター。
遙か天空を飛ぶ姿は広く人々に知られているものの、基本的に人間と関わることはない。
大草原においては、乾期の到来を告げる風物詩としてよく話題に上げられる。
雨季の終わり頃から大空を飛び始め、小さな雨雲を積極的に散らして回る様子が見られるため。
雲散らしは季節を滞りなく運行させるのに必要なこととして行っている。知能はかなり高い。
実際は世界中に何羽も存在しており、交替で各地の空を飛び回っている。
雛や卵も少なからず実在。卵が孵るまで、雛が成長するまで、それぞれ百年単位のスパンだが。
ちなみに、本編で雨季の最中から飛び始めた理由は、南方の砂漠地帯で降水量が多すぎたため。
本格化しつつあった蝗害の規模を抑えるべく、砂漠を焼き、相当数のイナゴを間引いていた。
「コユセアラの中には番の二羽が棲んでるみたい」
『霧のドームの天井に大穴でも空いているのか、どうやら上空から出入りできるようなんだが、たまにダンジョン内外で同時に目撃されるんだ……って、奴らが番とは限らないだろう?』
「二羽いるんだったら雄と雌だと思うな」
『まぁ、巣に卵があったわけだし、その可能性は高いか』
登場回: 第二部 第一章 第四十四話「草の陰、日の影」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023074
※こちらは、かごのぼっちさんから頂いた挿絵的なイメージイラストです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ セヴモラ・フッコドネイ /サンダーメア(雷ドンキー) ◆
特徴:
体高二メートル前後、体長は三メートル近い、大型の馬に優るほどの堂々たる雌ロバ。
毛皮の色は蒼。たてがみが非常に長くフサフサ。脚も毛深く、長靴を履いているかのよう。
主な能力:
何もない虚空を踏みしめ、思いのまま雷速で宙を駆ける。
蹄の一歩、鼻の一息、毛の一本一本が紫電を発し、駆け出せば全身が雷そのものと化す。
大電流を帯びた突進や蹴りの他、任意に落雷を発生させたり、いくつもの球雷を撃ち出したり、自由自在に強力な稲妻・電気を操る能力を持つ。任意の対象を感電させないようにすることも可。
周囲の雷雲を少しずつ発達させていく。その雲の規模に応じて電撃の攻撃力アップ。
重量物を載せて宙に浮く不思議な雲を生み出すことができ、荷車として牽く。
解説:
巨大な積乱雲の中に棲むとされる特級モンスター。
雨雲を牽いて天空を駆け、慈雨を以て世界を潤し、稲妻によって大地を浄める豊穣の獣とされ、地方によっては神獣/聖獣として篤い信仰を集めたりもしている。
実は、雷の高位精霊であり、通常は他の多くの精霊と共に【精霊界】と呼ばれる別領域に棲む。
大きく発達した雷雲の中では自然と実体化することがある、ごく稀に。
鳥のジャンボとは性質が相反するため、結果的にライバルか天敵かという図式になっているが、別にお互いを殺したいほど憎んでいるわけではない。
ジャンボは格上のドンキーと関わりたくない。出てきそうな雲があったらなるべく散らす!
ドンキーはジャンボが生理的に無理。見掛けたら追い払う……という間柄。
『あのとき喚べたのは、おそらくは雷雲の中だったからなんだろう』
「もう全然請願に応じてくれないんだよね。ファルもあれから見ていないって言うし」
『結局、よく分からない奴だった』
「なんにしても、助けてもらったお礼はちゃんと言いたかったかな」
登場回: 第二部 第一章 第五十話「蝶々雲、幼女の目に映るもの」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023090
※こちらも、かごのぼっちさんから頂いた挿絵風イラストとなります。
************************************************
以上で今回の設定集はすべてとなります。
相変わらず好きに書かせていただきましたが、何かしら楽しんでくださっていたら嬉しいです!
いずれ第一部ラストのダンジョンに登場したケオニなどのモンスターもまとめたいものです、イヌマン、幽霊、ロボット、ユニコーン&バイコーン……等々、どうにも心残りで。
※最後に、お目汚しかとは思いますが、自作のモンスターサイズ比較表を一点。
鳥のジャンボ、ゾウのジャンボ、大枯木、重量級三体のスケール感が伝われば何よりです。
左下のちっさい棒が大凡の人間サイズになります。左端の青いのが身長二メートルの松悟で、隣が一メートルのシェガロ、薔薇色が月子……あとの奴らはお気になさらず。
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◆ スィーガーベイツ /マルティコラス(ヒーシー) ◆
特徴:
体高一五〇センチほど、全体的なシルエットは緋色の毛皮を持つライオン。
顔立ちは嫌らしいニヤニヤ笑いを浮かべた老人、あるいは獰猛な大猿ヒヒを思わせる。
大きな口の中に覗く鋭い牙はサメに似て、奥へ向かって二三列も連なる。
サソリのように頭上高く持ち上げられた多節構造の尻尾は、先端部分が大きな瘤状に膨らみ、細く長い毒針を無数に生やしたサボテンそのものといった印象。
主な能力:
通常の攻撃手段は、巨体による体当たり、飛び掛かってからの噛みつき、鋭い爪の引っ掻き。
尻尾の先に生えた無数の毒針を機関銃のように斉射可能。再使用までの時間は四十分ほど。
速効性の毒を帯びた針は筋弛緩をもたらし、場合によってはそのまま死に至ることもありえる。
かなり知能が高く、独自の言語を用いる。群れを作ることなく単独で生きるため、どういった意図で話すのかは不明だが、個体によってはいくつかの魔法術を習得していたりする。
解説:
ダンジョンや秘境の奥地で稀に遭遇する上級モンスター。
戦闘力はそこまで高くないものの、極めて邪悪な性質を持ち、知恵が回る。能力も割りと厄介。
過去、人里近くに現れて甚大な被害を出した記録が冒険者ギルドには少なからず残されている。
暴食の癖があり、特に人肉を好んで喰らったとも。
作中に登場した個体は攪乱と身体強化の効果を併せ持つ魔法術【残影疾駆】を詠唱してみせた。
「こんな奴がふらっと村にやって来なくてホント良かったよ」
『強力な魔物は魔素の濃いダンジョンを離れたがらないと聞くが、物事に絶対はないからなぁ』
登場回: 第二部 第一章 第二十七話「侘野を進む一行」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8991249
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ アロイッサープ /トレント(大樹人) ◆
◆ 大枯木 ◆
特徴:
樹高一五〇メートルを超す、地球の大都市に聳える高層ビル並の巨大樹。
外見はバオバブの樹に似ており、幹の頂から空へ向かって枝を伸ばした特徴的な姿をしている。
ただし、印象としては相当な年を経たことが窺える枯れ木そのもの。
平均して直径二十五メートルほどもある幹は、ところどころ不格好に脹れ、よじれている。
上方で大きく広がる奇妙に拗くれた枝には一枚も葉が付いていない。
下部では無数の太い根が幹を大きく持ち上げ、トンネルのような門構えを成す。
主な能力:
根と枝は手足の如く自在に動かすことができ、伸縮や、新たに生やすことも意のままである。
実は、その気になれば、花や葉、果実などを付けることさえも可能。
幹の表面に浮かんだ皺や凹凸を動かし、巨大な二つの目・高く尖った鼻・深い洞の口を備える巨人の顔じみた瘤を作り、他種族とのコミュニケーションを図る。
と言っても、一般的な言語は用いず、大きな唸り声を上げるだけ。知能は極めて高いのだが。
どう見ても朽ちかけた枯木でありながら、不思議と見る者に畏敬の念を懐かせる。
解説:
風のダンジョン周辺など大森林の奥深くにのみ棲む樹木型の上級モンスター。
前述のデータは本編に登場した唯一の個体であるダンジョン【紅霧の荒野コユセアラ】の門番――通称・大枯木のもの。……しかし、実はこれ、エルダートレントと呼ばれる上位種である。
余談だが、この大枯木はコユセアラの維持管理を司るダンジョンマスターでもあった。
人間たちの与り知らぬことながら、ダンジョン外の自然環境にまで強い影響力を持つ大物。
本来のトレントはこれよりも遙かに小さく、樹高はせいぜい数十メートルといったところ。
外見もまったく異なり、樫、ブナ、イチイ、杉、柳……等々、様々な種類がいる。
上級というモンスターランクも、あくまでそれら通常種を基準とする。
「どうやら温厚な種族?らしいね」
『だが、万が一にも怒らせてしまえば取り返しの付かないことになりそうだ。気を付けろよ』
登場回: 第二部 第一章 第三十一話「いざ草原のダンジョンへ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8998993
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ クゥルビヤニス /アルミラージ(アンガーウサギ) ◆
◆ ナイコーンさま ◆
特徴:
体長は六七十センチほど、全身を薄黄色の毛で覆われたアンゴラウサギ……と言うか、毛玉。
耳はやや短めで垂れ下がるが、顔、手足、尻尾と共にすべて長い毛の中に埋もれ気味。
ただし、額の中央より真っ直ぐ前方へ向かって伸びる一本角は、黒光りし、圧倒的な存在感。
ほとんど胴体の大きさと変わらない五十センチ以上の長さ、先端部は鋭く尖って円錐を成し、全体に木工ドリルのような螺旋状の刃を備えている。
主な能力:
後ろ脚の力が強く、跳躍力に優れる。意外に木登りも得意。反面、地上を走る速度は遅め。
角を真っ直ぐ突き出し、まるで投槍の如く飛び掛かってくる。
犬にも優る、非常に発達した嗅覚を持つ。
特筆すべきは“狂化”と呼ばれる習性である。
これを一匹でも殺したが最後――場合によっては傷つけただけでも、周辺にいる同属がすべて一斉に凶暴化し、下手人を執拗に襲い始める。逃げ隠れしようと臭いを追ってどこまでも!
性格が獰猛になるだけでなく、肉食化し、力と速さが超強化。衝角の威力は大型弩砲レベル。
これは復讐が遂げられるまで鎮まることなく、仲間が傷つけば傷つくほど更に激しさを増す。
解説:
人里離れた深い森林の奥などに数百から数千匹という大群を成す上級モンスター。
その性質から世界的に恐れられており、他の野獣やモンスターにも避けられていると言う。
多くの国々で殺傷禁止及び都市への持ち込み禁止とされ、どちらも重罪!
実は、平常時の性格は人なつっこい。飛び掛かっていくのは、全力でじゃれついてるだけ。
雑食性だが、基本は草食。昼と夜は大人しく、薄暗い朝夕に活発化、夜露に濡れた草木を囓る。
鳴き声の「あたまさわって!」は意味のある言葉ではなく単なる空耳。
※いろいろあってシェガロに懐いた角無しの謎については本編中でもう少し踏み込みます。
「こんな陽気だと見た目からして暑苦しいけど、慣れたら案外かわいいもんだよ」
『そうか? 僕はこういうのは苦手だ。ぐいぐい来られると、どうしていいものやら』
「満足しきって動かなくなるまで徹底的に撫でまくるのがコツさ」
登場回: 第二部 第一章 第三十六話「汚羽根に浮かされる幼児」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8999004
※フォロワーのかごのぼっちさんから頂いたイラスト二点。前話のクサイドリと同じものです。ツーショット。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ スタブナルナザス /ギガントロクソドン(ゾウのジャンボ) ◆
特徴:
体高三十五メートル、体長にして七十メートルを超える巨大なゾウ。
鼻の長さは二十五メートルに達し……要は通常のアフリカゾウのおよそ十倍のサイズとなる。
サイズを除けば、通常のゾウとの目立った違いは無さそうに思われる。
額に縦長な第三眼を持ち、象牙は左右二本ずつ。体色がパステルカラーの碧……その程度か。
主な能力:
巨体の割りに動きは速く、遠目では通常のゾウと変わらない速度で動いているように見える。
つまり、実際はその十倍近いスピードで動くということ! 歩行速度は時速四五十キロ。
最大の武器である長い鼻を、ただ左右に振り回されているだけでも回避困難。
その巨体の攻撃力は言うまでもなく、人の武器がほとんど通じない皮膚の防御力も相当なもの。
少しばかり意外にも思えるが、水泳や潜水を得意としているようだ。
解説:
広大な原野に僅かながら棲息している上級モンスター。
気性は荒く、進路上の障害物や生き物を払い除け、樹木を根こそぎ引っこ抜いて丸かじりする。
とは言え、草食性であるため、他の生き物を積極的に襲ったりすることはない。
本編中での推測通り、牧羊樹が大好物。……草食性とは?
『何はともあれ、これはちょっと戦いたくない相手だ。赤マントがあれば渡り合えるだろうが』
「こいつ、ダンジョン外の草原でも居るところには居るんだって」
『出くわさないように祈っておこう』
登場回: 第二部 第一章 第四十三話「立ちはだかる巨体」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023072
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ ダオゲ・フォンテリー /ルフ(鳥のジャンボ) ◆
特徴:
各部位の特徴はオオワシなどの猛禽類。頭には王冠を思わせる冠羽、尾羽はキジのように長い。
全身を覆う羽根の色は茜色。胴体だけはどことなく哺乳類っぽいフォルムをしている。
何より特筆すべきは、前項の巨ゾウを掴んで飛べるほどの超弩級サイズ。
頭から尾羽の先まで全長一四〇メートル、地上に降り立ったときの全高はおよそ九十メートル、両翼を広げたときの幅――翼開長はなんと二五〇メートルにも達する。
主な能力:
飛翔速度は、通常の滑空時でマッハ〇・一五――時速にして一八〇キロ、秒速五十メートル。
羽ばたくことでマッハ〇・六――時速七三〇キロ、秒速二〇〇メートル以上の突撃が可能。
普通に飛翔しているだけでも激しい暴風を巻き起こすが、羽ばたきにより強烈な突風・竜巻を任意の規模で発生させることもできる。
また、すべての羽根を灼熱の炎に変え、一定時間、燃え盛る火の鳥と化す特殊能力を持つ。
解説:
熱帯地方に一羽だけ存在を確認されている特級モンスター。
遙か天空を飛ぶ姿は広く人々に知られているものの、基本的に人間と関わることはない。
大草原においては、乾期の到来を告げる風物詩としてよく話題に上げられる。
雨季の終わり頃から大空を飛び始め、小さな雨雲を積極的に散らして回る様子が見られるため。
雲散らしは季節を滞りなく運行させるのに必要なこととして行っている。知能はかなり高い。
実際は世界中に何羽も存在しており、交替で各地の空を飛び回っている。
雛や卵も少なからず実在。卵が孵るまで、雛が成長するまで、それぞれ百年単位のスパンだが。
ちなみに、本編で雨季の最中から飛び始めた理由は、南方の砂漠地帯で降水量が多すぎたため。
本格化しつつあった蝗害の規模を抑えるべく、砂漠を焼き、相当数のイナゴを間引いていた。
「コユセアラの中には番の二羽が棲んでるみたい」
『霧のドームの天井に大穴でも空いているのか、どうやら上空から出入りできるようなんだが、たまにダンジョン内外で同時に目撃されるんだ……って、奴らが番とは限らないだろう?』
「二羽いるんだったら雄と雌だと思うな」
『まぁ、巣に卵があったわけだし、その可能性は高いか』
登場回: 第二部 第一章 第四十四話「草の陰、日の影」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023074
※こちらは、かごのぼっちさんから頂いた挿絵的なイメージイラストです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◆ セヴモラ・フッコドネイ /サンダーメア(雷ドンキー) ◆
特徴:
体高二メートル前後、体長は三メートル近い、大型の馬に優るほどの堂々たる雌ロバ。
毛皮の色は蒼。たてがみが非常に長くフサフサ。脚も毛深く、長靴を履いているかのよう。
主な能力:
何もない虚空を踏みしめ、思いのまま雷速で宙を駆ける。
蹄の一歩、鼻の一息、毛の一本一本が紫電を発し、駆け出せば全身が雷そのものと化す。
大電流を帯びた突進や蹴りの他、任意に落雷を発生させたり、いくつもの球雷を撃ち出したり、自由自在に強力な稲妻・電気を操る能力を持つ。任意の対象を感電させないようにすることも可。
周囲の雷雲を少しずつ発達させていく。その雲の規模に応じて電撃の攻撃力アップ。
重量物を載せて宙に浮く不思議な雲を生み出すことができ、荷車として牽く。
解説:
巨大な積乱雲の中に棲むとされる特級モンスター。
雨雲を牽いて天空を駆け、慈雨を以て世界を潤し、稲妻によって大地を浄める豊穣の獣とされ、地方によっては神獣/聖獣として篤い信仰を集めたりもしている。
実は、雷の高位精霊であり、通常は他の多くの精霊と共に【精霊界】と呼ばれる別領域に棲む。
大きく発達した雷雲の中では自然と実体化することがある、ごく稀に。
鳥のジャンボとは性質が相反するため、結果的にライバルか天敵かという図式になっているが、別にお互いを殺したいほど憎んでいるわけではない。
ジャンボは格上のドンキーと関わりたくない。出てきそうな雲があったらなるべく散らす!
ドンキーはジャンボが生理的に無理。見掛けたら追い払う……という間柄。
『あのとき喚べたのは、おそらくは雷雲の中だったからなんだろう』
「もう全然請願に応じてくれないんだよね。ファルもあれから見ていないって言うし」
『結局、よく分からない奴だった』
「なんにしても、助けてもらったお礼はちゃんと言いたかったかな」
登場回: 第二部 第一章 第五十話「蝶々雲、幼女の目に映るもの」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023090
※こちらも、かごのぼっちさんから頂いた挿絵風イラストとなります。
************************************************
以上で今回の設定集はすべてとなります。
相変わらず好きに書かせていただきましたが、何かしら楽しんでくださっていたら嬉しいです!
いずれ第一部ラストのダンジョンに登場したケオニなどのモンスターもまとめたいものです、イヌマン、幽霊、ロボット、ユニコーン&バイコーン……等々、どうにも心残りで。
※最後に、お目汚しかとは思いますが、自作のモンスターサイズ比較表を一点。
鳥のジャンボ、ゾウのジャンボ、大枯木、重量級三体のスケール感が伝われば何よりです。
左下のちっさい棒が大凡の人間サイズになります。左端の青いのが身長二メートルの松悟で、隣が一メートルのシェガロ、薔薇色が月子……あとの奴らはお気になさらず。
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